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肖像画/依井貴裕 | ||||||||||||||||||||||||
1995年発表 (東京創元社) | ||||||||||||||||||||||||
本書で目を引くのは、繰り返し示される“バールストン先攻法”――犯人がすでに死んだように見せかけて容疑の圏外に逃れること、つまり“死んだとされている人物が犯人”――の構図です。
このように、二度にわたってバールストン先攻法の構図が示されながらも、“二度あることは三度ある”とばかりに最後の真相もやはりバールストン先攻法という徹底ぶりです(上の表からもわかるように、主要な容疑者及び犯人はいずれも死んだ(とされている)人物になっています)。 また、バールストン先攻法とは端的にいえば、n+1人からn個の死体を作り出す作業に他ならないわけですが、本書では冒頭で彩瀬瑞穂というおあつらえ向きの人物が登場しており、黒焦げの死体が瑞穂のものであることを見抜くのは容易でしょう。 そうしてみると、「読者への挑戦」の時点でバールストン先攻法という手法が強く示唆されており、作者はいわば手札を大幅にさらした状態で勝負に挑んでいるともいえるのですが、にもかかわらず真相を見抜くことはかなり困難だと思われます。それは、奇術でいうところの“フォース”に通じる、偽の真相を読者に強制する強力なミスディレクションが仕掛けられているからです。
第三の死体は、その外見の偽装もさることながら、その妊娠状態と、“結花”の名前を強調するミスディレクションとにより、ほとんど結花のものとしか考えられなくなっています。 このような強力なミスディレクションにより、あたかも(自由に選んでいるように見せかけて)相手に特定のカードを選ばせる“フォース”の技法のように、第三の死体が結花のものであるという偽の真相を読者に強制することで、“バールストン先攻法”という使い古された手法を復活させるという作者の企みは、やはり見事というべきではないでしょうか。 * * *
ところで、多根井は弥冬の切断された親指について * * *
最後に、大槻警部は弥冬の思惑に関して | ||||||||||||||||||||||||
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