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ソルトマーシュの殺人/G.ミッチェル

The Saltmarsh Murders/G.Mitchell

1932年発表 宮脇孝雄訳 世界探偵小説全集28(国書刊行会)

 物語の展開の遅さもあってなかなか事件の全体像がつかめませんでしたが、二人の被害者に対して悪意を持っていたのは誰かを考えると、提示された真相にはすんなりと納得できます。通常であれば殺人まではいかなかったかもしれませんが、普段から“不道徳”に対する偏執的な嫌悪を示していたクーツ夫人にとって、二人の存在は許し難いものだったということなのでしょう。

 解決場面でのミセス・ブラッドリーの言動は明らかに、真犯人ではないローリーに疑惑を向けようとしているように感じられます。この隠蔽が、読者に驚きを与えるためだけのものであれば、あまりにもあざといといわざるを得ないところです。しかしこの作品では、クーツ夫人に不意のショックを与えて死に至らしめるという意図が示されるので、単なる演出効果ではない、説得力のある行動という風に受け取れます。このあたりは非常に見事です。

 ただ、ローリーと“おかみさん”が兄妹だったという真相をミセス・ブラッドリーが見抜いたというのには、やや無理が感じられます。世の中にはよく似た夫婦もいることですし、“おかみさん”という呼称(原書ではどうなっているのでしょうか?)も考え合わせれば、そこまで見抜くのはかなり困難でしょう。まあ、神のような名探偵ということで、仕方ないのかもしれませんが。

2002.12.09読了

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