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占星師アフサンの遠見鏡/R.J.ソウヤー

Far-Seer/R.J.Sawyer

1992年発表 内田昌之訳 ハヤカワ文庫SF1053(早川書房)

 この作品では、まだ科学が芽生え始めている時代という設定なので、SF的なガジェットなども登場しませんが、現象を詳細に観測し、その結果に整合する仮説を構築していくアフサンの姿勢は科学そのものです。私は天文学はやや苦手ですが、アフサンの説明は非常にわかりやすいものでした。

 世界の設定もよくできています。キンタグリオの世界が惑星ではなく、〈神の顔〉をめぐる衛星、しかも最も内側の衛星であること、そして〈神の顔〉に輪がないことから、単に世界の構造を明らかにするだけでなく、世界に危機が迫っていることを広く知らせなければならなくなります。地震が多くなってきているという、具体的な裏付けもあります。この“危機意識”が、三部作を通じて科学の進歩を促進し、また物語を牽引する原動力となっているのです。

 この世界の文化もユニークです。自然発生的なルバル教と人工的なラースク教との対立。そしてそれぞれの影響を受けた、通過儀礼としての狩猟と巡礼。陸地の移動は徒歩で行うにもかかわらず、巡礼のために航海術が発達している点や、〈なわばり本能〉の影響で広い空間を用意しなければならないために、造船技術が発達している点も興味深いものがあります。

 また、キンタグリオ族が肉食恐竜であるために、狩猟の場面が再三登場し、“冒険”という印象を強めている部分もあります。アフサンの狩猟は見事ですし、それがルバル教の復活の求心力となり、ラストのスペクタクルにつながるところもうまいと思います。

 もう一つ見逃せないのが、血統僧侶の存在です。当初この制度がどのように成立したのか、という疑問はありますが(例えば、群の中で人口爆発が起こったのでしょうか)、現在はうまく機能しているようです。しかしアフサンの推測では、皇帝の子供たちはすべて生かされていることになります。下にも書いているように、この事実が次作『Fossil Hunter』の中で重要な位置を占めることになります。

 ところで、一つ疑問です。皇帝の子供たちが領主として地方に送りこまれるのであれば、その領主の子供たちはどうなるのでしょうか?

* * *
次作『Fossil Hunter』の詳しい紹介

 次作『Fossil Hunter』では、成長したアフサンの息子、トロカが主役となりますが、アフサンも、そしてノヴァトも活躍します。
 それでは、少し詳しい紹介です。

[紹介]
 辺境で、地質学調査のさなか、地中から発掘された謎の物体。さらに、長い航海の果てに南極で発見された未知の動物たち。調査隊長トロカは、これらの謎を解き明かすことができるのか?
 一方帝都では、皇帝ダイボと地方の領主たちが兄弟であることが発覚し、皇位継承争いが勃発する。血統僧侶の権威が地に落ち、子供たちの間引きが機能しなくなって混乱をきわめる帝都で、さらに前代未聞の連続殺害事件が発生する。盲目の賢者アフサンがつかんだ真相は? そして皇位継承争いの行方は?