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狐火殺人事件/ミスターX(E.D.ホック)
The Will-O-the-Wisp Mystery/Mr. X (E.D.Hoch) |
1971年発表 風見 潤訳 ハヤカワミステリマガジン1974年9月号(No.221)−1975年2月号(No.226)(早川書房) |
- 「歩{ポーン}」
- レイリイの専門に関する情報が示された時点で、その居場所がすぐに明らかになってしまうところが、かなり物足りなく感じられます。分量の問題もあって、仕方ないのかもしれませんが……。ただ、パイパーが真相を見破る決め手はなかなか面白いと思います。
ところで、“マーゴ・ミラーにはスペイン人の庭師がいますね。どうやら麻薬中毒らしい。彼が今朝、ちょっと変なことをしましたよ” (134頁)というパイパーの台詞は今ひとつよくわかりません。マニュエルの様子には特におかしなところは見当たらないのですが……。
- 「城{ブロック}」
- いきなりホールが殺されてしまうという意表を突いた発端が見事です。また、パイパーが真相を見破る手がかりもよくできていると思います。
そして、殺人犯そのものは明らかにされながらも、事件の状況に関する新たな謎が生じているのがうまいところです。
- 「騎士{ナイト}」
- ラーナーが空港に現れる目的にはすっかり騙されました。その風変わりな性格を利用してパイパーが仕掛けた罠にはやや脱力させられますが、その後に説明されるズボンの問題については納得です。
- 「僧正{ビショップ}」
- コートニイがビリングスに金を払っていたという結論を導き出す過程が、なかなかよくできていると思います。あとはほぼ一直線。
本筋との関係では、脱走の際の様子がコートニイの口から詳しく語られているところに注目です。特に、ホールが最初に看守に襲いかかったこと、そしてブルーノとホールが一緒に運ばれたこと(いずれも136頁)などは、地味ながら重要な伏線となっています。
- 「女王{クイーン}」
- ミスディレクションとしての企業秘密はあまりうまく機能しているようには思えないのですが、“ジョージ・サンド”という偽名に隠された秘密は印象的です。
- 「王{キング}」
- チェスではなくチェッカー、すなわち人物入れ替わりという真相自体は、ややありがちといえるかもしれません。しかし、6人の囚人の脱走という大がかりな迷彩、バーカー保安官を巻き込んでの指紋のすり替え、ホールに恨みを持つサマーヒルにブルーノを殺させるという手口(仮にサマーヒルが行動を起こさず、ホールらが直接手を下すことになったとしても、サマーヒルに容疑が向けられるのは必定です)など、細かいところがよくできていると思います。そして何より、実に意外な首切りの理由が秀逸です。
2003.08.11読了 |
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