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甘い毒/R.ペニーSweet Poison/R.Penny |
1940年発表 好野理恵訳 世界探偵小説全集19(国書刊行会) |
この作品で描かれた毒入りチョコレート事件の真相は、エドウィンが食べたチョコレートが自分で購入したものではないという可能性に気づいてしまえば、ほとんどすべて見抜くことができるのではないかと思います。事件の直後にチョコレートの個数を偽装することができる人物は限られますし、そもそも校長は動機の面(かわいがっているエドウィンを殺すはずがない)から容疑の圏外に置かれたのですから、毒入りチョコレートが本来エドウィンの手に渡るはずではなかったとすれば、校長を排除する理由はなくなります。 登場人物たちの証言や生徒たちへのアンケート調査などから次第に明らかにされていくエドウィンの性格によって、上記の可能性、さらにいえば“他の生徒の分を盗んだのではないか?”という仮説が自然と浮かんできます。そしてもう一つ、ビール主任警部とトニー・パードンとの議論において、その可能性にまったく触れられていない(検討の対象にさえなっていない)のがあまりにも不自然なことから、心証はますます強くなっていきます。フェアプレーを重んじる作者はさらに、エドウィンのブレザーに残されたチョコレートという、より直接的な決め手を持ち出してきますが、これはいささかやりすぎのように思えます。 まさに因果応報というべき事件の構図は物語としてよくできていると思うのですが、それが見え見えになってしまっては興ざめです。 2002.10.22読了 |
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