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M.G.H./三雲岳斗

2000年発表 『SF JAPAN』収録(徳間書店)

 登場人物の造形は、明らかに森博嗣の影響が感じられます。凌と舞衣の関係は犀川と萌絵(『すべてがFになる』など)の関係に似ていますし、凌と朱鷺任博士が対面する場面などは、犀川と天王寺博士との対面(『笑わない数学者』)にそっくりな印象を受けます。意図的なものかどうかはわかりませんが、意識しているのは間違いないでしょう。

 事件の方ですが、まず第一の事件はよくできています。“相対性”がトリックになっているところもいいと思いますし、被害者が与圧服を着ていた理由もうまく説明されています。何より、墜死と撲殺が、mgh = 1/2mv2という式を介して相互に変換されるという着想がユニークです。

 第二の事件は、凌の台詞にもあったように、“真空”がすぐそばにある宇宙ステーションが舞台となっているために、死因が一種のひっかけになっているところが面白いと思います。

 犯人の動機は、個人的には納得のいくものです。特に、研究成果を芸術作品になぞらえて説明することにより、動機に説得力を持たせようとしているところはうまいと思います。ただ、選者(特に山田正紀)が指摘しているように、もっととんでもない動機でもよかったのではないでしょうか。例えば、R.J.ソウヤー『ゴールデン・フリース』では、犯人の動機(とその背後の真相)にとんでもないものを持ってくることによって、意外性が作り出されるとともに、SF的なスケールの大きさを感じさせる作品に仕上がっています。一方この作品では、動機が納得しやすいものであるがために、若干の物足りなさも感じてしまいました。このあたりは、今後の作品に期待したいところです。

2000.07.04読了


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