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野ざらし忍法帖/山田風太郎

2004年刊 山田風太郎忍法帖短篇全集2 ちくま文庫 や22-17(筑摩書房)

 一部の作品のみ。

「忍者玉虫内膳」
 自らの体の一部を自在に“殺す”忍法を操る玉虫内膳ですが、“殺した”箇所を生き返らせることができるわけではないようですから、稲富小三郎との対決が初めての実践ということになってしまうのではないでしょうか。

「忍者傀儡歓兵衛」
 花房宗八郎と同様、すっかり騙されてしまいました。忍法をミスディレクションとして使った、見事な計略です。

「忍者枯葉塔九郎」
 枯葉塔九郎が脱獄する場面は、ミステリの密室トリックを連想させます(具体的な作品は挙げませんが……)。

「忍者梟無左衛門」
 まったく予備知識なしに読んだので、“梟無左衛門は、いさの相談をきいたとき、いさを彼女の母そっくりに生んだことを後悔した”という冒頭の一文には大いに困惑させられました。
 しかし、田沼山城守を撃退するところはともかく、胎児を自在に作りかえるというのはいかがなものか。いさを作り上げたのは紀伊と無左衛門のエゴイズムですし、いさの子もまた、いさと無左衛門のエゴイズムの産物です。結局、佐野善左衛門と胎児は、いさと無左衛門の道具として使われたことになってしまいます。そう考えると、最後の無左衛門の死微笑も、どこかおぞましいものにさえ感じられてなりません。

「忍者枝垂七十郎」
 結末はよくできたリドルストーリーの様相です。かつて恋した仏坂堂馬と、今の夫である安兵衛(枝垂七十郎)との間で板挟みになったお市は、はたしてどちらの言葉に従うのか。最後の一段落で“蔵の戸”と“行燈の炎”が対比されているのも、非常に効果的です。

「忍者鶉留五郎」
 繰り返される鶉留五郎の変貌の落差が笑えます。

2004.05.16読了

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