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武蔵忍法旅/山田風太郎

2004年刊 山田風太郎忍法帖短篇全集8 ちくま文庫 や22-23(筑摩書房)

 一部の作品のみ。

「武蔵忍法旅」
 小次郎に親しみを抱く忍者たちの襲撃によって、武蔵の弱点が一つずつ克服されていった結果、“剣聖”として完成されてしまうという強烈な皮肉。巌流島の戦いが描かれないまま終わってしまうのが、ややあっけなくも感じられるのですが、やはり蛇足でしょうか。小次郎の出番が少ないのも致し方ないところでしょう。

「おちゃちゃ忍法腹」
 朝鮮の忍者・鴻天忠との勝負に勝ってしまう淀君の“熱さ”(?)が恐ろしい、というか。

「刑部忍法陣」
 朝鮮の役での大谷刑部と小早川秀秋の因縁は知りませんでしたが、それが刑部の悲劇を一層際立たせています。それに対応する、関ヶ原の戦いが終わった後のエピソードもよくできています。また、淀君と北政所の対比も秀逸。

「ガリヴァー忍法島」
 題名から予想できるJ.スウィフト『ガリヴァー旅行記』に加えて、E.A.ポオ「黄金虫」にまでつながるというすごい作品です。しかも、“レミュエル・ガリヴァー氏”や“キャプテン・キッドの暗号”が登場することで、これら両作品が作中では現実化されていることに注目です。
 最後に登場する暗号については、「黄金虫」のネタバレを避けるためか、解読の手順抜きでいきなり解答が示されています。そのために目立たなくなっていますが、実はこの暗号は解読できません(少なくとも、292頁に書かれた解答の文章にはなりません)。作者だけのミスではないのかもしれませんが、いずれにしても残念です。

2004.11.16読了

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