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第三の銃弾[完全版]/C.ディクスン

The Third Bullet/C.Dickson

1937年発表 田口俊樹訳 ハヤカワ文庫HM6-11(早川書房)

 犯人たちの計画はなかなか手が込んでいます。最大の容疑者が実際に銃弾を放つところまでいきながら犯行が不可能だったという状況を演出するために、複数の銃を使用するというもので、第一の銃弾と第二の銃弾が実はだったというのが面白いと思います。

 しかし、犯人たちの予期せぬアクシデントによって、事態はさらに複雑になっています。まず、西側の窓が開かなかったことで、“犯人”が窓から逃走したと見せかけることが不可能になりました。これだけならばすんなりとホワイトが犯人であるということになったはずですが、ホワイトの放った銃弾がどちらも命中せず、キャロリンが判事を狙撃したことで、“第三の銃弾を放った犯人が密室から消失した”という不可能状況が生まれています。第三の銃弾が部屋の外から飛び込んできたという逆転の発想も含めて、不可能犯罪にこだわった作者の面目躍如というところでしょう。

 プロットの方では、作者の期待した(ラストのマーキス大佐の台詞からは、そういう意図があったことがうかがえます)ほどアイダが疑わしく思えないところにやや難がありますが、まずまずといっていいのではないでしょうか。

2001.09.12読了