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饗宴/柳 広司 |
2001年発表 ミステリー・リーグ(原書房) |
ポロスを毒殺したトリックは、当時の風習に基づいた、この時代でしか成立し得ないもので、非常によくできています。また、バラバラ死体の恐るべき真相も、この舞台特有の要素を含んでいるといえます。まさに異世界ミステリの醍醐味を感じさせてくれる作品といえるのではないでしょうか。 *******
この作品では、終盤のソクラテスとアリストパネスの対決が圧巻です。アリストパネスが得意の“劇{ドラマ}”という手法で独自の推理を提示するのに対して、ソクラテスはあくまでも“論理{ロゴス}”でその矛盾を突き、アリストパネスが囚われてしまった“劇{ドラマ}”の陥穽を明らかにしていきます。 当初予想されたような一連の大事件ではなく、それぞれの事件は個別に起きたものだった(エリュクシマコスの関与はありますが)わけで、“犯人”のインパクトに欠ける部分はあります。しかし、それもまたアリストパネスによる“劇{ドラマ}”的な解釈を否定するものといえるわけですから、決してミステリとしての弱点とはいえないでしょう。むしろ、“劇{ドラマ}”を否定するという意味で、この作品はアンチミステリ的な要素を備えているといえるのかもしれません。 2003.01.17読了 |
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