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番外編-7- ステールメイト

   
         
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 理路整然と美しい言い訳を必要としている。

…言い訳に、美しいもクソもあるか。それは浅ましく、無様で、救いようも意味もない言葉の羅列だろう。

 他者の存在を許さない室内。怒りと落胆に塗り潰された黒瞳(こくとう)が睨んで来るのを真っ向から受け止めて、だから、俺は答える。

「仰せのままに」

 きっぱりと揺ぎ無い返答を受け取って、キツイ目尻を益々吊り上げ、御方は吐き捨てるように仰られた。

「貴様の、そういう訳の判らなさに時折酷くイラつくのは、僕だけか?」

「常にと言われなかっただけ、随分甘い評価を頂いていたものと感謝申し上げるべきでしょうか」

「………」

 御方はそこで、なぜか言葉に窮された。

 直後、失笑。

「お前は、本当に馬鹿だな。でも、そのお前を諦め切れない僕も、相当馬鹿なのかもしれないけれど」

 淡く色付いた口唇から盛れる呟きに、俺は小さく肩を竦めて見せた。

 否定するにもそれは、余りにも的確で、余りにも感情的で、それ以上に自分の愚かさを見せ付けられているようで、俺は黙り込む。

 判っている、という言い訳さえ、俺は放棄した。

  

   
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