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十三の呪/三津田信三

2008年発表 角川ホラー文庫 み2-1(角川書店)

 様々な怪異現象の中に見出された法則は、“死へのカウントダウン”というものでしたが、それが些細な怪異によってこじつけめいた形*1で表現されていること、さらに弦矢俊一郎がとった“カウントダウン”という解決策の強引さが、バカミス的な味わいをかもし出している感があります。

 とはいえ、“死へのカウントダウン”、つまりは一種の“殺人予告”でありながら、その意味が被害者には明かされないというのが面白いところです。その意味を知らされる対象はもちろん、“犯人”側の人物である内藤紗綾香なのですが、“犯行”手段が呪術であるために“黒幕”(紗綾香)と“実行犯”(施術者)が分離し、“実行犯”から“黒幕”へ被害者の死亡する日を知らせる必要が生じているところもよくできています。

 そのカウントダウンが、“十三人の女”と同じちょうど“13”からスタートしているのは、呪術的な意味があるのか、施術者が“十三人の女”の話を聞きつけて呪術に取り込んだのか、あるいはたまたまなのか、作中でまったく説明されていないところが残念ではありますが、少なくとも結果的には*2巧妙なミスディレクションとして機能しています。

 “十三人の女”のミスディレクションに加えて、入谷秋蘭の急死にも呪術の疑惑が生じていることで、“真犯人”(紗綾香)とその動機が強力に隠蔽されているのがうまいところですが、秋蘭の死が呪術とは無関係だったという真相を見せておいて、最後にある可能性(343頁)としてオカルトに落とすという手法も見事です。

*1: 回の腸”(312頁)という超マイナーな(多分)言葉にも呆れますが、つ当たり”(315頁)にはさすがに苦笑を禁じ得ません。
*2: もちろん作者としては狙ったものでしょうが。

2008.07.07読了