サトウ歯科だより |
院長のコメント 院長 佐藤俊一 この新聞が皆様に届く頃は桜吹雪が過ぎているでしょうか。 昨秋の話ですが、我が家の愛犬パピヨンのチャッピーを抱くと、口が臭く、歯のまわりの汚れがひどいので、よく観察してみると、歯がグラグラに動いていました。!
彼は生後6年で、人間でいうと40歳を越したくらいでしょうか、まだ、老齢というほどでもないし、 甘いものを食べさせていないし、ドッグフードで育てていたので、まさかこんなに早く歯周病になるなんて おもいもよりませんでした。 早速、近くの獣医さんに相談したところ、ひどく動いている歯は抜いて、残った歯は歯石を取っていかなければならないとのこと。 結局、全身麻酔下10本以上の歯を抜いてもらいました。抜いた後は、サトウ歯科医院で特別のブリッジを作らないといけないかなと考えていましたが、犬の歯は人間の歯よりも数が多いし、犬は人間ほどかまずに、のみこむ習性があるのでそのままほって置いてよいとの事でした。 事実、現在は、抜く前とあまり変わらないようですが、飼い主の反省としてドッグフードを過信して、ペットの口腔管理を見過ごしてきたことです。 いっけん硬そうに思えるドッグフードですが、口の中では簡単に砕けて溶けてしまい、一部は口の中に停滞しているようです。生肉を食べるように歯や歯茎の刺激もなく、普通のドッグフードでは自浄作用がないことがわかりました。 もちろん、犬は自分で歯を磨きませんし、こちらで磨こうとすると嫌がって磨かせてくれません。 犬も加工食品で過ごすと歯周病になる事が実証されました。 犬以上にソフトフードの加工食品に依存する人間が歯を全く磨かないで放っておくと当然歯周病になります。文明の恩恵によって美味しく調理された食事では自浄作用が期待できないので、絶えず歯や歯グキを清掃すること以外に歯周病を予防する方法はありません。 そのためにはブラッシングが重要な意味をもちます。 毎日の生活習慣の中で、いかに手際よく口腔内を綺麗にするか、結構生活の知恵が必要ではないかと思います。 最初は「手先の障害者用」に考案された電動ブラシが今や、「楽して歯を磨きたい」という発想で、コマーシャルベースにのっています。 「文明食には文明の利器を!」 その文明の利器を上手に使いこなせるかどうか時には検証する事も必要でしょう。
電動歯ブラシについて この頃、歯磨き指導をすると、お家では電動歯ブラシを使っていますという方が増えてきました。また電動歯ブラシってどうなんですか?という質問も増えてきたように思います。以前なら、断然手で磨くほうがいいですよ!とお勧めしてきましたが、この頃では人によっては電動歯ブラシの方が効果的という場合は、あえてそのまま電動歯ブラシの使用を勧めています。ただ、使用方法を間違っていたりしてちゃんと使いこなせていないと、折角の電動歯ブラシも歯ブラシがただ動いているだけのものにしかなりません。また種類も増えいったいどのようなものがいいのか、購入する場合にも悩んでしまう方も多いと思います。 今回は、そんな電動歯ブラシについてお話していきたいと思います。 ■電動歯ブラシの種類と使用方法 最近ではいろんな電動歯ブラシが販売されていますがブラッシングストローク(基本的な運動数の違い)で、1)高速運動電動歯ブラシ、2)音波歯ブラシ、3)超音波歯ブラシの3つにおおきくわけられます。 それぞれのタイプにより使用方法も異なってきます。 1)高速運動電動歯ブラシ(写真1)
昔から、電動歯ブラシといわれていたタイプで、小型モーターを利用し、毎分2500〜7500回のブラッシングストロークでプラークを除去する。ストロークの形式も反復・回転など様々です。 (使用方法) ・前後運動型(歯ブラシと同タイプ)では磨きたい部分に当て磨きます。もともと毛先が動いているものなので手用歯ブラシのように歯ブラシ自体を動かして使わないように注意が必要です。(写真2参照) ・回転型(丸型)では1歯ずつ包み込むように動かします。(写真3参照)
2)音波歯ブラシ(写真4)
リニアモーターを利用し、N極とS極を1秒間に約500回というスピードで切り替えることにより、ブラシを毎分約3万回の音波振動でプラークを除去します。 (使用方法) 従来の電動歯ブラシと同じ使い方をします。 (A)ブラシ部をよく湿らせる (B)ブラシの毛先を歯と歯ぐき(歯肉)の境目にピタッと当てる (C)スイッチを入れる (D)1本ずつ丁寧にずらしていく 注意:手用歯ブラシのように自分で動かす必要はありません。
3)超音波歯ブラシ(写真5)
人間の耳に聞こえない高い音波・超音波を利用し、歯とプラークのつながっている部分を弱め、プラークを除去する。口腔内細菌に直接作用して細菌の連鎖を破壊するともいわれています。 (使用方法) 手用歯ブラシと同じ使い方をします。 (A)、(B)、(C)は音波ブラシと同じです (D)1本ずつ細かく横に動かします 注意:超音波による振動は補助的な効果ですので、歯ブラシを持った手を手用歯ブラシ同様に、軽く横へ小刻みに動かしてください。 電動ブラシ(音波・超音波ブラシも含みます)を使っている方の多くは、これ1つで完璧に歯垢(プラーク)を取り除くことができると考えているようです。確かに音波・超音波歯ブラシの説明書等によると、歯と歯の間の汚れも落とせるとあります。本当でしょうか? 下のグラフ(図1)は、清掃用具のちがいによる清掃効果を比較したものです。手用歯ブラシより音波・超音波歯ブラシの方が汚れを落とす効果はあるものの、やはり歯間清掃用具(デンタルフロスや歯間ブラシ)の使用が必須となります。歯ブラシと歯間清掃用具を併用することにより、初めて適切なお手入れが可能になります。
使用上の注意点 1)力を加えすぎない 電動歯ブラシは、モーターの回転を高速振動に替えることにより物理的にプラークを取り除く器械です。歯の表面をブラッシングする圧力や方向を間違えると、歯肉を傷つけたり、歯を痛めたりすることもあります。そのため、歯ブラシの毛は普通の歯ブラシより柔らかめにできていますが、ブラッシング圧は毛束が広がらない程度にしましょう。当て方は練習も必要です。 2)振動を確かめてみましょう 振動には心地よい振動と不快な振動があり、人により異なります。また発生する音も不快と感じるためそれがかえって精神的なストレスになることがあります。電動歯ブラシの選択にはこのような点にも留意することが大切です。 3)プラスチックの部分を当てないように 歯ブラシの柄や先端のプラスチック部分が歯に当たると痛みを伴うこともあり危険です。とくに、介助ブラッシングに用いたり、子供の仕上げブラッシングの際は注意が必要です。 4)毛先を強くいれこまないように 音波・超音波ブラシの使用解説書には毛先を歯と歯や、歯と歯肉の間に入れるように示しているものがありますが、どちらも強い圧であったり方向が適切でなかったりすると、歯肉を痛めてしまいます。 清潔に保つためのポイント 歯ブラシの毛先の汚れの程度は試用期間が長くなればなるほど増し、とくに毛束の下の部分が汚れるようです。また、本体を家族と共同で使用する場合は、毛先はそれぞれ専用とし、とくに衛生面で留意する必要があります。 1)使用後は電動歯ブラシを作動させながら流水下で十分洗い流す。時々市販の洗口剤で消毒しましょう。 2)十分乾燥できる状態で保管しましょう。 3)替えブラシは早めに新しい物と交換しましょう。 4)電動歯ブラシ本体は、少量の食器用洗剤液を含ませた布で汚れをふき取り、その後、水洗いをして清潔な状態で管理しましょう。 歯磨剤について 歯磨き剤は粒子が機械細部まで侵入して故障をおこすことがあります。また、歯磨き剤の成分の研磨剤が歯や歯肉に対して悪影響を与えやすいので歯磨き剤は基本的には使用しないで下さい。着色が気になるので、どうしても歯磨き剤を使いたい場合には、液状・ジェル状のもの、又は低研磨剤と表示のある歯磨き剤をお選び下さい。あるいは、歯磨き剤なしで一通り磨いた後に、仕上げとして手用歯ブラシで少量の歯磨き剤を使用してもよいでしょう タバコのヤニとり用のものは研磨剤が多く入っていますので、高速運動電動歯ブラシにはむいていません。 電動歯ブラシの利点、欠点 電動歯ブラシの利点 1)手用歯ブラシのように歯ブラシを使いこなす練習をそれほど必要としない。 2)ブラッシング時間が短くてすむ 3)歯ブラシが独自に振動するので、歯ブラシを動かす手の疲労が少なくてすみ、毛先の届きにくい歯と歯の間や歯周ポケット内のプラークを落とせる(音波、超音波ブラシ) 4)毛先が当たればそのままの状態でブラッシングができる。 電動歯ブラシの欠点 1)手用はブラシと比べて、ヘッド、ネック、ハンドル本体は厚みがあり、大きくて重い 2)歯ブラシ本体の価格が高く、また替え歯ブラシや付属品も高価である 3)音や振動が大きく、人によっては慣れるまで時間がかかることもある 4)充電して使用する必要がある 5)歯や歯肉を傷つけることがあるので注意が必要である。 電動歯ブラシは以前に比べるとよりよくなってきています。ただ、使用方法を間違ってしまうと高価な動くだけの歯ブラシになってしまいます。人それぞれの生活スタイルや歯に対する関心の違いもあるので、楽ができてしまう電動歯ブラシは大変便利なものです。正しい使用方法を理解し使っていただければ、それなりの効果は期待できます。しかし、私たち衛生士の感覚からいけば、手で磨くことが一番には変わりありません。電動歯ブラシでとれない歯と歯の間の汚れは、補助的な道具を使用するしかありません。一度楽な電動歯ブラシを覚えてしまうと、どうしても手を使ってさらに面倒な補助道具を使わなくなることが多いようです。 現在大部分の人が歯を磨いていますが、ほとんどの人は満足に磨けていません。つまり自己流になってしまっていて、歯の表面に歯ブラシがうまく当たっていないのです。 確実に歯の汚れを落とすには、かかりつけの歯科衛生士に相談し、自分の歯や歯並びに合った口腔清掃法を習得することが大切です。
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