第47回 指導と評価大学講座
■研修期間  平成17年7月28日〜7月30日 午前9時30分〜午後4時30分
■会 場  日本教育会館(東京:神田)
■主 催  (社)日本図書文化協会/(財)応用教育研究所/日本教育評価研究会

1日目
 学力向上の今日的課題                                       (財)応用教育研究所所長 辰野 千壽
 指導と評価の基礎基本と一体化                                         文教大学学長 石田 恒好
 心を育てる道徳教育                                                  明治大学助教授 諸富祥彦
 学習評価の改善と学力調査                                        京都女子大学教授 北尾 倫彦
2日目
 知能と知能検査                                                 筑波大学助教授 海保 博之
 総合的な学習の時間と教科指導                                 教材・授業開発研究所代表 有田和正
 特別支援教育の今後のあり方                    文部科学省初等中等教育局特別支援教育調査官 柘植雅義
 学校経営と学校評価                                          園田学園女子大学教授 野口克海
3日目
 行動の評価                                                    筑波大学助教授 桜井 茂夫
 キャリア教育の考え方                                              筑波大学教授 渡辺三枝子
 教師の魅力                                                   東京成徳大学教授 国分康孝


第1日目

学力向上の 今日的課題
                                              (財)応用教育研究所所長 辰野 千壽

1 学力向上のための方策‥‥教師の指導力と子どもの学習力のマッチ
(1)基礎学力の重視 ―教育課程の見直し(指導要領の一部見直し)―
 ・経験主義,体験主義の見直し‥‥系統主義とのバランスが必要
 ・総合的な学習の時間の充実‥‥計画的指導,教科学習との関連づけを。
(2)個に応じた指導の重視 ―教師の指導力(授業力)の重視―
 ・習熟度別指導,補充的な指導,発展的な指導の適切な活用
 ・教師の役割の見直し(指導と支援のバランス)→教師の指導力が問われる。
(3)学習意欲・学び方の重視 ―子どもの学習力の重視―
 ・「自ら学び,自ら考え・・・」のおなじみの文言をどうとらえるか。
(4)学力調査・統一テストの重視 ―教育的責任の重視―
 ・自分の学校は学力がついているのか?‥‥結果責任を果たす。
(5)教師の地位向上 
 ・専門職としてふさわしい待遇を。
 ・社会人登用の問題→できることとできないこと
2 今日の教育の問題点…行動理論を軽視し,認知理論に走りすぎ
(1)個性の誤解
 ・個性には望ましい個性と望ましくない個性がある。
 ・個性は「社会の中で形成される」ことを忘れて,子どもの現在の個性をすべてよいとし,わがままや利己主義を認め,独善的なことや非社会的なことさえ個性のあらわれとして容認する傾向
(2)適応理論の誤解
 ・欲求の充足は善であり,欲求の阻止は悪であると考え,欲求不満を生じさせない過保護なし
  つけや甘い教育
 ・困難への耐性が不足 
 ・楽しい授業のはき違え→子どもに迎合した授業
(3)自発性・自主性の誤解
 ・子どもの自主性・自発性・自由をはき違え,過度に重視する→教師の指導性の低下  
 ・教師の指導を軽視し,学習者中心主義の指導へと傾斜する。
(4)「子どもに学校を合わせる教育」から「学校を子どもに合わせる教育」への行き過ぎ
(5)教育改革の動向
 ・英・米・仏などでは学力低下が問題となり,個性尊重から画一化の教育への回帰が見られる。
 ・ゼロトレランス方式の確立(米国)→97年クリントン大統領:秩序の乱れから「寛容性を認め
  ない」教育へ。日本で言う「教育的配慮」無用論。校則破りは即,罰則
3 教師の指導力
(1)指導法の工夫
 ・学習内容に合わせた指導法を
  【要素的内容】問題把握→理解→練習→評価⇒学力の要素(パーツ)用語,漢字,単語など
  【概念的内容】問題の意識化→問題の明確化→仮説の発見→仮説の意味理解→仮説の検討(問題解決学習)⇒読解,因果関係,法則など
  【実践的内容】目標の設定→計画立案→遂行→評価⇒生活上の諸問題
(2)学習者の特性と指導法のあり方→個に応じた指導
 ・問題解決学習‥‥上位数名の子 多くの児童はついて行けない 
 ・系統的学習‥‥基礎基本の習得(義務教育学校の責務)
4 子供の学習力
(1)自ら学ぶ力の育成
 ・自己制御学習
  学習過程を自分で統制・制御する。学習目標の達成を目指し,目標設定,方略設計,自己監視,自己評価,自己調整などのメタ認知的活動を行う。
・自己制御学習のステップ(チマーマンら 1996)
 ステップ1:自己評価と自己監視→学習者が自己のレディネスを理解し,何ができるか判断する。
ステップ2:目標設定と方略設定→具体的学習目標を設定し,それを達成するための方略を計画する。
ステップ3:方略実行と監視→計画した方略を実行し,それを自己監視する。
ステップ4:実行結果の監視→結果が学習結果にどのように影響したか調べる(自己評価)
 ・効果的な学び方
  PQ4R法(トーマスとロビンソン1972)/下見をする→設問する→読む→熟考する→復唱する→復習する
5 「学び方」の学習‥‥どのように身につけさせるか
(1)学び方の学習の意義  確かな学力の向上を目指す。現在及び将来にわたっての学習習慣
(2)学び方の指導 低学年のうちから身につけさせる。
 ・条件付け‥‥学習の習慣化,同じ時間に同じ場所で毎日学習する。
 ・模倣(モデリング)‥‥よい手本を示す。
 ・知的理解‥‥学び方の意義・役割について理解させる。
 ・意図的努力‥‥行動的契約法/不適切な行動をした場合の約束を決めておく。ゼロトレランス
6 学力調査のあり方
(1)意義と役割
 ・目的‥‥教育の改革,改善を図る。
 ・役割‥‥個人や学校全体の成績を向上させる/矯正指導が必要な児童を明らかにさせる/資金(予算)の配分決定のため
 ・影響‥‥(効果)援助を必要とする児童を助ける/指導法の改善に資する/学力向上
      (問題)結果の最低水準に焦点を合わせる/テスト教科のみ重視/測定しやすい観点を重視/テストが目標になる/得点をあげる方策をとる/競争意識を招く
(2)学力調査の問題点
 ・結果をどう生かすか‥‥教育課程全体に生かす。
 ・妥当性,信頼性の検証‥‥標準化されたテストを

指導と評価の基礎基本と一体化
                                                     文教大学学長 石田 恒好

1 教育評価・教育測定・評定
(1)教育評価(測定)
 ・教育によって生じた児童生徒の人格や行動などの変化を,一定の価値基準(目標基準と集団基準,  個人基準)に照らして判定することを中心に,その変化の背景となっている諸条件(教師の指導  力,本人の努力,物的・人的学習環境)の価値をも判定し,改善しようとする営み
                                   (橋本重治による)
 ・4観点 
  関心・意欲・態度‥‥学ぼうとする力    思考・判断‥‥学ぶ力
  技能・表現と知識・理解‥‥学んだ力
 ・個人内評価‥‥前と比べてどうか(進歩の状況:縦断的個人内評価)
         よいところはどこか(長所を見つける:横断的個人内評価)
(2)教育測定
 ・評価資料を収集し,事象(習得状態,実現状況)を明らかにし,数量的に表す操作
 ・テストは測定であって評価ではない。評価のための1つのデータに過ぎない。
 ・様々な測定技術を身につけ,評価に生かす……評価情報の収集につとめる。
(3)評 定
 ・事象を明らかにし,あらかじめ設定した基準に従って点数や記号等を付与する操作
(4)教育評価上の留意点
 ・基礎・基本の定着が目的…指導要領の最低基準性に基づく。指導と評価の一体化を目指す。
 ・教師の指導力
  今まで(相対評価)はあまり問われなかったが,現在(絶対評価)では教師の指導力が問われる。なぜ実現できなかったかを十分反省し,未到達の子(保護者)への責任ある教育的対応を。
 ・終末評価と過程評価の両方を大事にする。
  終末のみに重点を置くのではなく,短いスパンでの確認,調整を。学習の過程での評価(確認と調整),そして終末での評価(反省と次への改善)
 ・導入時評価の重要性
  新しい単元に入るとき,それを受け入れられるレディネスがあるかどうかを評価する。ないと判断すれば復習をしてから新単元に入る。ガイダンス
2 教育評価の目的
(1)指導目的(教師にとって)…指導の反省と改善→指導のし直し→目標の達成
(2)学習目的(児童生徒にとって)…学習の反省と改善→学習のし直し→目標の達成
(3)管理目的(管理職にとって)…人的,物的学習環境の整備
(4)研究目的→指導法の評価,カリキュラムの評価など
3 教育評価の手順
(1)評価目標の設定
 ・指導目標の具体化,明確化…本時レベル,単元レベル(これがどこまでできるかが絶対評価の成               否を握る)
 ・評価目標は指導目標から抽出…観点別に,具体的に(目に見える:行動目標)
(2)評価資料の収集
 ・毎時レベル,単元レベルで特に目立った子を記録にとどめる。
 ・今までの資料のとり方も絶対評価で行っていた。(例:○○ができたかできなかったか)
(3)評価資料の解釈
 ・評価規準…質的な拠り所(目標レベル:つけたい力)
 ・評価基準…判定の拠り所(目標基準・集団基準・個人基準)〈量的に判定〉
  「これなら私でも測れる」という具体性→教科書の中身まで入り込んで作成
 ・実は,今までも絶対評価で解釈していた。(例:面積の求め方が理解できたかどうか,実験結果をきちんとまとめられたかどうか,など)絶対評価はそれを日常化させ,積み上げるだけのこと。
4 指導と評価の一体化
(1)反省と改善
 ・指導結果の値踏み…「うまくいったか,いかなかったか」(指導の確認と調整)
 ・「指導法の改善」が評価の目的ではない…「目標の達成」が目的
 ・目標達成のための「Plan計画」→「Do実践」→「See評価」
 ・終わっても力がついていなかった…それは「学習」ではなかった。(教育か遊びか)
(2)基礎・基本の徹底
 ・教師:指導のし直しができているかどうか…お母さんの100点
 ・児童生徒:学習のし直し…単元レベルで実施(素早い手当)
 ○関心・意欲・態度のとらえ方…自分で,進んで,集中して,持続して,実践する。

心を育てる道徳教育
                                                      明治大学助教授 諸富 祥彦

1 道徳で育てる「生きる力」 
(1)価値の相対化
 ・(S40代)みんなで同じ価値を共有化できた時代
 ・(現 代)自分固有の価値‥‥「自分づくり」の道徳教育/自己の明確化→価値の明確化
(2)留意点
 ・自分づくりの力‥‥キャリアエデュケーション
 ・道徳的問題解決能力‥‥価値はわかっているが,実行できない。
 ・道徳的実践力‥‥心情と行為の不一致→モラルスキルトレーニング(シミュレーションする)
 ・体験を生かした道徳教育‥‥体験の前に道徳(意識を高めてから体験活動)
 ・道徳的内省の日常化,習慣化‥‥心のノートの有効性(道徳の時間以外にも書く機会を与える)2 育てたい力         
(1)自己決定能力,自己選択能力……「自分づくり」の力
 ・どんな自分になりたいか,どんな人生をおくりたいか
 ・広い意味での「進路教育」「キャリア教育」
 ・学力以前の問題…新入社員の3分の1が3年以内で退社
(2)問題解決能力
 ・「進学→就職→結婚→出産→」という幸福の一般的なルートが崩れ去った現在
 ・文科省→「生きる力」は自分でつけなさい,と言っている。
 どんな人生を送りたいのか,時代から取り残されないように
  →自分の生き方を自分で考える力を育てる。
 ・そのために必要な力→問題解決能力
(3)自己表現能力
 ・解決したことをプレゼンテーションする能力
    →自己をアピールできる人間
 いくらまじめでも物言わぬ人間→評価されない時代(リストラの対象)
 ・3分で自己表現できる能力が必要 
3 時代の変化と道徳教育
時代区分 時  代  性 教   育 流   行
 〜昭53 ・まじめ,ガンバリズム
・高度経済成長期
・豊かさのために手を取り
 あって進む
・教育そのものがやりやす
 かった
・社会規範を身につける
・徳目主義でよかった
・山口百恵
・巨人の星(思いこんだら試練の道を)
・あしたのジョー
・ど根性
昭53〜
  平3
・自分主義の時代
・豊かな社会の実現
・自己主張の時代
・自分を大切に
・自己実現の時代
・おもしろい子が人気者
・時代に合わなくなった道徳
 をやっていた
・富士見中の葬式ごっこ
・松田聖子
・いいたいことを言う
・ギャグマンガ
・AKIRA
・トレンディドラマ
平3〜 ・政治不信,不景気,リストラ
・脱力主義の時代
・こつこつタイプが評価されない時代
・多様化する道徳
・まじめな子が浮いてしまう
・一生懸命はよくないこと
・ルーズソックス,だぼだぼズボン
・間の抜けた言葉づかい
・パフィー,宇多田ひかる
・ドラッグ,セックス
 ・日本の文化の変化と大衆心理の変化
 ・現在の学校では,それぞれの時代に育った子が保護者になっている。
    …山口百恵型,松田聖子型,宇多田ひかる型の母親
 ・時代の変化…それに対応する「生きる力」が求められる。
 ・近未来に対する理想や希望がない
    …ほんとうにしたいこと,なすべきことは何か?
 ・生きる理由が見いだせない
    …つらくても○○があるからがんばれる,○○のためにがんばっているんだ。
 ・感動の道徳を学期1回は実践してほしい…教師の感動体験をぶつける。
 ・保護者会でエンカウンター‥‥仲間意識,仲間づくりを。
4「心を育てる」道徳教育の4つの視点
 新しい道徳…自己の心を見つめる
(1)自分自身との関わり
 ・教育の最大の目標…自己肯定感,自己有用感を育てること
 ・自分なんて価値がない人間→クラスの中での存在感を
 ・学級づくりが鍵となる。
(2)他者との関わり
 ・自己肯定,他者肯定,アサーティブな人間関係
 ・アサーショントレーニング(自己主張トレーニング)→言うべきことが言える。
 ・きれる子‥‥集団の中で耐えて耐えて耐えている。そしてきれる。
  言うべきことが言えない子,友達の主張を聞けない子
 ・学級全体が1つの具体的なことに向かっている…荒れた学校の回復
 ・助けが求められないでいる子の存在に気づいているか。
(3)集団・社会との関わり
 ・自己貢献感‥‥人間は他から認められ,役立つと感じたとき生きる喜びを感じる。役割を与える。
(4)人間を超えたものとの関わり 
 ・自分を見守ってくれているもの…例:星,涙を拭いてくれる枕
 ・畏敬の念…どこかで誰かがあなたを見つめている。
【参考となる著書】「エンカウンターで学級づくりスタートダッシュ」「心を育てる道徳授業ベスト17」以上,図書文化社:刊 「子どもより親が怖い」青春新書

学習評価の改善と学力調査
                                                   京都女子大学教授 北尾 倫彦

1 学力崩壊を防ぐ指導と評価
(1)「固める学力」と「深める学力」の峻別
  「固める学力」→ストレートカリキュラム 「深める学力」→スパイラルカリキュラム
(2)「固める学力」の指導と評価
 ・反復練習‥‥分散させることの効果(長期継続)/学力のパーツ(計算・漢字・英単語など)
 ・フィードバックさせることの効果
 ・目標準拠評価とテスト‥‥達成状況を単元ごとにチェック(固める)  
(3)「深める学力」の指導と評価
 ・学力の拡がりと深さが問題‥‥文脈(脈絡),情意(感情),追究(問題解決),表現(アウトプット)
現実社会の脈絡がとらえられない,知識と知識がネットワークしない,状況や場面を考えて考えることが苦手
 ・テストの改善‥‥指導内容との一致性/脱単純再生的問題/思考型問題/4観点のバランス
 ・パフォーマンス評価‥‥採点基準(ルーブリック)の作成
2 説明責任と総括的評価
 ・こういう成績をつけたという責任(結果責任)とそれを説明する責任(説明責任) 
3 習熟度別指導と診断的評価
(1)未達成の評価と習熟度別指導
 ・どういうグループ分けか?‥‥自己申告と教師の指導/途中での変更/自己制御・メタ認知能力
  を/教材と指導法の工夫/どのグループも評価でいうゴールは同じ,低位の子には個人内評価を
(2)原因診断と支援
4 学力調査の活用
(1)全国的な学力調査の意義‥‥S30代以降40年間実施されず
(2)通過率のみにこだわるのではなく,観点別得点分布を分析‥‥学力の傾向をつかむ。
(3)経年変化を見る。
(4)他の資料との比較を‥‥意識調査や標準化学力テスト
5 学習評価改善の必要性〈なぜ評価改革が必要なのか〉
(1)学力の質の変化に対応する
 ・「量」ではない。株価のように「上がった,下がった」と語るべきでない。
 ・「学力の低下」ではなく「学力の悪化」と考えたい。
 ・興味や関心を欠く子が多い。
 ・思考力や判断力が育っていない。
 ・学力の崩壊が進んでいる…今まで「浅薄な学力」を育ててきた。受験学力のバブルがはじけた。               「1年たったらすべて忘れてしまう」
(2)指導形態の多様化に対応する
 ・知識伝達型の授業だけに頼らず,体験的に学ぶ授業が増えてきた。
 ・一斉画一型の授業形態だけでなく,選択型や少人数指導授業が増えてきた。
 ・新しい授業に対応する評価法を。
(3)学校の説明責任の明確化に対応する
 ・評価活動の公開
 ・学校に問われる責任の中心は子どもの学力保障(説明責任と「成果責任:教育当事者の責任」)
 ・学校評価と学習評価は密接に関連しており,評価の透明性を求める声が強くなる。
 ・どこから批判されてもびくともしない評価活動の構築
 ○教育目標(評価目標)を吟味することが必要。
6 目標準拠評価の規準と基準
(1)評価規準(どういう力をつけたいのか〈能力〉)の具体化と一般性
 ・具体的に(簡潔に,項目を絞って)
 ・重点化(代表性:これとこれとこれが身につけばそれで十分)する→これが教材研究の中心(公
     開授業の指導案には目標が多すぎ,どれも抽象的である)
 ・代表性(重点主義)…この単元の学習が成立したと見なす場合,どうしても欠かすことのできな
               い力は何か。
 ・教師にしかわからないものではなく,子どもも保護者もわかる。(具体的な表現)
 ・子どもや保護者にも公開
(2)評価基準の決め方
 ・個々の評価目標の評価基準は,学習の質の良さから質的に決める。(上質であるかどうか)
 ・質的評価
  「B:登場人物の心情を一通り理解している」「A:登場人物の人柄までも理解している」
    *人柄までも理解できるほど深い読解ができたという事実を表現している。
 ・質的な基準がしっかりできているかどうか。
  簡単な事例を付け加えておくと誰でも評価できる。教科書の中身まで入り込んだ表現を。
 ・ルーブリック評価(質差の状態を想定)が最適,パフォーマンスを評価する。
  作品・論文・行動・発表・実験や観察のクオリティの良し悪し
    *陸上・水泳と体操・フィギアスケートの評価の違い
     …陸上や水泳は誰もが納得する基準がある。
     …体操やスケートの審査員は細かく決められたルーブリックにより採点している。
 ・量的評価…総括における評価基準は達成率によって量的に決める。(どれだけ習得できたか)

第2日目

知能と知能検査
                                                    筑波大学助教授 海保 博之

1 “頭のよさ”いろいろ
 ・社交性,積極性‥‥リーダーシップがある,話がおもしろい
 ・自己認識力,自己コントロール力‥‥分を知っている,誤りを素直に認める
 ・優等生型‥‥時間の使い方がうまい,事務能力がある
 ・ひらめき型‥‥鋭い,判断が速い,決断力がある
 ・物知り型‥‥よく本を読む,知識豊富,話題豊富
   「頭のよさ」アンケートで,最も多く選ばれたのは「頭の回転が速い」「要点の把握が正確」
   知識の二態→「結晶性知識」と「流動性知識」
   上位に選ばれたのはいずれも「流動性知識」→言い換えれば「問題解決能力」
      「結晶性知識」‥‥知識が豊富,語彙が豊富,常識がある
   頭がいいとは,知識が豊富なことではない。
2 知能の一般因子をめぐって  省略
3 知能検査のねらい
 ・知能検査のねらいは3つ
   弁別する/ランク付けする/知的プロセスの特性を発掘する
   「知的プロセスの特性を発掘する」とは?→頭の中で何が行われているかを判断する。
  これ検査により認知プロセスにまで立ち入った診断ができるようになった。(K―ABC法)
4 知能検査の使い方
 ・就学指導の補助資料
 ・学習適性診断
 ・学習様態診断
 この講義は専門用語が多用され,難しすぎてよくわからなかった。

総合的な学習の時間と教科指導
                                             教材・授業開発研究所代表 有田 和正

1 総合的な学習がゆれている
 ・学習指導要領の目玉として設けられた総合的な学習が,文科省大臣の発言などからゆれている。  しかし,なくなることはぜったいにない。なぜなら「生きる力」を育てるにはなくてはならないからである。 
 ・総合的な学習こそ「基礎的・基本的な力」をつけている。
  「学ぶ楽しさ」「学習意欲」「ものの見方・考え方」「表現力」といった力は総合的な学習で育つ。
身近な教材から広い世界が見えるようになる/調べ方を多様に工夫できる/能力に応じてどこまでも追究できる
 ・このような学習を展開できるのが総合的な学習の特性
 ・いい加減な指導をしているならば,基礎学力はつかないばかりか,学習そのものが嫌になる。
2 総合的な学習の充実を
 ○学習指導要領のねらい
  「自ら課題を見つけ・・・・・・,よりよく問題を解決する」
  「学び方やものの見方を身につけ・・・・・・」
 ・あらたに「各教科等で身につけた知識や技能等を相互に関連づけ,それらを学習や生活において
  生かし,総合的に働くことができるようにすること」
  →教科学習との関連をうまく図ること→教師の力量にかかっている(教師の教材開発力)
3 総合的な学習を充実させるには
(1)「総合的な学習の時間」という中途半端な名称を変えること。
(2)3年生から「どんな内容」を「どのように追究するか」その柱となるものを提示すべき。
  つまり「内容」と「方法」を文科省がきちんと示す必要がある。
(3)教科の学習を充実させること
  よい?を発見させ,総合的な学習へと発展させる。また,「調べ方」を教科学習を通してきちんと体得させる。
(4)よい授業はよい教材から
 ・総合的な学習は教材開発で決まる。
 ・「教師は教え方のプロであるが,教える内容のプロではなくなってしまっている」(「学力が危ない」岩波新書)
 ・教材を見つめる目を磨く
 ・子どもの知的好奇心を揺さぶる。常識を覆させる。
 ・狭い入り口から広い世界へと発展していく教材。
4 教科の授業の充実を
(1)授業とは「何を」「どうすることか」
 ・「これだけは何としても教えたい」ことを「学びたい,追究したい,調べたい」と子どもが思うように転化させること。
 ・転化させるための指導技術 発問/板書/資料活用/話し合い/話術・パフォーマンス/人間性
(2)資料について‥‥自作が原則(教えたいことがすべて盛り込まれているか)
(3)話し合いについて‥‥よい話題(論点にずれがあるのがよい話題→そのずれを埋めていく)
(4)パフォーマンスについて‥‥子どもとの対応の技術
(5)人間性について‥‥人間力とも言える(子どもを感化する力)
5 まとめ
 ・子どもの「意欲」を引き出すことの大切さ→よい教材,よい体験(本物の体験)
 ・学力とは  学習×環境×意欲=学力 教師に変えられるのは「意欲」だけ。「意欲」を2倍にすれば学力も2倍に。

特別支援教育の今後のあり方
                               文部科学省初等中等教育局特別支援教育調査官 柘植 雅義

1 特殊教育から特別支援教育への転換を図る 
 ・「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」平成15年3月‥‥必読
 ・学校全体,全教職員で取り組む。
(1)基本的な考え方
 ・生涯のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う。
 ・LD・ADHD ・高機能自閉症等への対応は緊急かつ重要な課題
(2)特別支援教育とは
 ・従来の特殊教育の対象の障害だけでなく,LD・ADHD・高機能自閉症を含めて障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて,その一人一人の教育的ニーズを把握して,その持てる力を高め,生活や学習上の困難を改善または克服するために,適切な教育や指導を通じて必要な支援を行う。
(3)基本的な仕組み
 ・個別の教育支援計画‥‥多様なニーズに適切に対応する仕組み
 ・特別支援コーディネーター‥‥教育支援を行う人,機関を連絡調整するキーパーソン
 ・広域特別支援連係協議会‥‥質の高い教育支援を支えるネットワーク
(4)学校としての全体的・総合的な対応へ
 ・LD・ADHD等を含め,障害のある子どもについて教育的支援の目標や内容からなる「個別の教育支援計画」を策定
 ・すべての学校に特別支援コーディネーターを置く。
 ・通常学級に在籍したまま特殊学級や通級による指導を必要な時間のみ「特別支援教室(仮称)」  で受けられる制度に一本化
2 LD・ADHD
(1)定義と判断基準
 ・LD(学習障害)‥‥基本的に全般的な知的発達に遅れはない。聞く,話す,書く,計算する,または推論する能力のうち,特定のものに問題あり。その原因として,中枢神経に何らかの機能障害。聴覚障害,視覚障害,知的障害,情緒障害や環境的な要因が直接的な原因とはならない。
 ・ADHD(注意欠陥/多動性障害)‥‥年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力,/または衝動性,多動性が特徴。社会的な活動や学業の機能に支障を来す。また,7歳以前に現れ,その状態が継続する。中枢神経に何らかの要因による機能不全があると推定される。
 ・高機能自閉症‥‥‥‥自閉症(3歳ぐらいまでに現れ,他人との社会的関係の形成の困難さ,言語の発達の遅れ,趣味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害)のうち,知的発達の遅れを伴わないものを言う。中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
 (近年,アスペルガー症候群や広汎性発達障害ということばをよく聞くが,これらについて最終報告では「アスペルガー症候群とは,知的発達の遅れを伴わず,かつ,自閉症の特徴のうち,言葉の遅れを伴わないもの」「なお,高機能自閉症やアスペルガー症候群は,広汎性発達障害に分類されるもの」と示されている。)
(2)全国実態調査の結果(担任教師への質問紙調査)
 ・「学習面や行動面で著しい困難を示す」と担任が回答→6.3%
  (内訳)A:「話す」「聞く」「読む」「書く」「計算する」→4.5%
B:「不注意」「多動性」「衝動性」→2.9%
C:「対人関係やこだわり」→0.8%
AかつB→1.1%   ABCとも→0.2%
3 支援体制の構築(モデル事業の全国展開)
(1)モデル事業の概要
 ・各学校に校内委員会を設置し,教育委員会には専門家チームを設置し,各学校への専門家による  巡回相談を整備するという内容であり,さらに各学校には特別支援コーディネーターを指名し,個々の児童生徒について個別の支援計画を作成する。 
(2)実績
 ・15年度実績‥‥4000校(11%),16年度実績‥‥7000校(20%)
 ・19年度までにすべての小中学校
(3)関係する他の事業
 ・厚生労働省‥‥発達障害者支援体制整備事業(17年度〜)
4 ガイドラインの公表
(1)ガイドライン策定の経緯
 ・「小・中学校におけるLD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためめのガイドライン(試案)」
 ・障害者基本計画(14年12月閣議決定)に基づき決定された「重点施策5カ年計画」において「16年度までに策定する」を受けて。 
(2)ガイドラインの内容
 ・第1部 概論(導入編)  ・第2部 教育行政担当者用  ・第3部 学校用(校長用・特別支援コーディネーター用・教員用)  ・第4部 専門家用  ・第5部 保護者用,本人用
5 全国の整備状況
 ・校内委員会設置 75%  ・実態把握の実施 60%  ・コーディネーターの指名 49%  ・個別の指導計画作成 18%  ・個別の教育支援計画 9%  
 ・巡回指導員による支援 44%  ・専門家チームによる支援 18% 
6 中央教育審議会での審議等
(1)中央教育審議会(仲介違法国)
 ―「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(中間報告)」―
 ・特別支援教室(仮称)の構想が目指しているシステムを実現する方向で。
 ・固定式の学級が有する機能を維持できるような制度の在り方や教職員配置及び教員の専門性の確  保の在り方について具体的に検討。
 ・この他,盲・聾・養護学校制度の見直し,教員免許制度の見  直しや総合免許状の在り方について。
(2)発達障害者支援法(平成16年12月成立,17年4月施行)
 ・発達障害への支援に関する国及び地方公共団体の責務を明らかに。
 ・学校教育における発達障害者への支援,就労の支援など。

学校経営と学校評価
                                                園田学園女子大学教授 野口 克海

1 目標のある学校
(1)教育改革
 ・悪しき平等主義‥‥横並び主義
 ・地方分権‥‥自由主義→選択と競争→勝ち組と負け組→2極分化
 ・弱者の立場に立った教育改革を。  
(2)目標と手段‥‥混同していないか。
 ・目標→「信頼される学校づくり」「21世紀を生きる力をつけること」
 ・手段→「開かれた学校づくり」「学校評議員制度」「学校評価」「総合的な学習」などはすべて手段。「開かれた学校づくり」目的ではない。
   *学校評議員制度‥‥地域の有力者ばかりではよくない。学校の重点目標に応じて委員を選ぶ。
  (例)不登校をなくしたい→そういう人を選ぶ。任期は1〜2年
(3)教職員全体の経営参画意識
 ・すべての教職員が自分のこととして考える。
2 危機管理
(1)「危機意識のないのが危機」
 ・まさか,うちの学校が・・・
(2)「危機」とは「子どもの危機」
(3)5つの「子どもの危機」
 ・子どもと子どもの間で起こる危機‥‥いじめ,恐喝
 ・子どもと教師の間で起こる危機‥‥体罰,セクハラ
 ・指導の中で起こる危機‥‥体育時の事故,施設管理不備 90%以上は防げる。
 ・親と子どもの間で起こる危機‥‥虐待,家出 →チェック体制,予防体制
 ・地域と子どもの間で起こる危機‥‥誘拐,交通事故,不審者
(4)危機が発生したときの3つのポイント
 ・初期対応に全力をつくす→その日のうちにすべてを。適切な対応ができるよう,日頃から有事を想定した訓練を。「うちの学校でも起きる」
 ・責任体制を明確に→逃げない
 ・隠さない,公開する。
3 余談
 ・野口氏は堺市でO-157事件が発生したとき府教委義務教育課長。堺市教育長辞任の後を受けて事後処理の任を受け,後任教育長に就任する。被害者(死亡児童も出た)への対応責任者としてたいへんな苦労をした。定年後,園田学園女子大教授となる。この大学は,先日のJR西日本福知山線事故現場から2キロのところにあり,学生に利用者も多くいる。この時も陣頭指揮をとって,危機管理にあたった。

第3日目

行動の評価
                                                   筑波大学助教授 桜井 茂夫

1 「行動の記録」とは
(1)「行動の記録」の趣旨
 ・子どもの行動や態度に表れた成果を評価すること→教師の「望ましい人間形成にかかわる指導」があることが前提 
 ・その評価を指導に生かすこと 
(2)「行動の記録」欄の改訂点
 ・「行動の状況」と「所見」→「行動の状況」のみ。評価の仕方については従来通り
 ・評価項目の変化→「生きる力」の育成状況などが評価できるように変動があった。
〈新規〉「健康・体力の向上」「自主・自律」「生命尊重・自然愛護」「公共心・公徳心」
      「自律」:物事を自分で決めて行うこと。「公共心」:社会のためになることをしようとする。「公徳心」:社会の中でしてはいけないことをしないようにする。
〈削除〉「快活」「根気強さ」→性格的な部分多い,性格は評価すべきことではない。
 ・「所見」は,「総合所見及び指導上参考になる諸事項」欄に記載する。
(3)「行動の記録」欄の評価項目の趣旨‥‥学校生活のみが対象で家庭生活は含めない。
 ―評価項目の具体的な事例―
 ・基本的な生活習慣→あいさつ,整理整頓,忘れ物,提出物など
 ・健康・体力の向上→体育,体育的行事,栄養を考えて,手洗い
 ・自主・自律→自分で考えて行動,最後まで放置しない(援助を求めてでも)
 ・責任感→係や委員会活動,頼まれた仕事
 ・創意工夫→学習の仕方,係や委員会の仕事の仕方,多様な考えが持てる
 ・思いやり・協力→困っている人を助ける,協力して学習
 ・生命尊重・自然愛護→生き物の世話,病気の友だち,安全な生活
 ・勤労・奉仕→ボランティア,手伝い
 ・公平・公正→友だちを差別しない,正義を守る
 ・公共心・公徳心→他社のために,道徳,規則を守る,人の役に立つ
(4)記入の仕方
 ・各教科,道徳,特活,総合的な学習,その他学校生活全般にわたって認められる子どもの行動を
 ・学年別の趣旨に照らして
 ・満足できる場合に「○」→子どもの長所が一目瞭然
 ・絶対評価→クラスの子どもを比較したり,あらかじめ人数を決めたりしない。
 ・「所見」→子どもの成長の全体像として具体的に表現する。「この子のここはすごくいい」
2 「行動の記録」の評価法
(1)教師の観察による評価(他者評価)‥‥観察法は本来難しい。客観的な裏付け
 ・教師の主観に左右されないように。できれば複数の教師で。
 ・教師の観察法
  「逸話記録法」→エピソードを集める。
  「評定尺度法」→評価基準(具体的な行動レベルで作成)をつくり,それに照らし合わせて。
(2)子どもによる自分の行動の評価(自己評価)
 ・質問紙法
(3)子ども同士の行動の評価(相互評価)
 ・「掃除や給食の当番の時,しなければならないことを責任を持ってする人は誰ですか」
 ・ネガティブな内容は聞かないようにする。→よいとこ探し
3 行動の評価の難しさ
(1)特性と行動とは並行関係にあるのか。
 ・例えば「公共心・公徳心」は心の中に存在する気持ちである。気持ち=行動とならない。
  背後にあるものを考えながらその場その場で適切な評価を。行動より認知が現代の心理学
(2)評価法や評価者による評価結果の違いをどうするか。
 ・教師間の調整や自己評価と他者評価の違いの調整→面接法を取り入れる。
(3)指導にどう結びつけるか。
 ・悪いところを直そうという発想ではなく,子どものよさを確認し,指導に生かす。
 ・社会性での項目が多いので,その子の特性を学級づくりに生かす。

キャリア教育の考え方
                                                     筑波大学教授 渡辺三枝子

1 キャリア教育が導入された背景
(1)直接的原因
 ・若者の離転職率の増加‥‥フリーター,ニート
 ・社会と乖離する学校教育への批判
(2)間接的原因
 ・若者の生育環境の変化‥‥昔の子どもとはちがう
 ・社会全般が直面する変革期
 ・自己責任の問われる社会への移行
(3)問題対処型思考への反省
 ・後追い指導‥‥本来の教育の意義・重要性に立ち返る必要性への警鐘
2 キャリア教育とは
(1)教育改革の理念
 ・教育全般の「見直しの視点」
  社会に出てからの適応のための学校教育を見直し,意味づける→今までの教育に付加価値を。 
・キャリアについての教育ではない
・新たな教育活動ではない→現在の教育課程の中に盛り込んでいく。+α
(2)「生きていく力」を育てる教育
 ・進路指導や職業指導との違い→自分で進路を決める指導やその職に就くための学習ではない。 
 ・学ぶ意欲,働く意欲との関連→将来働く,ということを前提とした人間教育(生涯学習)
 ・可能性のある子を育てる→未来が開けている。自己存在感・自己肯定感・自己有用感
(3)4つの能力の提案‥‥これを日々の指導の中で意識することが大切
 ・人間関係形成能力‥‥自他の理解能力/コミュニケーション能力
 ・情報活用能力‥‥情報収集・探索能力/職業理解能力
 ・将来設計能力‥‥役割把握・理解能力/計画実行能力
 ・意思決定能力‥‥選択能力/課題解決能力
(4)教師の理解と実践能力にかかっている。
3 キャリア教育を成功させる鍵
(1)全教師の理解が土台
 ・発達段階を考えた同じレベルの指導を。
(2)教師の基本的教育力の向上
 ・柔軟な態度
 ・観察力
 ・コミュニケーション力
 ・意思決定力
 ・情報活用力
(3)地域・保護者との協力体制
   *参考資料  文科省 2004 キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書

教師の魅力
                                                   東京成徳大学教授 国分康孝

1 「先」を示す
 ・「いま,ここが」大切だというだけでは子どもは人生設計が立てられない。
 ・どうしたら先が見えるか→今の自分に何が問題かを知ること。
その裏返しが「先」=「目標」 「目標」を持った生活を。
 ・子どもに「先」を見せる→その手段としてのエンカウンターの役割
              エクササイズ「往復書簡法」→目標が見えてくる,実感できる。
2 「意味」を示す‥‥語って聞かせる
 ・先を見て生きる中で苦境を乗り越える→意味を見つける
3 「けじめ」を示す
 ・役割をきちんと認識して生きる。
 ・役割→「権限」と「責任」を持つ。
 ・学級委員の役割,班長の役割,日直の役割→「権限」を認め,「責任」を持たせる。
4 「個別的ケア」を示す
 ・子ども一人一人をケアする→愛でる
 ・一人一人を見ている→口だけでなく行動する。
5 「自己」を示す
 ・自分の思考,価値観,感情,行動をオープンにし,相手と共有する。
 ・自己開示→自分のことを子どもに語る。
 ・自己開示の意義→ふれあいを深める/人生指針となる/子どもに自己開示の姿勢が育つ
6 学校で行うカウンセリング(教育カウンセリング)
 ・治す心理学→臨床心理士の分野(心理療法・学校は治すところではない,が原則)
 ・育てるカウンセリング→教育カウンセリング(教師のすべてが実践すべきこと)
・子どもが解くべき発達課題をクリアしていくことの手助けする。
 ・専門家に任せなくてすむよう予防的カウンセリング
 ・ふつうの子が困っている発達課題を解くための援助をする。
 ・5つの発達課題…これらに対応するのは教師の役割
   〈学習指導に関わる課題〉
   〈進路指導(人生設計)に関わる課題〉
   〈性格の育成に関わる課題〉 ・ごくふつうの子が持つ課題
   〈社会性の育成に関わる課題〉 ・教師が行うべきこと
   〈心身の健康教育〉…養護教諭
   〈組織の中でどう生きるか〉
 ・問題の未然防止…臨床心理士にゆだねる前の予防
7 教育カウンセリングの5つの方法
(1)構成的グループエンカウンター
 ・ふれあいの欠如…人との接触を拒否(不登校,いじめ,家出など様々な問題)
 ・ふれあい体験と自他発見をねらいとするグループ体験→自己と他者の理解(人付き合い)
 ・自他一体感があるときが最も落ち着くとき
 ・自己理解できない子の増加…自己疎外(自己肯定感の欠如)
 ・自己を語っていくうちに他と異なる自己の良さに気づく(自己肯定感の芽生え)
(2)キャリア・ガイダンス(人生設計学)
 ・先を見て今を生きる…時間の流れの中で今を生きる
 ・グループ体験を通して自己発見や外界理解,そして人生計画を促進する。
(3)サイコエデュケーション(心の教育)
 ・講義やワークショップやメディアを介して思考・行動・感情を豊かにする方法。集団を対象とした予防的・開発的カウンセリング
 ・傾聴能力とともにスピーチ能力が育つ。
(4)グループワーク
 ・運動会や生徒会への参加体験を通して,思考・行動・感情の社会化を試みる。
(5)対話のある授業
 ・シェアリング(自己開示)の精神に支えられた授業のこと。
8 教師の求められる3拍子そろった能力
  「集団をまとめる能力」「集団を動かす能力」「一人ひとりをケアする能力」
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