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黒い塔の恐怖/J.D.カー

The Door to Doom & other detections/J.D.Carr

1980年発表 宇野利泰・永井 淳訳 創元推理文庫118-21(東京創元社)
「死を賭けるか?」
 殺人の罪をかぶせることによる“殺害手段”はユニークですが、本に仕掛けられたカミソリや毒グモの玩具など、ペンダレルを怯えさせると同時に真の“殺害手段”から目をそらさせるテクニックが見事です。
 また、デストリーの“おまえさんが生きながらえて、精神病院に収容されておらなんだら……”(21頁)という台詞も伏線になっていると思います。ペンダレルが精神病院に収容された状態では、電気椅子に送り込むことができないでしょうから(当時のアメリカの刑法で精神病患者を罪に問うことができなかったかどうかはわかりませんが、少なくとも病院に収容されたままでは罪をかぶせることはできないでしょう)

「あずまやの悪魔」
 レコードに残された告白、そしてさらなるどんでん返しと、なかなかひねられた作品です。編み物袋のトリックは、もう少し手を加えて長編(以下伏せ字)『疑惑の影』(ここまで)で使われています。

「死んでいた男」
 「二つの死」のように、余韻を感じさせる終わり方であればよかったのですが……。

「死への扉」
 一度合理的な解決をつけておいてから、ラストで超自然的なものを持ち出してくるあたりはうまいと思います。

「黒い塔の恐怖」
 不気味な伝説を利用した、密室内での遠隔殺人トリックはよくできていると思います。そして、絶体絶命の窮地からの逆転が鮮やかです。なお、このトリックは短編(以下伏せ字)(『パリから来た紳士』収録の「とりちがえた問題」)(ここまで)でも使用されています。

「コンク・シングルトン卿文書事件」
 “外交文書”の手がかりは無茶苦茶なようにも思えますが、パロディにはふさわしいというべきでしょうか。
2000.01.17読了
2002.02.18再読了 (2002.02.28改稿)