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メイン・ディッシュ/北森 鴻

1999年発表 集英社文庫 き12-1(集英社)

 一部のエピソードのみ。

「ストレンジ テイスト」
 凝り性の小杉が作り上げたメニューの、料理の季節感のなさが手がかりとなっているところがよくできています。どこまで行ってしまうのかと突っ込みたくなる推理も面白く感じられます。

「アリバイ レシピ」
 叙述トリックが効果的。“パートナー”という表現がやや気になるものの、なかなかよくできているといえるでしょう。しかし、カレーに炒め玉ねぎという真相は、カレー好きな人には見え見えでは?

「バレンタイン チャーハン」
 チャーハンに洋食器という手がかりが面白いと思います。また、小杉の暴走ぶりには爆笑。

「ボトル “ダミー”」
 夏樹が脚本を書いていたことをミケさんが知っていた、というのはややアンフェア気味ですが、遺書/絶縁状のダブルミーニング的な真相はよくできています。
 そして最後に明かされる、「アリバイ レシピ」「バッド テイスト トレイン」の2篇が小杉の発表した作品だったという真相が非常に秀逸です。“作中の現実”を描いたエピソードの間に“作中作”を紛れ込ませ、最後に全体をまとめ上げるという手法は、なかなか一筋縄ではいかないユニークなものだといえるのではないでしょうか(エピソードの配置(時系列)がアンフェアではありますが、これは致し方ないところでしょう)

「サプライジング エッグ」
 “谷口優太”が“三津池修”になってしまうのはやや反則気味ですが、さほど問題ではないかと思います(“三津池修”が滝沢良平の学生時代の友人の一人であることは明らかですし)。入れ替わりの理由も、まずまず納得できるものです。

「特別料理」
 これだけ様々な設定を盛り込みながら、死因を明らかにしていない(しかもそれに気づかせない)ところが巧妙です。首を切断した理由にも十分な説得力が感じられます。
 小杉の筆名“毛利多喜子”はもともと“北森鴻”のアナグラムでひねり出されたものだったのでしょうが、ここでこういう使い方をされているということは、気づいた人が少なかったということかもしれません(私も気づきませんでした)。

2006.09.10再読了

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