平成12年度 教育実践記録 自ら追究する子の育成 ― 4年生での総合的な学習の時間 ― 「明治用水遊歩道のひみつをとき明かそう」の実践を通して |
はじめに 本来,子どもたちは何に対しても好奇心旺盛で,さまざまなことに疑問を持つ。わからないことがあるとすぐに「どうして?」と聞きに来る。「自分で調べてみたら?」と応じるが,「・・・・」と意欲が減退してしまう。これは,「調べるのが嫌だ。」というよりも,「どうやって調べたらいいのか分からない。」というのが正直な気持ちであろう。こんな子どもたちに「じゃあ調べてみるよ。」という気持ちを持たせ,そして「先生,分かったよ!」という,「わかる喜び」を味わわせたい。 そんな気持ちから平成9年度以来,一貫して「自ら追究に取り組める子の育成」を目標として実践に取り組んでいる。平成9年度は「原始の灯をともそう」,10年度は「ケナフを育てて紙を作ろう」,11年度は「京都に学ぶーぼくの私の手づくり修学旅行ー」をテーマとして,ささやかながら実践を重ねてきた。この3年間の実践は,私が4・5・6年生と,3年連続して担任した学年での実践であった。したがって,幸いにも3年間の子どもたちの変容を見続けることができた。 3年間の実践を通して,子どもたちは自ら見つけた疑問を追究課題として設定し,それを解決するために自分なりに追究活動に取り組む力を身につけることができた。しかしながら,以下のことがらが課題として残された。 以上の課題を自分なりに克服し,よりよい指導法を模索すべく,今年度の実践に取りかかった。 |
明治用水遊歩道 |
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研究の目的 “自ら課題を見つけ,自ら学び考え,問題を解決する力などの「生きる力」を育てる”(指導要領解説:総則編より)この一文では「生きる力」を,例えば“問題を解決する力”としている。私はこれを「個性を生かして追究し,学ぶ楽しさを味わう」と解釈し,研究の目標をこの1点に絞って取り組んだ。 ― 研究のねらい ― 自ら課題を見つけ,個性を生かしながら,見通しを持って追究し,学ぶ楽しさを味わうことができる。 |
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研究の仮説 今回の実践で重点的に取りあげたい「個性を生かしながら,見通しを持って追究」について,次のような仮説を立てた。
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研究の方法 1 地域の教材を掘り起こす 身近な「明治用水遊歩道」を教材化することは,追究することの楽しさを味わい,学び方やものの見方・考え方を身につけさせることに有効に働くと考える。子どもたちは明治用水遊歩道を,あまりに身近すぎ,あって当たり前という感覚でとらえている。しかしこのような施設が身近にある例はそれほど多くなく,貴重な学習の素材足り得る。また,子どもたちは遊歩道について関心を持って見つめたこともなさそうで,案外知らないことが多い。新たな目で見直すような刺激を与えれば,興味を持って追究活動にとりくめそうである。遊歩道がなぜつくられたのか,人々のくらしと遊歩道,これからの遊歩道,そして環境問題へも発展させたい。いつでも行けることや家庭での共通の話題にできることも魅力であり,持続した体験活動が期待できる。 2 外部機関(明治用水土地改良区)との連携 明治用水遊歩道に関しては明治用水土地改良区という組織が存在する。この機関をフルに活用し,子どもたちの追究が高まることを期待したい。学校外の方々と関わることで新鮮な刺激を受け,かつ貴重な情報が得られるだろう。 3 追究活動の進め方 ▽ 課題設定の方法 総合学習にとって課題設定は成否を左右する重要なファクターである。“はじめに体験ありき”で,遊歩道を何度も歩き,その過程で子どもたちに疑問を持たせる。そしてそれを検討し直し,自己の疑問を高め,さらに精選する。同時に個性を生かした追究の見通しを立てる。このようにして各自の追究課題を設定する。 ▽ 追究の高め方 “ミクロの目からマクロの目を育てる” いきなりテーマに迫るような立派な課題を設定できる子はまずいない。「なぜ遊歩道は石できているのか」といった些末な小さな疑問でもまずは認めてやり,追究にかかる。些末に思えても,実は大きな問題を内包している場合もある。小さな疑問(第1次課題)を解決することで喜びを味わい,そして次の疑問(第2次課題)の解決へと意欲が高まる。「なんで?」「どうして?」という小さな疑問を繰り返し解決しながら,次第にものの見方・考え方が広がり,主題へと迫れる。また。この方法であれば,根気よく継続して追究する意欲をも高めることができる。 ▽「情報板」の活用法 “情報交換”と“相互評価”を目的とし,〈遊歩道情報板〉を設置する。そこへ全員が自分のカードを掲示する。カードは「計画カード」と「結果カード」があり,一つの活動ごとに計画を立て,結果まとめ,それを掲示していく。このカードはどちらも意識的に白紙とした。教師が形式や項目を決めると,子どもたちはそれにとらわれ,自由に書くことができないからである。この情報板を見て,「次の時間は,遊歩道はいつ作られたのかを調べに市役所へ行く」という計画を立てている子は,同じ追究方法をとっている子を知り,一緒になって次の学習の計画を立てる。目的が同じ子であるから話し合いも活発になり,お互いの考えを高めあうこともできる。子どもたち同士の相互評価の手段としても有効である。 ▽ 成果のまとめ方 個性に合わせた“好きなまとめ方”をする。新聞,論文,パンフレット,地形模型,絵地図など,内容や個性に合わせた任意のまとめ方をする。 4 研究の計画 学習の見通しを次のように立てた。具体的には,子どもたちの追究の様子によってどのように展開するか未知の部分が多いが,教師の押さえとするための見通しである。
5 評価について 評価については次の3点から考えた。
本実践では特に【子どもたちがする評価】がポイントとなりそうである。評価の観点として,前述の〈遊歩道情報板〉を有効に機能させたい。1活動が終わるたびに2種のカードを書くというサイクルにすることで,子ども自身も教師も継続した細かい評価が可能である。資料の蓄積もでき,いつでも振り返りができる。 教師側もこまめに個々の進行状況をチェックし,全体の様子を把握することもできる。 |
情報掲示板 |
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実践の概要(4年生での実践) ー明治用水遊歩道のひみつをとき明かそうー 1 実践にあたって 学年はじめ,今年の総合(本校では「くすのきタイム」と称している)でどんなことをやりたいかについて意見を出し合った。 〜途中省略〜 以上のような経過で明治用水遊歩道を調べることになった。単元設定にあたり,教師は次に述べるような願いを持った。
この実践は学級の枠を取り払い,同一課題をもつ子でグループを作り,学年体制で取り組むことにした。 実践の紹介にあたり,代表児としてY子をとりあげたい。以下,Y子の学習の様子を中心に実践を紹介したい。
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2 課題設定の段階 (1)Y子の学習の様子 ● 5月15日の第1回目のくすのきタイムでは,遊歩道について知っていることを作文に書いた。ここでは,自分はどんなことをどれくらい知っているのか,具体的に何を知っているのか,を明確にさせたいと考えた。頭で考えるだけでなく,実際に文に書いてみることで子どもたちは,意外と自分が何にも知らないことを自覚した。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜 ● 5月22日,自由に遊歩道を歩いた。今まで何とも思っていなかった遊歩道だが,「わからないことを見つけよう」という視点で歩いてみると,不思議に思ったことや分からないことが数多くでてきた。これが私のねらった「誰もが興味・関心を持つことができ,そしてどこからでも切り込んでいける間口の広い題材」である。このことが自分なりの追究方法がとれ,個性的な追究となっていくだろう。 Y子は登下校で際遊歩道を通っている。それが当たり前のことになっており,特に今までは遊歩道について何ら特別な意識は持っていなかった。今回,問題意識を持って歩いてみてさまざまなことに関心を持ったが,「遊歩道って,こんなにたくさん花や木が植えてあったのか。」ということに最も強く興味を持ったのである。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜 ● 6月3日,学年全員が集まって意見交換の会を開いた。自分の発見や疑問を全員が発表した。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜 ● 6月15日には,まず第1に調べたいことを決め,同じ考えの子が集まってこれからの計画を立てた。Y子は,まず花に絞って調べることにした。そして,同じく花を調べたいという友だち4人とグループを作った。 この段階は第1次課題を設定する段階である。どの子も自分が知りたいと思ったことを課題として設定し,そしてとりあえずの解決方法を考えることができた。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜 その他の子の第1次課題は次の通りである。
(2)ここまでの実践の分析 1年生の時から毎日遊歩道を通って通学しているY子。あまりにも身近すぎて,何ら特別な意識を持っていなかった。ここまでの学習でY子は遊歩道の植物に関心を持つようになった。そして,「花や木の種類をすべて調べよう」という自己課題を設定することができた。どの子の疑問も大人から見れば些細なことであるが,こういった一人一人の疑問をすべて認めてやり,思い通りの方法で追究させることが,個を生かす,個性を生かすことに大きく機能すると考える。これら小さな疑問がさらに次の疑問(第2次課題)を呼び,小さな解決から大きな解決が味わえるよう支援をしていきたい。 |
6月15日の学習の様子 (肖像権上の問題から画像は ぼかしてあります) |
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3 課題追究の段階《1学期分》 (1)Y子の学習の様子 ● 6月26日,それぞれのグループ別に追究計画を立てた。その内容は追究計画書に書き,情報板に掲示された。このように1つの活動のたびに計画を立て,そして結果をカードに書くことで子どもたちは自分なりの追究への見通しを立てることができる。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜 ● 7月1日(土),この日は半日をかけて遊歩道の調査に出かけた。このときは「市の図書館に資料を探しに行くグループ」「歩いて調査するグループ」そして「自転車に乗って遠くまで調査に行くグループ」の3つに分かれた。自転車で出かける子は「遊歩道はどこまで続いているんだろう」という疑問をもった子たちである。Y子は歩いて調査するグループである。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜 ●7月10日,次回の調査(7月17日)の計画を立てた。Y子たちは前回の調査でできなかった地図づくりをやることにした。計画が早く立ったので,Y子を中心に地図づくりの準備をしてこの時間は終わった。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜 ●7月17日は1学期最後の実態調査である。今回の調査では,どのグループもやり残したことを中心に取り組んだ。Y子たちは範囲を学区内と限定し,遊歩道の地図づくりに取り組んだ。そして地図中に花壇の位置を記入していった。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜
● 8月3日(木)の学習 この日は学年出校日。相手方の都合で延び延びになっていたが,市役所と明治用水の方を招いての取材を実施した。参加してくださったのは知立市土地改良課から2名の方,明治用水土地改良区から1名の方である。子どもたちは今までの追究で,どうしてもわからなかったことを盛んに質問していた。Y子は遊歩道に植えてある花について,次のような質問をし,満足できる回答を得た。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜 今回の聞き取りでY子の第1次課題は解決された。しかし,「こんなにたくさんの花を一体だれが世話しているんだろうという」という疑問が新たにわいてきた。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜 (2)ここまでの実践の分析 ここまで2回,計7時間をかけて実態調査を実施した。また,ゲストティーチャーを招いて聞き取りを実施した。それぞれの活動の前後には必ず「計画カード」と「報告カード」を書いた。そしてそれは情報板に掲示され,友だち同士の情報交換に役立ってきた。その効果として,「今自分がやっていることは何なのか」「ここまでに何ができているのか」そして「これから何をするのか」という3つのことを明確に意識しながら進めることができた。いわば,自分なりの見通しをもって進めてきたと言える。 また,8月22日に開かれた「明治用水せせらぎ遊歩道サミット」で,ここまでの成果を発表し,子どもたちの2学期以降の追究意欲は大いに盛り上がった。Y子も参加した。この様子は巻末に資料として掲載してある。 Y子の場合も「たくさんの花や木がきれいに植えられている」→「名前を調べよう」→「どこにどんな木や花が植えられているか地図にまとめてみよう」→「一体だれが植えているのか,だれが世話をしているんだろう」と第1次から第2次課題へと追究が高まった。 |
明治用水会館での取材 遊歩道での調査 (意図的にぼかしてあります) 夏休みに行われた取材会 せせらぎサミット |
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4 課題追究の段階《2学期分》 (1)Y子の学習の様子 Y子の2学期の課題は「だれが世話をしているんだろう」という点に絞られた。「花調べ」から「人調べ」へと視点が高まってきている。このことは,目に見える疑問から,さらにそれを支える人々の存在,いわば目に見えない疑問へと高まりを見せたと言える。 ●9月4日(月)の学習 1学期の実践を振り返り,2学期の各自の計画を立てた。Y子は「木や花をだれが世話しているんだろう」を追究テーマとした。 しかし,情報板から,K男が「いつも遊歩道はきれいだけど,だれが掃除しているんだろう」という疑問を持っていることを知り,このことにも興味を持った。そこで,今後はK男といっしょに調べていくことになった。情報板が大きな効果を果たした。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜
Y子は遊歩道を歩いている人や遊歩道近くに住んでいる人に聞き取り調査を行った。この日は6人に話を聞くことができた。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜
引き続き聞き取り調査を実施した。この日話を聞けたのは5人であった。ほとんどの人が気持ちよく協力してくださり喜んでいた。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜
今日は最後の実態調査である。この日は7人から話を聞くことができた。その中でY子が注目したのは「△△造園と書いたトラックが来て植え替えや剪定をしているよ。」という散歩中のおばあさんの話である。これを知ったY子は,業者探しに熱中するようになる。この活動にはK男もいっしょだった。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜
掲示板に貼ってあるカードを順に見ていけばよいのだから,振り返りは簡単である。各自が振り返って,できていることとできていないことを確認した。
(2)ここまでの実践の分析 どの子も追究のスタートは資料10で示したように,小さな疑問であった。“遊歩道はなぜ土ではなく石粒でできているのだろう”という疑問をもったT男は「維持・管理がしやすいから」であることを知った。さらに追求が高まり,遊歩道を補修するなど,「縁の下の力持ちが存在する」ことを理解した。同様に“せせらぎにはどんな魚がいるんだろう”という疑問を持ったM子は「地域の中に自分の鯉を放流している人がいた」ことを知り,その後もずっと餌をあげるなど「せせらぎの世話をしている」ことを知って,地域の人が遊歩道によせる情熱を理解した。 このように,大人から見ると些末な疑問であっても,それを認めてやり,個を生かした追究をしていくうちに,疑問が疑問を呼び,やがてテーマに迫る追究へと高まってきた。 |
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5 まとめの段階 11月は追究の進捗状況に差があるため,まとめにとりかかる子と調査を続ける子に別れる。Y子は業者の存在が自分の目で確認できていないため,こだわりを持っていた。 ●11月4日の学習 Y子は地図が完成していなかったので,1時間目はグループの子と地図づくりに取り組んだ。2時間目は,造園業者に関する情報を集めるため,K男たちと遊歩道に出かけた。いつでも出かけられるのはたいへん好都合である。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜 ●11月13日の学習 今日は1時限だけの学習であるため,Y子は今までのまとめに取り組んだ。 ●11月18日の学習 今日の学習は2時限分あるため,Y子は早速遊歩道へ出かけ,造園業者に関する情報を集めた。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜 ●11月27日の第2時限のできごと 私の学校の北側の窓からは遊歩道を見ることができる。2時間目の授業中,造園業者がアベリアの植え替えをしていた。まったくの偶然であるが,見つけた子は,Y子がこのことを調べていることを知っており,すぐに知らせに来た。さっそくY子は飛び出していって聞き取り調査をした。偶然とは言え,今までの苦労が報われたY子はとても満足していた。 ●11月27日の学習 6時間目のくすのきタイムの時間にY子は早速さきほどの聞き取り結果を友だちといっしょにまとめた。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜 ●12月2日の学習 今日は第1回目の発表会である。Y子はまだまとまっていないため,今日は聞き役である。 ●12月4日と12月11日の学習 Y子は同じグループの仲間とともにまとめ(パンフレット作り)に取り組んだ。 ●12月16日の学習 この日はY子たちのグループの発表であった。Y子は“遊歩道花マップ”と名付けたパンフレットを作った。それを印刷し,学年全員だけでなく,より多くの人に知ってほしいと遊歩道を歩いている人,そして近所にも配布した。発表会ではパンフレットを使って「研究の目的」「研究の方法」「調べた結果」「質問や意見」の4部構成で発表した。 〜Y子の記録は割愛します。(著作権上の問題から)〜 6 今後の学習計画 それぞれの子がそれぞれの課題を解決することができた。次は追究活動を通してそれぞれの子が抱いた遊歩道への思いをどうするかである。それぞれの子が「思い」を持った。それを表現する方法として,「夢の遊歩道を考えよう」というテーマを設定したい。自分が追究してきた結果を基盤として,これからの遊歩道はどうあるべきかを考えていく。そしてそのまとめは,3月の「明治用水遊歩道シンポジウム」で発表する予定である。 |
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成果と今後の課題 明治用水遊歩道という,一見扱いにくいネタであったが,視点を変えてみることで子どもたちには好評なネタとなった。 今回の実践の目玉は「2種のカード」と「情報板」の設置であった。カードは実践を重ねるにつれ,どんどん増えてくる。子どもも教師も,一人一人の追究の過程を一目で知ることができる。重ねて貼ってあるので,めくっていけば4月当初の計画も知ることができる。子どもたちは他の子のカードを見て,自分と同じ方法をとっている子があれば声をかけ,次回からいっしょに行動する。 例えば,A子は遊歩道に植えられている花に関心が向いた。掲示板を見て同じく花に関心を持っているB君を見つけ,「次はB君といっしょに遊歩道の花壇マップを作ろう」と決める。そしてそれができあがり,次に植えてある樹木にも関心がわいてきたA子は「C君が木について調べていたから,次の時間はいっしょにやって教えてもらおう」と,C君とグループを作る。そしてさらに追究が高まってくると「こんなにたくさんの花や木がいつもきれいだけど,だれが木や花の世話をしているんだろう」という疑問になり,同じ疑問をもった子が集まってグループを作る。そこでは,今までの自分の追究結果を出し合って,話し合いがされ,追究が始まる。 ここまで来ればかなり追究が高まってくる。だれもが気持ちよく遊歩道を利用できるよう,陰で支える人の存在に目が向いてくる。こうしたカードの累積とそれを情報板で公開するという追究パターンを設定することで子どもたちは身をもって学び方(学習技能)を身につけることができた。これこそが「個性を生かしながら見通しを持った追究ができる」ことである。 また,教師が実践の全体を振り返ったり,個別の支援などの面からもメリットは大きかった。そして3人の担任が同じように学年全員の追究の様子を把握することができたこともよかった。 今後の課題としては,まずは3月の明治用水遊歩道シンポジウムへ向けての学習である。自分たちの追究を生かす場として,「夢の遊歩道」の姿を求めていきたい。 つぎに,本実践で身につけた「個性を生かしながら見通しを持った追究ができる能力」を他教科の学習へと広げていくことである。総合的な学習の時間でなくとも,国語や算数の学習でも,自らの疑問を基盤とした学習課題を設定し,自分の力で解決していこうとする意欲を育て,そして解決する能力を育てていきたい。 おわりに つたない実践であったが,情報板については思った以上の成果を上げることができた。今後,他教科でも取り入れていきたいと思っている。 |
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