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プタヴの世界/L.ニーヴン

World of Ptavvs/L.Niven

1966年発表 小隅 黎訳 ハヤカワ文庫SF506(早川書房)

 本書では、コンタクトによって誕生する“クザノール=グリーンバーグ”という存在が、非常に大きな役割を果たしています。これによって対立の構図が複雑なものとなり、物語が面白さを増しているのはもちろんですが、クザノールが抱える事情が他の登場人物に(そして読者にも)伝わりやすくなっているところが巧妙です。“いかにして異質な存在を理解するか”というファーストコンタクトものの醍醐味が減じているのは否めませんが、逆に物語をスムーズに進めるためには効果的といえるでしょう。

 そしてまた、クザノールの記憶をグリーンバーグの視点から見直すことで、当事者であるクザノールには解き得ない謎――スリント人の運命――を解き明かすという、ある種のミステリ(メタ視点から謎が解かれるミステリなど)に似た手法が使われているのも興味深いところです。

 それにしても、強大なテレパシー能力を持ったスリント人が、その“能力”ゆえに知能を発達させる必要がないというのは、ある程度納得はできる(とはいいつつ、〈ノウンスペース・シリーズ〉のある短編((以下伏せ字)「恵まれざる者」(ここまで))と微妙に矛盾するような気もするのですが)ものの、何とも皮肉なものだと思います。そして、“おれがスリント人だったからか?”(218頁)と独白したグリーンバーグの胸中は、察するに余りあるというか……。

2005.07.25再読了

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