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妖盗S79号/泡坂妻夫

1987年発表 (文藝春秋)

 一部の作品のみ。

「ルビーは火」
 老人と子供を目印にして砂浜に埋めるというダミーの解決もまずまずです。

「生きていた化石」
 “困難は分割せよ”を地でいく巧妙なトリック。小道具のヤシガニがユニークです。

「サファイアの空」
 風船を先に飛ばすというミスディレクションがよくできています。

「庚申丸異聞」
 “東郷警部はなぜ犯行に気づいたのか?”という謎が中心になっているところがユニークです。

「癸酉組一二九五三七番」
 当選番号表の偽造には誰かが気づきそうにも思えますが……。ルーペを盗むというミスディレクションは秀逸です。また、車内での楽器ケースのすり替えもお見事。

「南畝の幽霊」
 掛け軸ならではのトリックがよくできていると思います。

「檜毛寺の観音像」
 前作の、円空の仏像を薪にしてしまった登場人物にも呆れてしまいますが、この作品の田甲里黒墨氏はさらに強烈です。

「S79号の逮捕」
 マグリットが伏線になっているところが面白いと思います。“あれはドアではない”というラストも決まっています。

「東郷警視の花道」
 S79号が男女二人組だったという真相については、「メビウス美術館」(2カ所で同時に犯行が行われる)や「S79号の逮捕」(指紋が一致しない)などの伏線から予想できるのではないでしょうか。
 税金対策という現実的な動機も印象的ですが、ひたすら耐えてきた二宮の爆発には胸を打たれます。

2002.11.04再読了

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