臓物大展覧会/小林泰三
2009年発表 角川ホラー文庫 こ2-10(角川書店)
一部の作品のみ。
- 「透明女」
- 単に体のパーツを切り取っていくというだけでなく、そこに透明な素材の物品を挿入していくという奇想が秀逸で、“透明女”の狂気を一層強烈に印象づけています。
- 「少女、あるいは自動人形」
- オチそのものはある程度予想の範囲内ながら、くるみ割り人形という小道具の扱いが見事です。
- 「攫われて」
- 誘拐犯は恵美にナイフで刺されて致命傷を負ったと考えられる――
“胸とお腹の間を狙って、ナイフを叩き込んだの。ナイフはすっと犯人の体に根元まで吸い込まれてしまったわ。”
(192頁)――ので、心を取り戻した“僕”は誘拐犯ではあり得ないでしょう。というわけで、“僕”の正体は馨(男の子)ではないでしょうか。
- 「釣り人」
- オチが見え見えなのはさておき、
“エヌ氏とわたしは何かあったのかと、森の中に踏み込んだ。森の中は暗くてよく見えなかった。手で枝をかき分けながら進むと、二人は釣り道具を片付け、帰路についた。”
(201頁)というさりげない文章の気持ち悪さが何ともいえません。
- 「造られしもの」
- 男が唯一の人間だったというオチは、「ホロ」の主人公が抱いた疑問に通じるもので、両者は対になっている作品といえます。そしてまた、「少女、あるいは自動人形」と軌を一にする、
“人間とはつまり欠陥ロボットのことなのだから”
(319頁)という最後の一言が印象的です。