私の考える〈総合的な学習の時間〉
INDEX
“総合的な学習の時間”の目指す力 | “総合的な学習の時間”をどうとらえるか |
“総合的な学習の時間”実践10カ条 | “総合的な学習の時間”の構想を立てる |
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13年度日本生活科・総合的学習教育学会神奈川大会参加記録 | 12年度の実践の紹介 |
14年度日本生活科・総合的学習教育学会茨城大会参加記録 | 14年度の実践(私の勤務校) |
「総合的な学習アラカルト」 |
総合的な学習の時間”の目指す力 21世紀を生きる子どもたちのためにつけたい力とは? 総合的な学習でほんとうにつけたい力とはいったい何なのでしょうか。私は 一貫して「地球市民としての資質を身につける」ことと考えています。 総合的な学習の時間が創設された背景をもう一度考えてみましょう。受験地 獄に代表される教育への反省と改革から,84年に臨教審が教育の抜本的な改 革に着手しました。ここから生まれたのが「ゆとり教育」です。これを受けて 第14次中教審が91年に最終まとめを発表し,その中に「新しい学力観」が 盛り込まれました。当時の文部相は93年に「新しい学力観に立つ教育課程の 創造と展開」という指導資料を作成しました。これはみなさんご覧になったこ とがあるでしょう。 その中に「激しい変化が予想されるこれからの社会においては,子ども一人 ひとりが主体的,創造的に生きることのできる資質や能力の育成を図る」と述 べられ,さらに「自ら学ぶ意欲や社会の変化に主体的に対応できる能力」とい う文言も見られます。 さらに「新しい学力観」に基づく教育の展開を目指して,96年に第15期 中教審が第1次答申「21世紀を展望した我が国の教育のあり方について」を 発表しました。ここからさらに「生きる力」がクローズアップされてくるので す。なぜ「生きる力」なのか?その背景として次のようなことが書かれていま す。 〈以下,本文引用〉 我々はこれからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、 自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよ く問題を解決する資質や能力であり、・・・中略・・・・ 我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を「生きる 力」と称することとし、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であ ると考えた。 〈引用終〉 さらに答申第1章 (2)「これからの社会の展望」では,今後子どもたちが直 面し,解決しなければならないであろう問題を5点あげてあります。 〈以下,本文要約〉 我が国の社会は、今後、様々な面で変化が急速に進むと考えられる。ここで は基本的な展望を述べておくこととする。 1 国際化の進展 冷戦の終焉や交通手段の発達、情報化の進展を背景に、経済、社会、さら には、文化の面で交流が一層進み、国際的な相互依存関係がますます深まっ ていく。一方、様々な面で国際的な摩擦や競争も生じてくると考えられる。 2 情報化の進展 世界的な規模の情報通信ネットワークを通じて、不特定多数のものが、双 方向に文字・音声・画像等の情報を融合して交換することが可能となりつつ ある。このような高度情報通信社会の実現は、地球規模で今後の社会や経済 の姿を大きく変えていくものと考えられる。 3 科学技術の発展 科学技術の発展は、人類にとって豊かな未来を築く原動力になると考えら れるが、とりわけ、人間の知的創造力が最大の資源である我が国にとって、 諸外国以上に科学技術の発展は重要である。しかしながら、一方、科学技術 が著しく高度化・細分化・専門化する中で、国民にとって科学技術は分かり にくいものとなり、不安感がさらに高まっていくことも懸念される。 4 人類の生存基盤を脅かす問題 地球環境問題、エネルギー問題なども生じてきている。これらは、大量生 産・大量消費・大量廃棄型の現代文明の在り方そのものが問われる問題であ るが、今後、地球規模でこれらの問題に取り組んでいく必要性はさらに高ま り、この面で、我が国の貢献がさらに強く求められるようになっていくこと が予測されるところである。 5 高齢化や少子化の急速な進展 かつて経験したことのないような少子・高齢化社会を迎えることが確実と 見られている。また、男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によ って社会のあらゆる分野に参画する機会が確保される「男女共同参画社会」 づくりも重要な課題となっている。 〈要約終〉 さらに次のように結んでいます。 〈引用始〉 これからの社会をどのように展望するかについては、様々な変化や要素を考 える必要があり、一概に言い表すことは難しいが、いずれにせよ、変化の激し い、先行き不透明な、厳しい時代と考えておかなければならないであろう。 〈引用終〉 みなさんの目の前にいる子どもたちは,このようなきびしい時代を生きてい かなければならないのです。そのためにどんな力をつけてやらねばならないの でしょうか?これが大きなキーポイントです。 よく「学校の勉強なんか,社会に出たら何の役にも立たない」と言われま す。これまでの教科学習が子どもたちと意味のある結びつきがなかったからで す。新指導要領の目指すところは,断片的になりやすい知識・技能を自分の必 要性,自分の生活に動機づけさせ,体系化させ,血肉化させることです。これ は「21世紀の変化の激しい社会」を生きる子どもたちに必要な力です。 私は義務教育の目指すべき方向はまさしくこれだと思います。新指導要領で は,教科学習もただ単に「知識・理解」だけでなく「関心・意欲・態度」そし て「思考」を重視しています。ただ単に知識人間では21世紀を生き抜けない のです。変化の激しい社会と関心や意欲をもって関わり,そして思考し,さら に実践できる人間を育てて行かねばならないのです。 そのために設けられたのが総合的な学習の時間であると解釈します。義務教 育における「社会力」(注:門脇厚司氏「学校の社会力」朝日選書)の養成だ と思っています。以上が私の「地球市民としての資質を育成する」ことの根拠 です。 総合的な学習の時間をより充実させることが「21世紀を生き抜く子どもた ち」を育てることに大きく作用すると考えています。 |
“子どもの社会力”を育成する総合的な学習 1 指導要領総則に見られる総合的な学習の時間の「ねらい」と「学習活動」 ■ ねらい(総則 3の3の4 P45)に関する記述 (1)自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育て ること。 (2)学び方やものの考え方を身につけ,問題の解決や探求活動に主体的,創造的に取り組む態度を育て,自 己の生き方を考えることができるようにすること。 ■ 学習活動(総則 3の3の5 P48)に関する記述 例えば ・国際理解,情報,環境,福祉,健康などの横断的・総合的な課題 ・児童の興味・関心に基づく課題 ・学校や地域の特色に応じた課題 2 これをどう解釈するか(本校の「総合的な学習の時間」の定義づけ) 総合的な学習の時間には2つのねらいがあります。1つは総則の(1)にある「問題追究能力を育成する」こと,2つ目は(2)にある「社会的認識を高める(新たなものの見方・考え方)」ことです。以上の2つのねらいを達成させるためには「学習」を展開させねばなりません。 今までは(1)の方に力を入れて実践してきましたが,今後の実践にあたって(2)の方も考えていく必要がありそうです。 (2)は「子どもたちの社会的認識を広め,そして高める(地球市民としての資質を身につける)」ということです。総則の中にも「学校で学ぶ知識と生活との結びつき,知の総合化の視点を重視し,各教科等で得た知識や技能等が生活において生かされ総合的に働くようにすることが大切p47」という記述が見られます。自分の追究を通して社会を見,そして自分なりの主体的な社会への認識を持つ,ということです。指導要領総則に例示されている内容の「国際理解」「情報」「環境」「福祉・健康」は,これからの社会を生きる子どもたちに考えさせたい社会問題なのです。これらの問題に主体的に対応できる力が「生きる力」であろうと考えます。対応できてこそ「自立」できるのです。かつての低学年社会科が「○○ごっこ」であったのが,生活科では「○○探検」となり,自由な探究・追究活動をさせ,自立への基礎をねらうこととなりました。総合的な学習の時間はこれを受けて,さらに「社会の中での自立」を目指すものであると解釈できます。そしてこれを小3から高3まで9年間かけて完成させるのです。 3 どう実践するか これを達成させるために留意すべきことが1つあります。それは「活動だけに目を奪われた学習になってはいけない」ということです。例えば,日本の食についての問題を扱った場合で言えば,子どもも教師も「米を育てて食べておわり」という実践すらあります。これは活動だけでおわり,教師が(1)や(2)を意識して実践しなかった結果です。特に,(2)を意識して指導すれば,「現在の我が国が抱える食生活の問題」,例えば狂牛病や日本ハムの問題などにまで子どもたちの意識は広がっていくはずです。こういう認識を高めることは,総合的な学習の時間でつけたい力として,見逃せない大切なことです。 知を総合化させて学習したにもかかわらず,子どもたちに意識変革が生じなければその実践は失敗だと思います。追究技能が身につくだけでは総合的な学習の場合,目標を達成したことにはならないのです。言い換えれば,その実践では「生きる力」が身につかなかったからです。21世紀を生きる子どもたちに,現代社会の抱えるさまざまな諸問題にどう対応していくのか,そんな認識を育てることは総合的な学習の時間に課せられた大きな使命だと思います。 総合的な学習の時間では,子どもたちが自ら疑問に思ったことを追究課題として取り組んでいくわけですから,異なる目標が複数存在します。しかし,この目標はばらばらであって,実は大枠では同じところに向かっているのです。その根拠は次の通りです。 指導要領に書かれている総合的な学習の2つの目標は,小3から高3までの9年間で完結させることを前提としていると理解しています。小学校の段階では何ができるかを考えた場合,目標(2)に関しては,社会の仕組みやその様子を知ることができればいいと思っています。社会認識の第1歩です。例えば5年生で「米づくり」を総合的な学習で扱った場合,日本の抱える食糧事情を理解し,自分なりの社会認識ができればいいのです。これが教師の指導目標(つけさせたい力)だと考えます。この頂上を目指して子どもたちはさまざまな道具を使い,それぞれの装備で,登山路を自分で開きながら登っていくのです。稲作問題を追い続ける子もいるだろうし,野菜や果樹栽培を通して追究する子もいるでしょう。なかには狂牛病への関心から畜産を追究する子も出てくるかもしれません。しかし,最終的に「現代の日本が抱える食糧問題」に迫ることができればいいのです。一見「異なる目標(異論)が共存する環境」のように見えますが,しかし,大枠は同じではないかということです。これを教師がどう指導していくかはひじょうに大きな問題点となりますが,大事なことは以下のことではないでしょうか。 まず,それぞれの子が話し合いや発表会でお互いに関わりを持ち,お互いに評価しあい,高め合うことが必要です。「学びの共有化」であり,自己評価や相互評価が重要であるゆえんでもあります。独立独行,我が道を行くではないと思うのです。共通の「大目標」がはっきりしていて,進む方向が明確であって初めて子どもたちは自分の追究問題を設定でき,解決への方向性を模索することができるのです。小学校の段階ではではそうであるべきだと思います。 4 教師の指導のあり方は また,指導法の問題になりますが,教師はとんでもない方向に進んでいこうとしている子に対して指導すべきです。どう考えても大目標である「日本の食糧問題を考える」というものの見方・考え方が育たないと判断される子への指導です。これが「教師はシナリオを持つべき」ということです。失敗することが目に見えている子に対しては教師が方向修正してやるべきだと考えます(少なくとも小学校レベルでは)。それが支援であると思います。 経験を積み,さまざまな自己判断能力(周囲を見ながら自分の追究を比較対照できる能力など)が身についている中高生なら話は別ですが。はい回るのも経験であり,そこに学習意義を見いだそうとする考えもあるようですが,最後まではい回って終わった子(もちろんまとめができない,報告もできない,という状況になると思います)は必ず総合嫌いになります。いえ,問題解決学習そのものが嫌いになります。さらに言えば勉強嫌いにまで発展するやもしれません。自己の追究課題が設定できない,どうやって追究していけばよいのか分からない,という子が大部分なのです。そういった意味からも,教師はシナリオを描き,時には演出家にもならねばならないというわけです。 例えば,4年生でのごみの学習を発展させ,総合的な学習の時間で扱う場合を考えます。ごみの問題は極めて意義ある教材だと思っています。多くの場合社会科では「ごみの種類と量」「ごみの分別と収集」「クリーンセンター(焼却場)の仕組み」「ごみのリサイクルと環境保全」といった ことを学習します。これらを地域をフィールドとして,見学や観察といった体験を通して学習していきます。しかし,私も過去に感じたことがありますが,実際の授業では,それぞれの子が獲得し知識は断片的で,単に事実(実態)を知っただけで終わってしまうことが多いのではないでしょうか。主たる原因は「時間数」です。いつまでもごみの問題を続けているわけには行かない事情があります。そこで総合的な学習の時間でという発想です。社会科での学習だけでは本当に「ごみの問題」を理解したことにはならないのです。そこには「新たな社会認識(地球市民としての資質)」,言い換えれば「生きる力」がついていないからです。例えば「おじいちゃんが子どもの頃の昔のくらしとごみの問題は?」「アメリカではどうか?アフリカではどうか?」などという視点が必要だと思うのです。もっと言えば,ビニールやプラスチックを燃えるごみで出す自治体もあるそうです。分別の仕方も自治体によって異なるようです。 教師は,学習前にこのような展開を描くのです(単元をデザインする)。そして,追究対象レベルで言う「異なる目標(異論)が共存する環境」を意図的につくります。子どもたちがさまざまなものさしで追究し,そして共有化し,自他を比較してこそ判断や比較の基準となる「自分のものさし」が明確になるのです。いろいろな視点からそれぞれの子どもたちが追究して,それを学習者全員が共有することではじめて真の意味で「ごみの問題」を理解したことになるのではないでしょうか。最終的にはごみ問題を通して「新たな社会認識(地球市民としての資質)」を育てるのです。こういった,このような学習を展開させ,子どもたちに新たな「ものの見方,考え方,生き方」を身につけさせたいという展望を持つことが,シナリオを持つということです。 |
私の思い その1 何よりも“基礎・基本”が大事!!!
私の思い その2 スタートは “子どもの知的好奇心” !!!
私の思い その3 間口が広く,奥行きのある題材を!!!
私の思い その4 地域に根ざした生活密着型の単元を設定!!!
私の思い その5 ミクロの追究からマクロへの追究へ!!!
私の思い その6 情報掲示板をフルに活用する!!!
私の思い その7 表現物を数多く作成する!!!
私の思い その8 関係外部機関との連携を!!!
私の思い その9 多面的な評価を!!!
私の思い その10 追究問題の設定は“はじめに体験ありき”で!!!
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“総合的な学習の時間”の構想を立てる |
【手順1】総合的な学習の時間の教育課程編成 1 学校の教育目標や学年の重点目標に連動させて,総合的な学習の時間の全体像を明確にする。 ― 研究の全体像 ― ○ 研究主題(例) 「主体的・創造的に学ぶことのできる子をめざして」 ○ 研究の目標 ・ 問題解決的な学習や体験的な学習を通して,調べ方やまとめ方,表現の仕方などの学び方を身につけることができる。 ・ 自己の生活を見つめ直し,自己の生き方を考えることができる。 ○ めざす子ども像 @ 自ら問題を見つけ,個性を生かして追究していくことのできる子。 A 獲得した知識や技能などを自分の生活に反映させていくことができる子。 B Aをもとに自分の生活を見直すことで,自分たちを支えてくれる人々に感謝する心を持つことができる子。 ○ 育てたい力 「追究する力」 問題を発見する力/計画を立てる力資料を集める力/資料を活用する力 事物を観察する力/集めた事実を分析する力/自分なりに判断する力 など 「自分の思いを表現する力」 作品(レポート,新聞,パンフレットなど)にまとめる力/発表する力 その他の表現する力(劇,音楽,ダンスなど) 「学習をふり返り,高めていく力」 自分の学習を評価する力/お互いの学習を評価し合う力/自分の生活を見直す力 ○ 研究の方法 子どもたちをとりまく地域を対象とした体験学習を設定する。その実践を通して,地域を理解し,地域と共に生きることの大切さを知 り,新しい自分を創造し,生きる力を身につけることができると考える。 ・ 子どもたちの生活に密着した地域単元を設定する。 ・ 教科の学習内容から発展させた問題を総合的な学習の題材として設定する。 ・ 多様な学習形態をとる。(例:見学・訪問学習,ゲストティーチャーの招へい,個と小集団などの自在な学習集団,時間の弾力的運 用,その他) ・ 資料を蓄積して学習をふり返り,また情報としてお互いに公開する。(ポートフォリオ評価の試行) 2 授業時数を配当する。 3,4年・・・・105時間 5,6年・・・・110時間 週時程の中に位置づけるが,まとめ取りなど弾力的な運用に努める。 3 学習内容を厳選する。 指導要領に例示されている3つの領域(「国際理解・情報など」「児童の興味・関心」「地域や学校の特色」)をはじめ,様々な内容が 考えられる。しかし,何でもよいという計画性のなさは研究の行き詰まりを招く。重点化を図る。 ― 本校の学習内容 ― ○ 全校のテーマ:(例)「地域に学び,地域に生きる」 児童向けには別に考える。(例:見つめよう ぼくらの町八ツ田) ○ 各学年のテーマ(例) (1年:生活科の単元に組み込んで 「見つけよう ふれあおう」) (2年: 同 上 「見つけよう やってみよう」 ) 3年:「もっと知ろう ○○小学区」 4年:「○○市大好き すてき発見物語」 5年:「ふれあおう ○○市の人と自然」 6年:「広げよう 深めよう 私たちの○○市」 このような縦の系列を設定しておくと,研究の系統性ができ,教師も子どもも6年間の見通しを持つことができる。 【手順2】各学年の年間指導計画の作成 1 各学年の研究目標を明確にする。 子どもたちの発達段階や学習経験を考慮し,また,研究の全体計画に基づき,各学年の学習目標を立てる。 ○ 学年研究目標を明確にする。 ・ 全体計画に基づき,かつ縦の系列に留意し,学校全体の系統化を図る。 ・ 前の学年でどんな力がついたのかなど,学習のレディネスを知る。 2 単元を構想する。 ○ 単元を構想する。 ・ 子どもの思いや願いなどの実現に向けて,どのような学習を展開するか,これまでの学習経験を分析して構想する。 ・ 学習の対象として,最適なものは何かを判断する。 【例】4年「知立大好き すてき発見物語」 ・ 3年で学んだことを生かし,さらに知立の素晴らしさを認識し,これからの知立を考えると同時に発信していく。 ・ 学習の対象として「知立の名所」「知立の名物」「知立の名人」等に着目する。 3 年間学習計画を立てる。 ○ 評価のことも頭に置いて。 【手順3】指導計画による実践と評価の改善 1 評価や支援の基本方針を明確にする。 ○ 子どもの立場からの7つの視点 @ 楽しく意欲的に学習しているか。 A 自分から課題を持って学習に取り組んでいるか。 B 問題追究や目標実現の見通しを持って学習しているか。 C 学習中に自己評価を行い,学習を工夫したり改善しているか。 D 子どもたち相互に評価や助言を行い,お互いに高め合っているか。 E 自分の発揮した力,身についた力を意識し,今後に生かそうとしているか。 F 学習で得た知識・技能・理解を自分なりにまとめ,他へ表現しているか。 ○ 教師の立場からの3つの視点 @ 指導計画に基づき子どもの学期しているよさ,身についた能力やものの見方・考え方などを看取り,評価しているか。 A 指導の結果を評価し,指導内容・方法の改善を行い,次の指導に生かしているか。 B 評価の結果の蓄積から,年間学習計画や教育課程の改善を図っているか。 2 新指導要録での「総合的な学習の時間」の評価 14年度からの新学習指導要領の全面実施をうけて,指導要録の改訂がおこなわれる。この新指導要録では「総合的な学習の時間」 の評価を次の三点について記述していくことになっている。 ・ 第1に,どのような学習活動をしたか記述する。 ・ 第2に,各学校で指導の目標や内容に基づいて設定した評価の「観点」を記述する。 教育課程審議会中間のまとめでは,次のような評価の観点の事例があげられている。 @ 総合的な学習の時間のねらいを踏まえた例 「課題設定の能力」「問題解決の能力」「学び方,ものの考え方」「学習への主体的,創造的な態度」「自己の生き方」 A 教科との関連を明確にした例 「学習活動への関心・意欲・態度」「総合的な思考・判断」「学習活動にかかわる技能・表現」「知識を応用し総合する能力」 B 各学校の定める目標、内容に基づいた例 「コミュニケーション能力」「情報活用能力」など。 ・ 第3に,評価の観点にそって子どもがどのように成長したか,「評価」を文章で記述する。 14年度からのこのような「総合的な学習の時間」の評価を生きたものにしていくためにも,今年度から,その評価の観点や規準を どうするか,学校として研究し,設定していく取り組みが必要となる。 3 評価の観点の設定・・・・・・指導要録の評価の観点の設定 “評価と指導は一体のもの” “子どもたちにつけたい力=評価の観点”を基本的な考え方とする。 4 「総合的な学習の時間」でポートフォリオ評価法を生かす。 「総合的な学習の時間」では,子ども自身が学習についてふりかえる自己評価が重視される。この子どもによる自己評価に最も有 効な方法がポートフォリオ評価法であろう。 子どもたちはそれぞれ活動の過程の中で,メモ書きや下書き,絵や文による記録,インタビューの記録,成果のまとめなど,たくさ んの「作品」を生み出す。これらの「作品」をポートフォリオとして蓄積していくことで,教師は子どもとの対話を通して励ましたり,助 言を与えたり,探究の方向を助言したりすることができる。 また,子どもたちはいつも自分のポートフォリオを見ることによって,自身の変化や成長を確認することもできる。さらに,友だち同士 公開することで情報の共有化がいっそう高まるというメリットもある。 ○ どのような方法をとるか検討する。 ・ ファイル方式(個人的なものになりがち) ・ 掲示板方式(だれもがいつでも見られる) ・ その他の方式 |