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桃源郷の惨劇/鳥飼否宇 |
2003年発表 祥伝社文庫 と11-1(祥伝社) |
カメラマンの死を“イエティ”の仕業に見せかける作者の企みは、まずまずの出来といっていいのではないでしょうか。ブロッケン現象による巨大な影も、また“巨大な足跡”も、ともに無理に登場させられているわけではなく、十分な説得力を持っていると思います。どちらの現象にも関わっている、気象条件という伏線が、“ミカヅキキジ”の出現からの流れでうまく処理されているところなどは秀逸です。 最後の作中作は、トリックという制限があるにもかかわらず、イスラムの五行という題材のおかげもあって、それなりに面白いものに仕上がっていると思います。また、仕掛けられたトリック自体もなかなかよくできていると思います(さすがに、泡坂妻夫の例の作品にはかないませんが……)。ただ、そこに示された内容には不満があります。登場人物(針金)の意図的な行動であればともかく、いくら“死へ至る運命の悪戯”とはいえ、どこにも“悪意”があるわけではないので、さほどの衝撃はありません。結果的には、何となく物足りないラストになってしまっているのが残念です。 2003.02.18読了 |
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