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さかしま砂絵/都筑道夫

1997年発表 光文社文庫 つ4-27(光文社)
「白魚なべ」
 “遅れてきた死体”の謎については、死体の方に錯誤が生じる余地がないため、“事件発生”のタイミングに錯誤があることは明らかですが、無関係な会話の聞き違いなどではなく、はなし家の稽古という真相がまずまず面白いところ。
 とはいえ、そちらが事件と関係ないということになれば、別のところから下手人を持ってこなくてはならなくなるわけで、そちらの処理――凶器の匕首の取り出し方がわざとらしすぎて、事件の解決に無理矢理感が漂うのが大きな難点です。

「おいてけ堀」
 「おいてけえ」という声が実は「おいてけやあ」と聞こえたもので、さらに真相は「おい、竹やあ」だったというのは少々脱力もので、何ともいえない悲哀の残る事件の真相とのミスマッチに、どう反応していいのか戸惑ってしまうのが難しいところです。

「はて恐しき」
 真相はいわゆる“見えない人”のバリエーションですが、“お茶子ならば(中略)『小夜衣』を聞いている”(114頁)というあたりのさりげない処理、さらにお茶子が源治を知っているという伏線(96頁〜97頁)などがうまいところ。そして、センセーの関知しないところで――“下手人”とされた源治の方の事情で“表向きの解決”がつけられているというひねりが面白いと思います。

「六根清浄」
 藤兵衛が“赤い顔をしていた”(146頁)という伏線から卒中による病死につながるのが巧妙で、それを殺しに見せかけるために何度も刺したという逆説的な真相がなかなか面白いところです。が、凶器に麦藁の大蛇を使った理由についてははっきりとした説明がないのがいただけないところで、現場を派手に見せるために目立つものを振り回した、くらいしか思いつきません。

「がらがら煎餅」
 “亭主のあやまちが、お滝さんの役に立てば、罪ほろぼしになるだろう”(206頁)という心情自体は理解できなくもないのですが、それで死体の指を切り落として利用するという発想は、何とも凄まじいものに感じられます。

「蚊帳ひとはり」
 蚊帳に穴も血の跡も残されていないという魅力的な謎が、嘘の目撃証言であっさり片付けられているのが残念なところ。次々と怪しい人物が飛び出してくる後半の展開は、なかなか面白くはあるのですが……。

「びいどろ障子」
 センセーが利用されそうになるというのは(以下伏せ字)「南蛮大魔術」(『くらやみ砂絵』収録)(ここまで)などがありますし、終盤の展開は(以下伏せ字)「粗忽長屋」(『からくり砂絵』収録)(ここまで)などに通じるところがあると思います。
 なお、作中では“暗いところで、自分を明るくしておいて、びいどろの前に立つと、鏡になる”(262頁)ことを、センセーが知らなかったということになっていますが、これは以前の作品(以下伏せ字)「ぎやまん燈籠」(『かげろう砂絵』収録)(ここまで)と矛盾しています。

2009.11.12再読了

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