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戻り川心中/連城三紀彦 |
1980年発表 講談社文庫 れ1-1(講談社) |
本書に収録された5篇はいずれもホワイダニットとして優れた作品となっています。特に、「藤の香」以外の4篇で、単なる手段としての殺人(や心中)が扱われているのに脱帽です。また、説得力を高めてその真相を成立させるために、(時代や舞台の設定も含めた)伏線が非常に充実しているところも見逃せないでしょう。 一方、本書の5篇に共通する特徴として、いずれも他者の視線を意識した事件だということが挙げられます。例えば、「藤の香」の“顔のない死体”は被害者の身内の女たちの目を意識したものですし、「桐の柩」は人々の目を棺桶からそらすためのものです。さらに「桔梗の宿」・「白蓮の寺」・「戻り川心中」に至っては、(いわゆる“劇場型犯罪”とは違いますが)最初から“見せる”ための事件となっているのです。この点は、本書のユニークな特色といえるのではないでしょうか。 |
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