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しゃべくり探偵/黒崎 緑

1991年発表 創元推理文庫418-01(東京創元社)
「番犬騒動」
 “謎の平凡な男”が実行に踏み切れなかったことと、標的の人物が別の機会に怪我をしてしまったことで、周到に準備された計画が不発に終わってしまい、そのためにかえって真相が見えにくくなっているところが印象的です。

「洋書騒動」
 “困難は分割せよ”を地でいく消失トリックはよくできていますが、特に、スーツケースの向きを誤認させることですり替えのチャンスを作り出しているのが巧妙です。

「煙草騒動」
 煙草の火でファックスの感熱紙にメッセージを残すというアイデアが秀逸です。また、凶器の出所も鮮やか。

「分身騒動」
 「番犬騒動」・「洋書騒動」・「煙草騒動」の3篇の背景にはロンドンへのゼミ旅行があるわけですが、この「分身騒動」ではそのゼミ旅行そのものにまつわる謎が中心となっており、全体のつなぎ方としてはまずまずだと思います。また、「番犬騒動」で言及された和戸によく似たウェイターや、「洋書騒動」での守屋教授の怪しい行動と清沢の腹痛騒ぎなどが伏線として使われているあたりはよくできています。

2003.07.15再読了

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