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聖フランシスコ・ザビエルの首/柳 広司

2004年発表 講談社ノベルス(講談社)
「顕現――1549」
 日本と西洋(南蛮)という、二つの文化の狭間で生まれたダイイングメッセージの謎が秀逸です。老師をはじめ日本人たちにはアントニオの身振りが間違って解釈され、日本語がわからないザビエルには身振りの意味が理解できないという悲劇。日本人でありながら西洋文化を身に着けたアントニオならではのメッセージであり、またこのシチュエーションでなければダイイングメッセージとして成立することもなかった(つまり正しく解釈された)かもしれないという意味で、非常に面白いと思います。

「黄金のゴア」
 この事件ではやはり、動機が印象的です。二元論的世界観と一元論的世界観が出会った結果としての、ピント司教とロハス司教代理の対照的な変化が、鮮やかなコントラストを生み出しています。

「パリの悪魔」
 特殊な知識が必要になるトリックですが、なかなか面白いと思います。
 また、あまり目立ちませんが、“視点人物=犯人”という図式がアンフェアでなく成立しているところは見逃すべきではないでしょう。

「友の首と語る王――1514」
 ザビエルと修平の体験が重なり合う構図が、強烈な衝撃をもたらしています。遠い過去の物語が、近年の深刻な現実と重なることで、より切実に伝わってくるようになります。
 最後は半ば幻想的な解釈がなされていますが、面白いと思います。やはりザビエルが真の探偵だったのでしょうか。

2004.10.10読了

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