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エレヴェーター殺人事件/J.ロード&C.ディクスン

Drop to His Death/J.Rhode & C.Dickson

1939年発表 中桐雅夫訳 ハヤカワ・ミステリ390(早川書房)

 原題は直訳すれば“死への転落”といったところでしょうか。『エレヴェーター殺人事件』ではストレート過ぎるような気がします。各章の章題が「ある出版者の転落」「ある刑事の転落」「ある幻影の転落」「殺人者の転落」と統一してあるだけに、もったいなく感じられます。

 事件の不可能性が高い分、トリックや犯人が絞りやすくなってしまっている面はあるかもしれません。犯人の姿がなかったことから機械トリックの可能性が高いと考えられるでしょうし、そうなるとそれを仕掛けることのできた人物も限られてしまいます。このあたりは諸刃の剣というところでしょう。しかしその機械トリックも、タイマーなどありきたりのものではなく、気圧計を使ってエレヴェーターならではのものにしてあるところはよくできていると思います。また、その気圧計の出所も巧妙です。

 弾丸の偽装は、カーのある短編(以下伏せ字)(『パリから来た紳士』収録の「ことわざ殺人事件」)(ここまで)で使われているものを連想させます。

1999.10.27読了
2002.03.20再読了 (2002.04.13改稿)