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ワイルダー一家の失踪/H.ブリーン

Wilders Walk Away/H.Brean

1948年発表 西田政治訳 ハヤカワ・ミステリ104(早川書房)

 まず、18世紀に起きたジョナサン・ワイルダーの失踪ですが、秘密の抜け穴というその真相は、ミステリとしては物足りなさが感じられるところです。とはいえ、その先に謎の死体や秘密の宝などが用意されているため、物語としては十分工夫されていると思います。
 次の、軍隊にでも入ったと思しきラングトン・ワイルダーはともかくとして、ウォルター・ワイルダーがマリー・セレスト号に乗り込んでいたというのが笑えます。
 そしてジョン・マイケル・ワイルダーの失踪ですが、横に跳んで後ろ歩きという足跡のトリックもさることながら、“目撃者”のチッテンデン氏が共犯だったというのがかなり物足りなく感じられます。
 一方、フレッド・ワイルダーの失踪については、梯子を使ったという真相だけなら脱力ものですが、その時そこに梯子があった理由が非常に秀逸です。偶然とはいえ十分な説得力がありますし、手がかりの提示も鮮やかです。

 現代の事件自体は、さほど面白く感じられないのが残念です。また、犯人がフレッドやエレンの死体をわざわざ墓地に埋めた理由に、あまり説得力がないところも気になります。

2003.02.28読了

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