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魔法人形/M.アフォードDeath's Mannikins/M.Afford |
1937年発表 霜島義明訳 世界探偵小説全集45(国書刊行会) |
本文169頁の、ピムロットが“プレーターに眼鏡を持ってこさせる”場面はあまりにも露骨で、少なくともある程度ミステリを読み慣れた方であれば、この段階でピムロットに疑惑の目を向けることになるのではないでしょうか。そしてその後、ロジャー殺しが自動機械トリックによるものだということが明らかになると、アリバイが成立しなくなったピムロットが犯人であることを見抜くのは、さほど難しくはないでしょう。つまり、この作品はかなり早い段階で犯人が見え見えになってしまうという、フーダニットとしては致命的な弱点を抱えているといえます(後にロロが犯人として“逮捕”されています(297頁)が、これが真犯人に対する罠であることは明らかでしょう)。 しかし、それでミステリとしての興味がなくなってしまうわけではありません。犯人の目星がついたとしても、ロジャー殺しの動機という大きな謎が残されています。これを解明する小麦粉の中の遺言状のロジックは、非常によくできていると思います。 ところがさらに、最後の「余録」でおもむろにプレーターの手紙という手がかりが提示されます。犯行時刻を示す手がかりは露骨に目の前にぶら下がっていたわけで、この“最後の一撃”にはすっかり意表を突かれてしまいました。 これらを考え合わせてみると、作者には最初からフーダニットとして勝負するつもりはなかったのではないか、と思えてきます。ピムロットの露骨に怪しい行動も、また自動機械トリックが早い段階で明らかになることも、犯行時刻の最終的な決め手となるこの手紙から読者の目をそらすための、ミスディレクションにすぎなかったのではないでしょうか。あるいは深読みのしすぎなのかもしれませんが、真犯人の疑わしい行動に読者の目を引きつけ、さらに機械トリックを明らかにしてアリバイを崩す(普通に考えれば、これも早すぎるでしょう)ことで容疑を固めた後、一転して動機の謎で読者の興味を引っぱり、すべてが出揃ったかにみえたところでおもむろに“最後の一撃”……という計算は、十分あり得るように思います。 2004.04.02読了 |
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