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密室殺人傑作選/H.S.サンテッスン編

The Locked Room Reader/edited by H.S.Santesson

1968年発表 山本俊子・他訳 ハヤカワ・ミステリ1161(早川書房)

 一部の作品のみ。

「ある密室」 (ジョン・ディクスン・カー)
 “頭をひっぱたかれたみたいな感覚”によって犯行時刻を誤認させるというトリックには意表を突かれます。しかし、“何者かの足音”が被害者の空耳だったという真相には不満が残ります。

「世に不可能事なし」 (クレイトン・ロースン)
 宇宙人の足跡の図が登場した時点で犯人は明らかですが、“拳銃消失”のトリックはよくできていると思います。
 ところでロースンといえば、電話ボックスからの人間消失や、目張りをした密室での殺人など、J.D.カー(C.ディクスン)との競作(?)が知られていますが、この作品の状況は『ユダの窓』とよく似ています。意図的なものなのでしょうか?

「犬のお告げ」 (G.K.チェスタートン)
 隙間のある密室状況を利用した殺害トリックはよくできています。そしてそれ以上に、凶器の隠蔽がお見事。

「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」 (ウィリアム・ブルテン)
 あまりにも情けないオチが笑えます。

「時の網」 (ミリアム・アレン・ディフォード)
 “悪魔との契約”ネタですが、悪魔を出し抜く手段は秀逸です。

「執行猶予」 (ローレンス・G・ブロックマン)
 犯人がガス栓を閉めた意図がよくわかりません。開いたままにしておけば、不注意による事故死として片づけられたようにも思えるのですが。

「海児魂」 (ジョゼフ・カミングズ)
 犯人の髪の毛が白くなってしまったというのは今ひとつ無理があるようにも思えますが、それがまた手がかりとなっているところはまずまずでしょう。

「北イタリア物語」 (トマス・フラナガン)
 真相はわかりやすいとは思いますが、鮮やかな反転は見事です。

2001.12.29読了

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