第六回 “結婚だよ! 全員集合!!”の段
〜鈴木選手結婚披露宴報告書〜
2001年10月14日、新横浜プリンスホテルにて
episode1
私がホテルの4階に到着したのは11時15分、受付では湯山選手と庸子嬢が微笑を浮かべ佇んでいる。“支払済み”の短冊を入れた祝儀袋を庸子嬢に手渡し、記帳をすべく私は筆をとった。ところが書けども書けどもインクがでない。 湯山「どゅふふふ(←笑い)墨をつけないと書けませんよ」 私「筆ペンじゃねーのかよ!」 庸子嬢「寺崎さん、まじボケっすか?」 日頃、“天然”呼ばわりしている庸子嬢から「まじボケっすか?」などとツッこまれた私は、その屈辱感から震える手で記帳を済ませ、悔し涙をこらえ来賓控え室へと向かった。 |
episode2
来賓控え室では羽織袴の鈴木選手が新婦とともに手持ちぶさたに椅子に座り込んでいる。 私「あれ、来賓控え室で晒されてるんですか?」 鈴木「もうしんどいよ。(腹を指して)ここに補強みたいのを入れてるんだよ」 私「その腹になんか入れるなんて、袴でかすぎ!(新婦に対して)キミは生身のまま着てるんだよね」 新婦「そうそう、ちょうどいいサイズで、って違うよ!ちゃんと入ってるっつーの!」 前からそうなのだが、この新婦はノリツッコミを多用するのが特徴である。花嫁衣装で身体を動かすのもままならない状況の中でも自分の持ち味であるノリツッコミを忘れない、そんなところに鈴木選手は魅せられたのであろうことは容易に推測できる。 |
episode3
座席表をみて眉をひそめているのは五嶌選手だ。 五嶌「(小声で)なんで社長の隣なんだよ〜まったく。五十嵐さんと代わってもらおうかな」 私「いいじゃないですか、社長直々のご指名じゃないんですか」 五嶌「とある情報で、一昨日社長が俺のことで激昂してたらしいんだよ」 私「だから直々のご指名なんじゃないですか!」 困惑の面持ちを見せる五嶌選手であったが、そこは酒好きの同選手、酒宴に臨むにあたっては笑顔を取り戻し、「ご祝儀の元はとるぜ」とばかりに勇んで小走りに本会場へ向かっていった。 |
episode4
本会場に移ると私の左隣の席には国広選手が座っていた。 私「惜しかったですね、ジャイアンツ。どうなんですか、原監督って」 国広「う〜ん、これで清原が出ていったら巨人ファンをやめるよ」 私「え〜、ホントですか?その際は是非YBへどうぞ」 この席でこんな爆弾発言を聞けるとは思ってもいなかったが、自分の過去の発言など一顧だにしない国広選手の長嶋采配批判を聞いたのは一度や二度ではなかったはず。清原移籍が杞憂に終わったからには、来年4月に「今年は巨人がきちんといただきますよ、100勝ぐらいしちゃうんじゃないかなぁ」などと国広選手がしたり顔でのたまうであろうことは想像に難くない。 |
episode5
披露宴が始まった。「新郎新婦の入場です!」と司会の声が響き渡る。 “いよぉ〜〜〜〜〜〜〜〜 ぽん!” 多くの参加者が椅子から転げ落ちるBGMが流れ「グレートカブキかよ!」といった三村ばりのツッコミをものともせず、勇壮な邦楽にのって新郎新婦がしずしずと入場、雛壇へと向かう。花嫁衣裳に身を包み、スポットライトを浴びる新婦はまさしく“東洋の神秘”。 三村「やっぱりグレートカブキかよ!」 “つかみはOK”と言わざるを得ないショーの始まりであった。 |
episode6
私のテーブルでは“いつから二人のことを知っていたか”というような話題となった。ちなみに私の場合は今年の4月初旬、プロ野球開幕第3戦、横浜スタジアムに鈴木選手が新婦を同行してきた時であった。その前日の「実はもう一人連れて行く」という鈴木選手の予告により、私は「いったい誰か?」と想像を巡らし「ひとみ嬢だったら一番オモシロイ!」という結論に至っていた。 そして当日、ウチにきた鈴木選手の車の助手席に座るこの日の新婦を見て、私は思わず「なんだ、普通じゃん!」と口走ってしまったのであった。 この話を披露したところ、同じテーブルにいた人々に「うんうん、確かに普通だ。面白くない」と深い賛同を得られたことは、“鈴木選手には何が求められているか”を端的に現している事象である。 |
episode7
余興として鈴木選手の同期、田端氏が率いるユニットが演奏を行おうとセッティングに入った。しかしセッティングは遅々として進まない。すでにパーカッションのセッティングを終えた田端氏が、間つなぎにマイクを握った。 田端「前の時に…」 言ってしまったNGワード。誰もが凍てついた瞬間であった。 田端「前の時にも演奏した曲なんですけど…」 まったく言葉足らずである。“前の川瀬君の結婚式の時にも演奏した云々”と言いたかったのである。まったく人騒がせなこの発言を巡って、会場内はおろか、後日社内においても諸説紛々、さまざまな流言蜚語を呼ぶ元凶となってしまったのである。当の田端氏本人はそんなことはおかまいなしに「演奏がうまくいかなかった」とブルーな気分に陥り会場を後にしたとのこと。 |
episode8
新婦の友人達が歌を披露している時である。 湯山「新婦の紹介であの娘と合コンしたことあるんですけど、携帯の番号も聞きましたよ」 私「へぇ、可愛い娘じゃん。その後はよ」 湯山「いや、電話して話したんですけど、次の日新婦に“もうかけないでください”って言われたんですよ」 私「なんじゃい、そら。電話にはでるんだろ?」 湯山「そうなんですけど……で新婦の結婚が決まってから、久しぶりにもう一回かけてみたら今度は鈴木さんに“もうかけるな”って言われたんですよ。なんでですかね?」 いったい湯山選手は何をやらかしたのであろうか。知り合って10分で王様ゲームが始まったと勘繰られてもいたしかたない相手のリアクションではある。 ちなみにこの件に関して、後日、鈴木選手は語った。 鈴木「カミさんはその娘に“湯山さんの番号登録しといて着信にその番号が表示されたら出なきゃいいんだよ”と入れ知恵してたよ。しかし湯山は俺が会ったことのない娘まで面識あるんだよな。」 |
episode9
宴もたけなわ、新婦の父が「娘よ」を熱唱すると会場は一気にヒートアップ。♪〜たぁーっしゃでくぅら・せぇぇぇぇぇぇぇ〜♪と“ら”と“せ”の合間の微妙なタメに失神する女性も続出。会場内が騒然とする中、新婦から父への手紙が読まれ、今度はあちこちからすすり泣きやどさくさ紛れの恨み節がもれた。最後に新郎とその父から参加者へ向けてのあいさつが行われたのだが… 父「若い二人を見守ってください!」 新郎「どこが若いんだ、いい加減にしなさい!」 参加者全員が「あ〜あ〜あ〜」とずっこけると同時にニューブリードのブラスセクションが鳴り響き、会場全体が回転しはじめた。すると雛壇の金屏風と背中合わせに石野真子がスタンバっており、「失恋記念日」などという場に相応しくない曲のイントロが流れつつ、披露宴は大団円を迎えたのであった。 |
筆者あとがき
「2次会、3次会、4次会報告書はよ!」と怒りを禁じえない諸兄もいらっしゃることとは思われますが、時流とともに記憶が褪せていくのも是非のないことです。それらの会合が非常に面白かった(ネタ的にね)のは間違いのないことであり、起草する意思がないこともないのですが、時間があって体調が整っていれば書こうかなという程度のことですので、虚弱体質の私めには非常に時間のかかる作業となることでしょう。過剰な期待をせずお待ちいただければ幸いでございます、っつーかネタよこせこのやろー!
何はともあれおめでとうございました。
「鈴木選手!マイケル・・・そのひたむきな嫁さがし・・・忘れません!」(原新監督あいさつより)