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警察官よ汝を守れ/H.ウェイド

Constable Guard Thyself!/H.Wade

1934年発表 鈴木絵美訳 世界探偵小説全集34(国書刊行会)

 序盤、捜査陣はほぼ完全にハインドに的を絞っていますが、侵入・脱出の困難さを考えると、警察内部の犯行という可能性が高いのは明らかでしょう。そして、内勤主任の汚職を示唆する偽の手がかりや、本部長代理による拳銃の鑑識結果の矛盾(この拳銃の入れ代わりは秀逸ですが)など、疑惑の対象は何人か用意されていますが、冒頭のコードン将軍とのやりとりから、タラール警部があからさまに怪しくなってしまっています。もちろん、その動機などは後半になるまで不明ですが、比較的早い段階で犯人の見当はつけやすいように思います。

 そしてそのために、中盤の捜査がかなり無駄な回り道のように感じられてしまうところも弱点といえるかもしれません。あらゆる可能性を検討する、地道な警察の捜査を反映しているともいえますが、真相へと近づく道ではなさそうだということが予期されてしまうため、どうしても読んでいて徒労感を禁じ得ません。

2002.11.21読了

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