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サイロの死体/R.A.ノックス

The Body in the Silo/R.A.Knox

1933年発表 澄木 柚訳 世界探偵小説全集27(国書刊行会)

 一見シンプルに見えるこの事件を複雑に、わかりにくくしているのは、標的の取り違えというアクシデントです。“駆け落ちゲーム”が事件の重要な要素となっているため、本来であればゲームの提案者であるハリフォード夫人が疑われてしかるべきところですが、彼女には被害者のワースリー氏を殺す動機がない(どころか、むしろ死んでは困る)ため、容疑を向けることが難しくなっています。

 ハリフォード夫人の本来の計画は、ハリフォード氏、ワースリー氏、そしてスケープゴートであるトラードの行動を、“駆け落ちゲーム”を通じて細かくコントロールしようとするものだったのですが、かわいがっていた猿の悪戯によってそれが台無しにされてしまったのは痛烈な皮肉です。さらに、ハリフォード氏殺害計画第2弾を実行しようとして自らが事故死してしまう、まさに自業自得というべき状況。緻密だったはずの計画がちょっとしたことでもろくも崩れ去ってしまい、さらに自らに跳ね返ってきてしまうという展開は、作者が大僧正であっただけにどこか訓話的なものも感じさせられます。

2002.11.07読了

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