ネタバレ感想 : 未読の方はお戻り下さい
黄金の羊毛亭 > 掲載順リスト作家別索引 > ミステリ&SF感想vol.4 > プレード街の殺人

プレード街の殺人/J.ロード

The Murders in Praed Street/J.Rhode

1928年発表 森下雨村訳 ハヤカワ・ミステリ244(早川書房)

 この作品のメインテーマはミッシング・リンク探しですが、個々の殺害手段もユニークです。特に、マーチン殺しの際の“青酸爆弾”、そしてカッパードック殺しの際の金属カリウムの弾丸などは、機械トリックの得意なジョン・ロードの面目躍如です。

 しかし、この金属カリウムの弾丸ですが、本文中では、

「金属性のカリウムの少量を手に入れ、それを手許にある空気銃の弾丸の形にこね上げた。(中略)酸化を防ぐために弾丸はパラフィンで包み(後略)
(204〜205頁)
と、簡単に触れられているだけですが、金属カリウムは金属ナトリウムと同様に、すぐに酸化・分解してしまうので(水に入れると燃えるほどです)、弾丸の形に整形する際には、油中で、あるいは少なくとも手袋をはめて取り扱うのが無難なはずです。このあたりもしっかり書いておいた方が親切(?)ではないでしょうか。また、カッパードック殺害後に急速に分解するということにも、説得力が増したはずです。


 作品全体をみてみると、ミッシング・リンク探しがテーマとなる前半は非常に魅力的です。特に、被害者たちのつながりがまったく見えないのではなく、カッパードックというスケープゴートを介して、微妙なつながりが設定してあるところが秀逸です。被害者たち全員の、予想外のつながりの存在を疑いつつも、カッパードックを中心としたつながりがあるのではないかと考えさせられてしまいます。

 反面、ミッシング・リンクが明らかになった後の展開が、やや退屈に感じさせられる部分もあり、もったいないと思います。“黒い船員”の正体がラドグローブだというのも想像がついてしまいますし。

 探偵役のプリーストレイ博士に、鋭さがあまり感じられないのも問題でしょう。白紙の状態からミッシング・リンクに気づいたのであれば感心しますが、自身も陪審員の立場にあったのでは、気づかない方がおかしいと思えてしまいます。このあたりがやや残念です。

2000.05.05読了

黄金の羊毛亭 > 掲載順リスト作家別索引 > ミステリ&SF感想vol.4 > プレード街の殺人