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教育相談も社会のあり方に規定される 〜格差社会が生徒の心の問題の原因〜 |
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学校現場で生徒と接したり、生徒の相談にのっていて最近感じることは、貧困を背景にした問題が多いということです。貧困によって、親に子どもと向き合う余裕がない。 また、生徒の進路の面でも、経済的な理由から進学できない、しかし、就職しようにも不況で就職先がない、結局アルバイトや派遣など不安定労働にすがるしかなくなります。そして、卒業後も定職につかず、あるいは収入も不安定なまま、恋愛だけはし、子どもができてしまう。とても子育てをしている余裕など経済的、精神的にないはずなのに。そうなるとまたその子どもも同じ境遇に合い、その子どもも同じような家庭環境で育つことになる。でしょう。まさに家庭環境問題の世代間連鎖が起きるわけです。 こうした問題は、心理的な問題だけではない、相談やカウンセリングで多少本人の気持ちを癒せても、根本解決にはならない。生徒からそのような話をきいて、なんらかの福祉的援助や家庭環境調整が必要だと感じます。そして、そのためソーシャルワーク的アプローチが重要ということになります。
日本は長期な不況が続き、格差社会の底辺の家庭の子どもたちが現任校のような定時制にやってくるのですが、まさに、日本社会の貧困家庭の抱えている様々な問題に規定され、生徒の悩みや家庭環境の問題が生じてきていると思います。虐待の問題も無関係ではない。親の生活の余裕のなさもその一因だと思います。
私は、生徒と向き合うにつけ、単に、個別相談だけで問題は解決しないと思っており、ソーシャルワーク的に動くことがあります。私は臨床心理士でもありますが、臨床心理士の世界では、そうした活動を「臨床心理的地域援助」といいます。
そうした活動をしているとき、ふと日本社会や世界経済の問題にまで考えが及びます。日本はどうなるのでしょうか、いつになったら不況から脱出し、格差社会は解消され、雇用が増えていくのでしょうか。そうならないと、どんなに個別相談や地域援助をしていても虚しさを感じます。
社会科の教員であり歴史学でも修士号を取得している自分なのでそこら辺考えてみました。 以下は私の今後の日本社会が辿るであろう私の独断と偏見の予想です。ただ、一応、それなりの根拠はありますし、すでにこんなことは他の専門家が指摘していることだと思いますが。 @日本社会の経済的停滞はしばらく続く、それは、経済のグローバル化に伴うものである。経済のグローバル化はインターネットの普及等の影響からお起こらざるをえない。 その結果、日本の大企業は、賃金が安く、質のいい労働者が大勢いる中国やインドに生産拠点を移すのが当然で、いわゆる空洞化が起こっている。その結果、日本にはは雇用がなくなる。高度経済成長期のような大量雇用はしばらく起こらない。(その反対に中国、インドは今経済の高度成長期を向かえている)。 Aしかし、@の状態が続くことで、インド、中国等、それまで賃金が安かった国の賃金も上昇し、生活水準が向上する。一方日本は賃金の下落や生活水準の下落が続き、そのうち、インド・中国の賃金水準と日本の賃金水準がほぼ等しくなる。そうなると、企業も海外移転をする利得がなくなり、さらに生産拠点をより低い発展途上国に移すか、日本に戻ってくる。そのような過程を経て、アジア全体の賃金水準、生活水準がほぼ等しくなった時、海外移転をしていた企業が日本に戻ってくる。そうして、雇用状況は改善され、日本の経済も回復する。それは10年スパンで考えなければならない長期的な動きである。 B中小企業は海外移転ができないので、良質で技術力の高い中小企業は不況下でも生き残り、そこでの雇用ならある。むしろ求人倍率は高い。いま、正規採用をねらうなら中小企業だろう。ただ、それらの企業も10年スパンで考えると良質な技術をもっている企業は今後大企業化し、海外移転を考えるようになるであろう。 C政権党は、そのような長期経済停滞を克服できず、迷走せざるをえない。政権党が民主党になろうが、自民党に戻ろうが同じような経済停滞は続き、政権党の無策のせいにされる。上記@〜Bのような状況でも、日本の経済をもう少し活性化させる経済、政治理論をもつ理論家や学者のブレーンを政権党は持ち、少なくともその考え方に沿って経済を運営すべきであろう。 格差社会を産んだのは小泉純一郎総理の構造改革にあるとされているが、少なくとも小泉政権においてはブレーンがだれか(竹中平蔵)明確であり、彼がめざしていることも明確であった(新自由主義、規制緩和、民営化等)。だから小泉政権は人気があった。 今の菅直人政権はブレーンがだれであるかも明確ではなく、めざしている方向性もわからない。それが、国民に現政権のわかりにくさや軸のなさとして伝わっている。正直民主党の政策に沿った、経済ブレーンを明確に持ち、政策を遂行すべきであろう。 ただ、今のところ一番の懸念は財政赤字解消である。雇用状況がこれ以上悪化したり、国民の生活水準の下げないようにしながら、財政赤字解消をしていくのは至難の業であるが、ヨーロッパ諸国が国民の非難をあびながらもやっているようにやらざるをえないであろう。ドイツがうまくいっているので、ドイツを見習ったらどうか。
今後の世界情勢について @アメリカのイラク政権への軍事介入の失敗、アフガニスタン介入の昏迷の結果、今世界的に、戦争では問題は簡単に解決しないという風潮になってきており、イラク戦争のような悲惨な戦争が起こる可能性はなくなった。 Aただ、世界同時不況的様相を呈しており、世界の先進国の多くがアメリカ的資本主義の行き詰まりを認識するようになっている。だからといって、社会主義が衰退した今、別のバラダイムは登場していない。また、一国レベルでは解決できないような様々な地球規模の問題が起きており、それらに対して各国の思惑や対応がまばらである。環境問題、世界同時不況、テロ対策、アフリカの失敗国家の問題、エイズの蔓延、タックスヘブンへの資本やマネーの逃避による格差・税収減など、世界レベルで対応しなければならない難問が山積みしている。 Bにもかかわらず、対応がどの国も一国レベルなので、その対応は殆ど無策化するか、かえって悪循環になる。つまり、一国の政府が政府として機能していない。国家が国家としての役割を担えなくなっている。だから、国際協調が必要であり、各国の協力連携した対応をしないと雇用すら創出できない。
教育相談のサイトなのに、教育相談から離れた大きな議論になってしまいました。しかし、生徒たちの問題の背景には、このようなことがあり、それらがいい方向に向かっていかないと個別対応だけでは、生徒や国民が本当の幸福に近づくことはできないと思います。
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