第五回 “愁うべき開幕戦”の段

K:内野手、負傷により昨シーズンを棒に振る
S:内野手、大減量したが落ちたのは筋肉
T:捕手、パワーアップのため増量したが増えたのは贅肉

あざみ野、ファミリーレストラン「Y」にて


「ご無沙汰しております、Kさん。足はもう大丈夫っすか?」
「もう完璧!ショートストップはまかせてよ。ところで今日は女王はいないの、女王Mは」
「もうウチでスウェット着てゴロゴロしてるよ、あられでも食べながら」
「今日は246軍団ということでお声をおかけしておりません。ま、Sさんが家までお送りしたのち、部屋に上がりこんでスウェットも着ずに一緒にゴロゴロするっつーならここ(あざみ野)でもお呼びしたんですがね」
床がベタベタになりそうだな、小麦粉でもまいとくか」
「それじゃ天ぷらだよ、ロージンバックぐらいにしときなよ」
「いや、すべり止めをしたらダメでしょ。新聞紙でも敷いときゃいいんじゃないすか」
「えらい言われようだな。“固めるテンプル”を撒いとくっていうのはどう?」
“そのまま捨てられます”ってやつですか。それがいいですね。ともかく、開幕戦なんすけど、G嶌さんが右腕を故障して開幕サードが危ういんですよ。できてもセカンドとかいう可能性が高くて…Kさん、サードはどうですか?」
「俺、開幕戦行けるかまだわかんないんだよ。H野はダメなの?」
「肩弱いからねぇ。A路君の方がいいんじゃない、来れば」
「いやぁ、ヤツもどーいうわけかサードだとけっこうポロポロやるんですよね。ショートとかファーストはめちゃうまいんですけど」
俺とKさんのライバルか。でも、そう考えるとG嶌は守備はうまいよね、全然打てないけど」
「うん、うまいうまい。スローイングもけっこういいしね」
G嶌の守備俺の打撃があれば一流選手だな」
「うんうん、確かにそうだよね
「図々しい。Kさんも無責任な相槌をいれないでください」
「言ったこと全然覚えてないからね、Kさん」
「え、そうかな?」
「言ったことどころか、あった事柄さえ忘れてますからね。意外な無責任男って感じですよね」
「あ〜そうかもしんない」
「認めてる…しかも、そのリアクションもいい加減だし…」
「しかしなかなかいないね、サード。K林君でもいいけど、ピッチャーとの掛け持ちは厳しいしなあ」
「D聖もスローイングに難があるし、F澤に至っては…」
「ゴロ捕ってライトに投げちゃうよ」
「肩は強いんだけどねぇ」
「しょうがない、俺がやろうか。サードは強打者を置いとくもんだし」
「それは昔巨人にいたルイスを彷彿させますね。しかし、誰がやっても50歩100歩だな」
「わかった!俺がやるよ!」
「開幕、来れるかどうかわからないんじゃないの?」
「いや、大丈夫。完璧!!」
「さすがKさん。無責任感が強いですねぇ」