To Heart 二次創作


とんとんとんとんとん・・・・
台所にリズミカルな音が響く。
「あれから、もう3年か・・・。」
あかりと、幼なじみから恋人になってから3年あまりがすぎた。
俺とあかりは、近くの大学にかよってる。順調な毎日を過ごしているといってもいい。
俺は大学に通いつつ、エクストリームで優勝するために日夜特訓の日々を続けている。
この前の大会じゃ、いいところまでいった。
ほんとに強くなったわね、と綾香がほめてくれるほどだ。
そのあと、きっちりとご褒美をもらったけどな。おっと、これはあかりには内緒のことだった。
そうそう、最近では誘拐されそうになった芹香先輩をたすけたこともある。
ほんとに偶然だったけどな。ぶっそうな世の中だ。
「来栖川グループ・・・」
手にしていたパンフレットを机に投げ出す。
そこには<来栖川エレクトロニクス>のメイドロボが載っていた。
自然とあの日の夕焼けが目にうかんでくる。
きれいな夕日だった。きっとあの子もそう思っていてくれるだろう。
そうだ、今日こそあかりに言わなくてはならない。言うべきだ!
だが・・・憂鬱だ。
これまでもなんどとなく切り出そうとしたのだが、何時きりだそうかと考え、はや一月。
その時の反応が手に取るようにわかだけにきりだせない。これも長年の付き合いの成果といえよう。
チラッと後ろを振り向くと、あかりがうれしそうに料理をしているのが目に入る。
いいにおいがしてきた。何かを炒めてるようだ。
大学生になってから、ほとんど毎日つくってもらっている。
「はぁ・・・」
それだけに、答えがわかりきってるだけに、なかなかきりだせない。
だが、あの子との約束は守らなくてはならない。
頭をなでてやると喜んでくれたあの子との・・・。
「浩之ちゃん、もうすぐできるからね♪」
その言葉さえも、いまは正直つらい。どうやってなだめようか。
とりあえず、メシ食ってから切り出そう。うんそうしよう。
腹が減ったら戦ができぬ、というしな。
そうきめると、食卓につくことにした。

 



あかりの料理はうまい。
俺好みのあじつけをマスターしている。
これならば何時嫁に出しても・・・って、出す気はないが。
あかりは俺専用だ!なんて本人にはいえないけど・・・はずかしくて。
そんなことを考えながらあかりを見ると、こちらをみてニコニコしていた。
「早く食わないと冷めるぞ。」
「うん。わかってるけど、なんか嬉しくて。」
「なにが?」
「私の作った料理を、こうやって一緒にたべてるのが。」
「ばーか、いまさらなに言ってんだよ」
「えへへ」
あかりの頬に赤みがさす。幼なじみから恋人になって3年。
あかりのこういうところは変わらない。
「ごちそうさん。」
「おそまつさまでした。」
食事が終わり、あかりは食器を洗い始める。
洗い終わるまでが、俺に残された最後の時間かもしれない。
俺も明日の太陽が拝みたい。太陽にほえたい!
まだ、殉職するにははやすぎる。
「ふうーっ・・・」
一息ついて、精神集中をする。
迷いは・・・・・・・ある。
未練も・・・・・・・ある。
最悪のパターン‘浩之ちゃんを殺して私も死ぬ‘は回避しなくてはならない。
以前、綾香と葵ちゃんと一緒に一晩中のんで、朝帰りをしたときもひどかった。
まぁ、あのときは志保のせいだったのだが。
あかりに夕飯はいらないといわずにでたので、ずっと俺をまってたらしい。
心配したあかりは雅史や志保に電話してきいたようだ。
そして、いつもながらの志保ちゃん情報の間違いにより、
俺は綾香と二人で飲みにいっているということになっていた。
そして朝帰り・・・。
その後のことは・・・思い出したくない。
日ごろの綾香の言動もあって、とことん修羅場になった。
あのにのまいは、ごめんだ。
大丈夫。俺の愛は届くはずだ。
わかってほしい。
わかってくれるだろう。
わかってくれるさ。
わかってくれるかな。
お願いわかって!
届いてMy Heart!!
俺の心の祈りが終わるころ、あかりがこちらにきた。
なんか尻尾をパタパタとふって来てるみたいで、とっても犬チック!
なんてばかな事を考えてる時ではない。
覚悟を決めよう。さあゆけ!ゆくのだ浩之!
俺は勝つ!きっと勝つ!俺は勝つ!!
「あかり・・・ちょっと、いいか?」
「なぁに、ひろゆきちゃん。」
あかりの笑顔に一瞬ひるみそうになった。
逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ!、逃げちゃだめだ!!!
パンフレットをあかりにさしだす。
「これをみてくれ。」
「これって、メイドロボのパンフだね。」
パラパラっと目を通す。
「これって、マルチちゃん・・・まさか!」
あかりがじっと俺の目をみつめる。
瞳がうるんでる。
たぶん、私がいらなくなったからとか、私にあきたからとか、
私が家事をこなせないから、とか考えてるに違いない。
さらにマルチのことが忘れられないんじゃ、とか・・・かんがえてるな。
「マルチを買おうとおもってるんだけど、どうかな。」
おそるおそるいってみる。
「浩之ちゃん。」
「なんだ。」
「私の料理おいしい?」
あかりは目を伏せ肩を震わせている。
間違いない。考えてる、予想どうりに。
「うまいぜ。俺好みの味付けだし。」
「うそ。だったらなんで!」
「いや、それは・・・」
「私にあきたの?私がいらなくなったの?私はいらない子なの?」
「それはない!ぜったいにない!」
びくっとしてこちらをむく。チャンスだ。ここでなんとかするしかない。
「そんなこというなよ。悲しいじゃないか。」
あかりをそっと抱きしめる。よし、ポイントUPだ。ここでいっきにたたみかけるぞ。
「あかりがそばにいてくれてうれしいし、こうやって料理を作りにきてくれるのもすごくうれしいよ。」
俺はできうるかぎりやさしく語りかける。実際そう思っているだけにスラスラと台詞がでてくる。
「俺にはあかりが必要だ。」
そして微笑みかける。完璧だ。ドラマのように決まった。
これでだめなら、犬チックごっこでごまかそう。
あかりの瞳をみつめる。
あかりが俺の瞳をじっとみつめてくる。
俺もみつめかえす。もう言葉はいらない。俺は勝った!
が、二人の距離はゼロに・・・・ならなかった。
ピンポーンというなんともタイミングの悪いチャイムに邪魔されたからだ。
ちっ、うまくいきかけたのに。しかたない。
あかりに軽くキスをすると、玄関へむかった。よし、これもいいポイントになったはずだ。
ピンポーン
「はいはい、今でますから。」
戸をあけると、メガネの天使であり悪魔でもある男がたっていた。
「やぁ、ひさしぶり。」
その名を長瀬源五郎という・・・。

 

 

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