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シャーロック・ホームズのSF大冒険(上)/M.レズニック&M.H.グリーンバーグ 編
Sherlock Holmes in Orbit/edited by M.Resnick &
M.H.Greenberg |
1995年発表 日暮雅通 監訳 河出文庫レ3-1(河出書房新社) |
一部の作品のみ。
- 「探偵の微笑み事件」 (マーク・ボーン)
- G.A.エフィンジャー「マスグレーヴの手記」と同様、“大空白時代”に言及した作品ですが、よりによってそんな世界に行っていたとは……。それにしても、《盗まれたタルト事件》を誰か書いてくれないものでしょうか。
- 「ロシアの墓標」 (ウィリアム・バートン&マイケル・カポビアンコ)
- モリアーティ教授の論文『小惑星の力学』とツングースカ大爆発を組み合わせるというアイデアが非常に面白いと思いますが、さらに、モリアーティ教授が仕掛けた罠という設定や、暗号という形で緯度と経度(「Tunguska event - Wikipedia」より
“The Tunguska event was an explosion that occurred at 60°55′N 101°57′E, ” )を堂々と示しながらも場所がうまく伏せてあるところなどもよくできています。
- 「“畑のステンシル模様”事件」 (ヴォンダ・N・マッキンタイア)
- (知識の偏りゆえに)重要な手がかりに気づかなかったホームズを、ワトスンがしっかりとフォローしているところにニヤリとさせられます。
- 「第二のスカーフ」 (マーク・アーロンスン)
- フィルギィ族の特徴が示された時点で、真相は明らかでしょう。犯人をあぶり出すホームズの手腕には見るべきところがありますが。
- 「ネズミと名探偵」 (ブライアン・M・トムセン)
- まず、降霊会における被創造者―創造者の関係を考えると、作中に登場する“ブライアン”とは作者ブライアン・M・トムセンで間違いないでしょう。そうすると、チャンドラーはこの物語の創造者であるブライアン・M・トムセンの声を聞いているのですから、作中の“降霊会”とは“虚構”と“現実”との橋渡しの場であるとも考えられます。したがって、“現実”世界のホームズ譚(いわゆる“正典”)とは、作中のワトスンからホームズの冒険談を聞いたアーサー(・コナン・ドイル)がそれをまとめたものといえるのではないでしょうか。
- 「運命の分かれ道」 (ディーン・ウェズレイ・スミス)
- 並行世界の概念を理解した結果、あえて依頼を無視し、1500人以上の命と引き換えに未来を背負ったホームズの姿が強く印象に残ります。
- 「リッチモンドの謎」 (ジョン・デチャンシー)
- H.G.ウェルズ「タイムマシン」が下敷きにされていることはすぐにわかりますが、それを並行世界(しかも作中でホームズ自身が思いついたもの)と組み合わせたところが秀逸です。
“シャーロック・ホームズ博物館館長 A・コナン・ドイル”によるあとがきで暗示されているのは、発明家による改変の影響で歴史の流れが分岐した結果、“こちらの世界”では(発明家の遠い親戚であった)“実在のシャーロック・ホームズ”が消滅し、それを受けてA・コナン・ドイルがシャーロック・ホームズを創り出したという真相で、虚構の人物でありながら熱烈なシャーロッキアンには実在の人物として扱われているホームズだけに、非常に効果的なものになっていると思います。
むしろ、このネタをやりたいがために「タイムマシン」を持ってきたと考えるべきかもしれません。
- 「サセックスの研究」 (リーア・A・ゼルデス)
- 最後に注射器を手にしたワトスンは、それをどうしたのでしょうか。危険なそれを速やかに始末したのか、それともいつもの台詞(→“獲物が飛び出した”)を口にしたホームズ(だったもの)について行こうとしたのか……。
2006.09.14読了 |
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