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仮面戦記1~3/山田正紀

1986年発表 トクマ・ノベルズ(徳間書店)

 散手虚空面によって到達することのできる“彼岸”については、“網”という表現からネットワークが連想され、いわゆる“電脳空間”なのかとも思えますが、彼岸の過去と未来に存在する二匹の獣のこともあり、もっと奥が深いようです。いずれにしても、散手虚空面とは現世と彼岸との橋渡しをするものであることは間違いないでしょう。

 しかし、その散手虚空面が三つ揃ったときに何が起こるのか。一人の人間が同時に三つの仮面を扱うことはできないと思われるので、相互に何らかの作用をもたらし合うような別の機能も備えているということになるのでしょうか。このあたりは、“爛怪士”が散手虚空面の影響を受けることによっても裏付けられているといえるでしょう。

 ところで、呉女が直面=鴫姫らしいというのは大きな謎です。古くから伝わる伝説の仮面であるはずの散手虚空面が、生きた人間であるというのは一体どういうことなのか。また、第1巻には鴫姫が迦楼羅の面をかぶることができると書かれており、この場合にどのようなことが起こるのか。いずれも気になるところです。もちろん、鴫姫が呉女であるというのはまだ確定していないとも考えられますが……。

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 物語の方では、第2巻の閻大君による金屋古神の復活にどういう意図があったのかが気になります。というよりも、このエピソードだけ浮いているように思えます。閻大君としては、鴫姫をさらってはみたものの肝心の迦楼羅の面は幻風道人に奪われてしまったため、他に鴫姫の使い道がなかったともいえますし、またこのエピソードがなければ重荷丸らが鴫姫を救出することは困難だったかもしれませんが、展開にやや無理が感じられるところです。

2000.07.16 / 12.07 / 12.09再読了