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毒薬の輪舞/泡坂妻夫

1990年発表 (講談社)

 中心となる事件はやはり毒殺事件ですが、他にもPTC混入事件や飲料水の中身の入れ換え、目の光る幽霊、姿を見せない入院患者などの謎があり、さらに一番大きなネタとして入院患者と病院スタッフの逆転という強烈なものがあります。それぞれに面白いものではありますが、毒殺事件とPTC混入事件以外は相互の関連が薄いところがやや残念です。

 入院患者たちの佯狂については、なかなかよくできていると思います。意外な真相だというのももちろんですが、患者たちそれぞれが様々な症状を選ぶことによって、そのキャラクターが一層際立っているところは見逃せないでしょう。特に“総裁”や“アダムさん”は非常にユニークなキャラクターで、この作品にしか登場しないのがもったいなく感じられます。また、“総裁”のキイナンバーを使った佯狂も秀逸です。


 なお、本筋には影響ありませんが、第三章(単行本72頁)で進介が「留美子は僕を覚えていましたよ」と教えているにもかかわらず、第四章(単行本104頁)で海方が「じゃ、留美子は君を覚えていたのか」と尋ねているのは不可解です。単なるケアレスミスだとは思いますが、やや気になります。

2001.07.13再読了

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