ミステリ&SF感想vol.164 |
2008.08.21 |
『十三の呪』 『ハローサマー、グッドバイ』 『グリンドルの悪夢』 『聯愁殺』 『逆説的 十三人の申し分なき重罪人』 |
十三の呪 死相学探偵1 三津田信三 | |
2008年発表 (角川ホラー文庫 み2-1) | ネタバレ感想 |
[紹介] [感想]
*1:
*2: その意味で、いずれは拝み屋である祖母の助力を求めるという展開も十分に予想されるところです。 *3: その弦矢俊一郎自身が、作中で “本当に必要なのは、それこそ殺人事件を未然に防げる小説の中の名探偵ですよ”(68頁)という台詞を口にしているのがおかしいところです(このあたりについては、「『十三の呪 死相学探偵1』(三津田信三/角川ホラー文庫) - 三軒茶屋 別館)」もぜひご参照下さい)。 2008.07.07読了 [三津田信三] | |
【関連】 『四隅の魔』 『六蠱の躯』 『五骨の刃』 『十二の贄』 『八獄の界』 『九孔の罠』 |
ハローサマー、グッドバイ Hello Summer, Goodbye マイクル・コーニイ | |
1975年発表 (山岸 真訳 河出文庫 コ4-1) | ネタバレ感想 |
![]() [紹介] [感想]
*1: その意味で、河出文庫版カバーイラスト(右上画像参照)のブラウンアイズ(多分)が、あえて人間の少女そのままの姿に描かれているのは、作者の意を汲んだ好判断といえるのかもしれません。
*2: パラークシ、アリカ、エルト、アスタなど。 *3: ドローヴ、ブラウンアイズ、リボン、ウルフ、ストロングアーム、シルヴァージャックなど。 2008.07.16読了 [マイクル・コーニイ] | |
【関連】 『パラークシの記憶』 |
グリンドルの悪夢 The Grindle Nightmare パトリック・クェンティン | |
1935年発表 (武藤崇恵訳 原書房 ヴィンテージ・ミステリ) | ネタバレ感想 |
[紹介] [感想] 2008.07.29読了 [パトリック・クェンティン] |
聯愁殺 西澤保彦 | |
2002年発表 (原書房 ミステリー・リーグ) | ネタバレ感想 |
[紹介] [感想]
*1: 作中でも
“厳密に言えば少年の動機なんて本人に訊きでもしなければ判りっこない。”(228頁)とされているように、推理で動機を厳密に“特定”することは不可能で、ひたすら蓋然性の高い解釈を求めていくことしかできません(拙文「ロジックに関する覚書」#[謎とロジックの対応]も参照)。 *2: 一般的に“推理=限定(絞り込み)”となるフーダニットに対して、ホワイダニットでは“推理=創造”という性格が強く、新たな推理の材料を次々と補充していくことで、延々と推理(仮説の創造)を続けることも可能となります。 *3: 『毒入りチョコレート事件』(に限らずバークリー作品の多く)では、いわば様々な条件を“緩和する”ことで多様な推理を可能としているのですが、フーダニットにしては推理の厳密性が(標準よりも)低く感じられるのは否めません。 *4: もはやミッシングリンクと不可分(常に併せて検討せざるを得ない)ともいえる、定番の“アレ”も含めて。 2008.07.31読了 [西澤保彦] |
逆説的 十三人の申し分なき重罪人 鳥飼否宇 | |
2005年発表 (双葉文庫 と15-01) | ネタバレ感想 |
[紹介と感想] 『逆説探偵 13人の申し分なき重罪人』を文庫化にあたり改題したもので、『○○的 (+副題)』で統一された作品及び『太陽と戦慄』と同じく、架空の地方都市である〈綾鹿市〉を舞台とした作品です。
綾鹿署の刑事といえば谷村警部補と南巡査部長のコンビが定番ですが、本書で主役を張っているのは五龍神田巡査部長。上司である谷村警部補に密かな対抗意識を燃やし、ホームレスの“じっとく”から得たヒントをもとに独自の推理を披露するのですが、功を焦ってヒントの解釈を誤っていたことが最後に判明するという、少々情けない役どころになっています(*1)。 というわけで本書は、書き下ろしの最終話を除いて12の異なる犯罪を扱い、それぞれの謎に対して二通りの解決を用意する――しかもそれらが同じ一つのヒントに基づいている(*2)――という、二重三重の“縛り”が課せられた連作短編集で、マゾヒスティックにも感じられる作者のこだわりには頭が下がります。後半になってくると定型からの逸脱も見受けられますが、それはむしろ積極的に定型に加えられたひねりだといえますし、同時に(一応伏せ字)連作としての趣向の“仕込み”(ここまで)でもあります。 どちらかといえばトリックよりもロジック、しかも題名の通り“逆説的”なロジックに重点を置いた、奇妙な味わいが楽しめる作品集です。
*1: 最終話「申し分なき愉快犯」で、五龍神田が(一応伏せ字)“本格ミステリの愛読者”・“とりわけG・K・チェスタトンの熱烈なファン”(ここまで)であることが明かされているのが皮肉なところで、アントニイ・バークリーの某作品を連想せずにはいられません。
*2: 当然ながらかなり曖昧なものではあるのですが、それでも、解決への手がかりであるとともに“偽の解決”への“偽の手がかり”にもなるという、二重の機能を担っているのが面白いところです。 2008.08.09読了 [鳥飼否宇] | |
【関連】 『本格的 死人と狂人たち』 『痙攣的 モンド氏の逆説』 『爆発的 七つの箱の死』 / その他〈綾鹿市シリーズ〉 |
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