喫茶かのん。

美人のマスターが評判だが、なかなか客が定着しない。

それもそのハズ。ウエイトレスが帯刀しているのだから・・・。

それも、知らない人からすれば、鋭い目をして。

物騒きわまりない。

よって、結構すいている。

カランカランカラン

ドアを開け、一人の若者がやってきた。

がっしりとした体を包む大きめのコートはいつ洗濯したのかわからない。

そしてカウンターに座る。

「いつものでいいですか〜?」

おひやを出しながら、リボンの美人が声をかける。

「佐祐理さん、今日もきれいだね。今夜あいてる?」

喫茶店のカウンターに座る若者、”相沢祐一”は対応してくれている

この店の経営者”倉田佐祐理”の手を取りその瞳を見つめる。

「あはは〜、祐一さんがツケを払ってくれたらいつでもOKですよ〜」

にっこり笑顔でたまったツケの伝票を見せる。

「うっ・・・・・・・いつものお願いします・・・・・」

さらにいつのまにか首筋に切先が向けられていて、祐一はチャレンジを断念した。

無言で刀をしまうウエイトレス”川澄舞”。

祐一は一息つくと水を口にする。

「最近はどうですか〜?」

コーヒーを炒れながら佐祐理が祐一に聞く。

「まぁ、ぼちぼちかな?今、名雪がボード見に行ってますよ。」

「そうですか。がんばってくださいね。」

「俺達の未来のためにがんばりますよ。」

再チャレンジをする祐一。

チャキッ・・・

刹那、光が祐一のいたところを襲った。

舞の神速の抜刀術が空を切る。

祐一でなければ今ごろ首と体はさようばらしていたところだ。

「あはは〜、舞頼まれてたアレを祐一さんに渡してください。」

そんな危険な状況も関係なく、マイペースな佐佑理。

佐祐理の言葉に舞は奥に下がった。

「右足じゃなかったら、やばかったな・・・・」

つぶやきながら、祐一は席に戻ると、舞は奥から戻ってきた。

手には、布で包まれた何かを持っている。

「おかしかったら言ってくださいね。」

「ははは、佐祐理さんを信じてますから。」

祐一は舞から包みを受け取る。

「はい、どうぞ。」

佐祐理は出来あがったコーヒーを出す。

「ありがとう佐祐理さん。あとイチゴサンデーも作ってもらえるかな?」

ブラックのままコーヒーを飲む祐一。

「わかりました〜」

名雪用イチゴサンデーのグラスを用意する佐祐理。

別に祐一が食べるわけではない。

もうすぐここに来る彼の相棒が食べるのだ。

カランカランカラン

ドアを空けて涙をぼろぼろと流している女性が入ってくる。

「名雪、お前またネコにさわったな・・・」

「だって〜、ネコかわいいんだもん」

彼女はネコ好きでありながら、アレルギーという特異な人物なのだ。

「・・・はい・・・」

舞が名雪に水を手渡す。

一気に飲み干す名雪。

「佐祐理さん、イチゴサンデーお願いします♪」

「出来てますよ〜」

名雪の前に特大のイチゴサンデーが出される。

通常の2倍以上のサイズだ。

「用意いいですね。」

「ネコアレルギーの気配がしたから頼んどいたんだよ。」

コーヒーカップを置いて、祐一は名雪の頭をぽんぽんと叩く。

「ぽんぽん叩かない出よぉ・・・バカになったらどうするの。」

「その時は俺が責任とってやるよ。」

無責任に祐一は言う。

「えっ!?」

瞬時に真っ赤になる名雪。

顔の火照りをなんとかしようと、必死にスプーンを口に運ぶ。

その様子をにこにこと見守る佐祐理と、ちょっとおもしろくなさそうに見る舞。

「で、なにか仕事はあったのか?」

コーヒーを飲み干した祐一が聞く。

ボディーガードから探し物までなんでも幅広くやっている祐一&名雪。

彼等が客とコンタクトをとるのは、駅のボードだ。

名雪はそのボードの確認から帰ってきたところである。

「うん。え〜と・・・・・明日の10時に会うことになってるよ。」

「じゃあ、それお前に任せたわ。俺寝てるから。」

「え〜〜。私も寝てたいよぉ。」

「それがお前の仕事だろうが!」

祐一は舞にお冷のおかわりを頼む。

「でも、どんな人に仕事を頼むのか、直接会ってみたいってたのに・・・香里・・・」

名雪がぼそっと漏らした名前に祐一は機敏に反応する。

香里。名雪の高校時代の親友がそんな名前だったハズだ。

写真を見る限り、かなりの美人であったハズ・・・・・。

以上の情報が祐一の”女性データベース”から検索される。

「そうか、そういうことなら俺が直々に行こうじゃないか!」

立ちあがり力強く言う祐一。

「なにか邪まなものを感じますね〜」

「魔は討つ・・・・・・」

だが、名雪はそんなことおかまいなしにイチゴサンデーと闘っていた・・・。





トリガーを引くのは  第1話 




朝9時。

相沢祐一はいつもよりも気合が入っていた。

それもそのハズ。これから特A級の美女と会うのだ。

いつものぼろいジャケットではなく、白のきちんとアイロンのかかったものを着る。

待ち合わせのホテルに行く前に花屋によって、昨日頼んでいた花束を受け取る。

なけなしの小遣いをはたいて買った薔薇の花束だ。

佐祐理さんが見たら、

「その前にツケを払ってほしいですね〜」

なんて言われかねない。

しかし、祐一はこれを買わずにはいられなかったのだ。

心の中で佐祐理にあやまりつつもホテルに向かう祐一の足取りは、非常に軽いものであった。









ホテルの1室。

祐一と会うことになっている”美坂香里”は沈んでいた。

「栞・・・・・・」

愛する妹の名を呼ぶ。

コンコンコン。

部屋をノックする音が聞こえた。

香里は立ちあがり、ドアへ近づく。

「どなたですか?」

「愛の使者です。」

わけのわからない事を言う男の声に警戒心をかきたてられる香里。

「あの、そういうのはお断りです。帰ってください。」

彼女はドアから離れる。

「そんなこと言わないで開けてくださいよ。」

「フロントに言って警察を呼んでもらいますよ。」

本当に受話器をとろうとする。

「ちょっとまった!名雪との約束の件で来ました相沢です。」

「えっ!?」

香里はドア越しに穴から外をみる。

確かに名雪から渡された写真の人物であった。

「・・・どうぞ。」

ドアを開けて中に招く。が、突然視界いっぱいに花が入る。

「これはお近づきの印です。受け取ってください・・・」

祐一が薔薇の花束を差したのだ。

「あ、ありがと・・・」

条件反射的に香里は受け取る。

「よく、お似合いだ。」

「そう?名雪の言ったとうりね。」

「へ?」

「相沢さんならきっとこうするだろうって言ってたもの。」

「名雪なにか言ってましたか?」

「祐一はスケベだから気をつけてねって、このハンマーを置いていったわ。」

そういうと彼女はどこからか、100tとかかれたハンマーを取り出した。

「なにかしてきたら、これで撃退してって。それから・・・・・・彼の腕は確か、とも言ってたわ。」

そこで始めて呆れ顔だった香里の顔が真剣なものとなった。

「ご期待にそえるようにがんばりますよ。」

つられて、祐一の顔も真剣なものとなっていた。
その表情を見た彼女は、名雪の言葉を信用することにした。

いろいろな意味で・・・。





<つづく>



どうも、せーりゅーです。
短期集中連載を始めました。
タイムリミットは2・24までです。
さてさて終了することができるのか(爆)



御意見・御感想はこちらまで



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名雪「ねえ、結局この連載にすることにしたんだって。」

香里「なんでも、他のじゃ元ネタや設定がわかりにくいからとか言ってたわね。」

名雪「源氏物語なんてキャラが足りないんじゃないの?」

香里「それは1人2役3役のつもりだったらしいわよ。」

名雪「じゃあ、私も何役かあったのかなぁ。」

香里「なんにしてもボツになったらしいわ。」

名雪「私も祐一が浮気ばかりする話しはやだよ〜」

香里「そうよね。他の2つのネタは設定がわかりにくいからボツにしたらしいわ。」

名雪「設定が面倒になっただけだったりして・・・」

香里「そうかもね。」

名雪「でも、この話にしても第1話じゃわかりにくいよぉ。」

香里「そうね。わかりにくいわね。誰がヒロインかもよくわからないものね。」

名雪「ヒロインは私だお〜。それとも香里はヒロインやりたいの?」

香里「私は別に・・・・」

名雪「なら、ヒロインは私で決まりだね♪」