図書文化協会・応用教育研究所・日本教育評価研究会 主催
第44回 指導と評価大学講座 参加記録
■研修期間 平成14年7月30日〜8月1日 午前9時30分〜午後4時30分 ■会 場 日本教育会館(東京:神田) ■研修内容 1日目 ○ 新しい教育課程における教育の課題 辰野千壽氏(応用教育研究所所長 元筑波大副学長,上越教育大学長) ○ 教育評価の基礎基本 石田恒好氏(文教大学学長 元文部省指導要録改善調査研究専門委員) ○ 総合的な学習の実践と評価の工夫 有田和正氏(教材・授業開発研究所代表) 2日目 ○ 新教育課程で何を身につけるか 無藤 隆(お茶の水女子大教授 教育課程審議会委員) ○ 学習評価の行い方 北尾倫彦(京都女子大教授 教育課程審議会委員) ○ シンポジウム「新しい教育課程における評価の課題」 コーディネーター 石田恒好(文教大学学長 元文部省指導要録改善調査研究専門委員) シンポジスト 北尾倫彦(京都女子大教授 教育課程審議会委員) 三宅征夫(国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部長) 細水保宏(筑波大附属小学校) 角田陸男(筑波大附属中学校) ……………………………………………………………………………………………………………… 〈1日目〉 ◇ 新しい教育課程における教育の課題 講師:辰野千壽(応用教育研究所所長 元筑波大副学長,上越教育大学長) 1 確かな学力の育て方……確かな学力とは思考力,判断力,問題解決力 (1) 個に応じた指導 少人数指導,習熟度別指導,選択学習,発展学習 (2) 基礎・基本の徹底 系統学習,ドリル学習,プログラム学習,オペラント学習 (3) 自ら学び,自ら考える力の育成 問題解決的学習,総合的学習,体験的学習 (4) 学ぶ意欲や学び方の習得 学び方,学習方略の学習 (5) 学力の確認と改善のための評価 ・相対評価から目標準拠評価,個人内評価へ ・画一的評価から多様な評価へ ・結果の評価から過程の評価へ………とは言うものの双方を見るべきである ・間接評価から直接評価へ ・量的評価から質的評価へ ・他者評価から自己評価へ………第3者の客観評価と併用 2 今日の教育の問題点 (1) 個性の誤解 ・望ましい個性と望ましくない個性………個性は社会的環境の中で形成される。 ・個性尊重………わがまま,利己主義,個人主義を容認するものではない。 (2) 適応理論の誤解 ・個性(欲求)の実現のために社会を変える,という動きが見られる。 社会の要求と個人の要求の調和がとれた状態を「適応」といい,健全な人格が育つ。 個人の 要求にこたえるために環境を変えることは社会悪。 ・欲求不満を感じさせないために過保護なしつけ,甘い教育になる。 子どもの方を変えないで,授業を変えるという現象は不可思議。 (3) 自発性,自主性の誤解 子どもの自由を尊重し,教師の指導性が低下……間違った子ども中心主義へと傾斜 (4)「子どもに合わせた教育」の行き過ぎ ・学習者中心……指導よりも支援,外発的動機づけより内発的動機づけへの傾斜 ・教育課程,教育方法の弾力化……米国のオルターナティブスクール(正規学校の代替学校:好 きなことを好きなときに学ぶ)学習の偏りや基礎学力低下を招く。 ・評価の個性化,多様化 相対評価の軽視,甘い評価……他と競争させない風潮。他と比較することで自己を理解すると いう側面もある ・不登校の容認……フリースクールや代替学校 学校軽視の風潮,疑似不登校児の多発を招く。 (5) 教育の動向 ・個性尊重の教育から画一化の教育へ 米・仏・英では90年代から我が国とは逆に画一化への回帰が始まっている。 ・教育的責任を問う(アカウンタビリティー) 個人が負担する費用や税金に見合った教育がなされているか。 ・ゼロトレランス方式の確立 97年クリントン大統領 秩序の乱れから「寛容性を認めない」教育へ。 日本で言う「教育的配慮」無用論 校則破りは即罰則あり ◇ 教育評価の基礎・基本 講師:石田恒好(文教大学学長 元文部省指導要録改善調査研究専門委員) 1 教育評価とは (1) 教育評価 《教課審答申「児童・生徒の・・・・評価のあり方」は必携,必読》 ○ 評価とは ・PDS(Plan計画→Do実践→See評価)の流れにおいて行われる。 ・教育……目標達成が最終目標 ・評価……そのために教育が正しく機能しているかをチェックする営み →教師の指導と子どもの努力がチェックされる。 ○ 基礎・基本の定着のため……指導要領の最低基準性に基づく。 ・ 指導と評価の一体化(評価,即手当) ・ 学習の過程での評価〔確認と調整〕,終末での評価〔反省と改善〕 ○ 教師の指導力 ・ 目標準拠評価では教師の指導力が問われる。相対評価ではあまり問題にならなかったが。 ・ なぜ実現できなかったか?を問題とすべき。 ・ 未到達の子(保護者)への責任ある教育的対応を。 ○ 終末評価と過程評価の双方を大事に 現在の学校では終末のみに固定している感がある。短いスパンでの確認,調整を。 (2) 教育測定 ・ 観察やテストなどによって状態を明らかにし,数量的に表す操作 ・ テストは測定であって評価ではない。評価のための1つのデータに過ぎない。 ・ 様々な測定技術を身につけ,評価に生かす……評価情報の収集につとめる。 (3)評 定 評定とは……観察やテストによって状態を明らかにし,あらかじめ設定した基準に従い, 点数や記号等を付与する操作。 評定→数量的に判断,要録はすべて評定 ○点数式評定 80%以上実現はA 90%以上実現は5 など ○図式評価 ○記述評価 文章で記述 総合の評価は文章で記述……ここも目標に準拠した評価 *全観点でなく,その子にとって力のついた観点を取りあげて書けばよい *答申の「よい点や進歩の状況を・・・・」については,総合所見欄に書けばよい。ここは「個人内 評価」 2 教育評価の目的……子どもを評価するだけではない。 (1) 指導目的―教師にとって― 基礎基本の徹底,1やCを出さない指導 (2) 学習目的―学習者にとって― ………… 学習の反省と改善 (3) 管理目的―管理職にとって― ………… 例えば「理科が弱い」→理科教諭を求める (4) 研究目的 ………… カリキュラム編成や指導法の研究など 3 教育評価の手順 (1) 評価目標の設定 ○指導目標の具体化・明確化から。……誰でもやれる規準作りのため。 ・本時ごと,単元ごとに行う【行動目標で設定】→目に見える子どもの行動で表す。 ・観点別に行う 「知識,技能」は測れる→個人でもやれる。 「関心・意欲・態度,思考」は難しい→学校を挙げて作成する。 ・ 市町村で行う……広域で,将来は高校入試の改善へつなぐ ○評価目標の設定 ・ 指導目標から抽出する。 数多くの目標や内容からすべてを取りあげることは不可能。ならばどのことがらを代表として 取りあげるか。それを選び出す教師の力量が問われる。 (2) 評価資料の収集 ○評価技術 教師(テスト,観察,対話など) 児童(自己評価,作品,作文など) *自己評価と他者評価の食い違い。なぜ起きたのかを検証する *パフォーマンス評価……子どものパフォーマンスをとらえていく。 (3) 評価資料の解釈 ○基準と規準 基準……判定のためのよりどころ(学習の成果を数量的にとらえる) 規準……目標,内容をよりどころとする(学習の成果を質的にとらえる) ○基準 1)目標基準……目標基準準拠評価(評価規準) 2)集団規準……集団規準準拠評価(相対評価)代表は平均点から知る相対位置 3)個人評価……個人規準準拠評価(個人内評価)ポートフォリオは個人内評価の時系列縦断評 価 4 指導と評価の一体化 (1) 反省と改善 ・教師の立場から……到達できなかった子をどうするかという責任 例:テストはすぐ返す→未達成児への指導のし直しが直ちにやれる ・子どもの立場から……自分の学習を振り返る。 ・管理職の立場から……学校評価へつながる,オール1の子を修了認定? ・行政の立場から……教育行政の反省と改善 ・説明責任……相対評価では子ども同士がある程度わかっているが,絶対評価ではわか っていない。同じ塾にいく子同士が通知票を比べたら逆転現象が。 (2) 基礎・基本の徹底 ・教師の側から……指導のし直し ・児童生徒の側から……学習のし直し ◇ 総合的な学習の実践と評価の工夫 講師:有田和正(教材・授業開発研究所代表) 1 現代社会の動き (1) 三種類の嘘……今年のキーワード ○社会的嘘 評価は「社会的嘘」を含み込んでいる。 ある種の「暗示」……好意から出た必要悪,元気づけるのが評価 ○反社会的嘘 牛肉問題,外務省,ダイエット食品など ○非社会的嘘 広告や宣伝……嘘と知りつつ認めている。 (2) 評価の仕方で子どもが育つ ○ 子どもに希望を与える評価 ○子どもに元気を出させる評価 ○子どもを絶望させる評価 2 教育界の動き (1) 保護者の気がかり……学校はこれにこたえねばならない。 ○学力低下 ○経済的格差……「塾に行っていないが」という心配 ○私立との格差……公立離れ ○土曜日の使い方 ○総合学習へのとまどい……「何を学習しているのかわからない」 (2) これらの気がかりへの対応 ○今までの授業 ・ 教えられたことを教えられたとおりに覚え,それを忘れないこと。 ・ 10教えられて10覚えていればハナマルだった。 ○これからの教育 ・ 10教えられたことを元に,11や12にしていく。 ・ そのために「学び方」を身につける。 ・ 前提として「基礎・基本の習得」 基礎・基本とは何か……他への応用が利くこと/身に付きにくいこと/個性的になっていくこ と ・ 教材論……面白いこと,具体から入って全体へ広がること(1つ知れば2つ3つと見えてくる) 3 指導技術の必要性 (1) 教師の支援7か条 ・ ねらいをソフトに考え,子どもの動きに応じてねらいを変えられる先生 ・ 基礎基本をしっかりとらえ,指導する先生 ・ はてなを発見させることを常に考えている先生 ・ ユーモアを理解し,子どものユーモアを引き出す先生 ・ 適度の抵抗を与え,それを乗り越えさせる先生 ・ 教材開発をして,子どもに面白く追究させる先生 ・ 指導するとはどういうことは常に考えている先生 (2) 総合的学習は「教材開発」で決まる。 教師は教え方のプロではあるが,教える内容のプロではなくなってしまっている ○子どもの目線で教材開発 ○総合的学習の教材条件……4つの力がつく ・ 身近なことから新しい世界が見えてくる。 ・ 調べ方の工夫が出来る。 ・ どこまでも追究できる。 ・ 生き方を深める。 5 21世紀学力「学習技能」 (1) 基礎的学習技能をつける 知識は古くなるが,学び方はいつまでも使える。 (2) 育てたい18の学習技能 ?発見技能,辞典活用技能,事典活用技能,教科書活用技能,地図帳活用技能など (3) 学習技能がついたか評価する 〈目標に準拠した評価のあり方〉 ・具体的な目標を鮮明に ・この目標をどうクリアしたか評価 ・授業を進めながら瞬時の評価を 6 指導するということ (1) 指導案に書くべきこと4つ ・ こんな子どもだから(能力の実態) ・ こんな教材を使って(教材開発して) ・ こんな指導をして(指導法の開発) ・ こんな力を付けたい(ねらいの具体化)……これを評価する (2) 指導するということは3つの仕事をすること ・ 見えないこと(わからないこと)を見える(わかる)ようにすること ・ 多様な学び方を体得させること ・ 学習意欲を引き出すこと 〈2日目〉 ◇ 新教育課程で何を身につけるか 講師:無藤 隆(お茶の水女子大教授 教育課程審議会委員) 1 学校の規制緩和と目指すべき方向 (1)子どもを学校へ閉じこめておく時間を減らし,地域へ戻す。 ・ 地方分権……地域間格差 規制緩和……自分たちでやる(責任) ・ これらの動きは決して後戻りしない。 ・ 学校……基礎基本の学力と総合的な学力を身につけさせる。 ・ 地域……応分の責任を持つべき。 ・ 3割カット……7割は徹底指導,未習熟な子を救済する対策があるか。 (2)共通を最小限として,選択を拡大する。 ・ 共通部分を最小限のものとして,それについては誰もが確実に身につくよう徹底的に 指導す る。 (3)指導要領の最低基準性を確認し,それを超えた発展を可能にする。 ・ 基礎基本……知識理解だけでなく,その教科特有のものの見方,考え方を育てることを忘れず に。TTや教科担任生で対応できる。 (4)総合は知性と教養の育成を ・ 規制緩和でもっとも進んだところ ・ 教科で学んだことを総合して,自分と社会との関心をつなぐことへと発展させる。 (5)社会の学校への関与を増やす ・ ゲストティーチャーのみならず,地域住民,学校評議員など (6)指導と評価の一体化 ・ 評価……目標準拠 Aの子にはもっと高い目標を与える,Cの子にはやりなおしを Cの子をどうするかは大問題である。 →終末評価(学期末)だけでよいのかという問題。単元ごとの評価活動を元に迅速な手当が 望まれる。その内容は反復練習だけではないだろう。 (7)達成の確実性 ・ 授業で目標は1つではあり得ない。たった1つの目標を細部にまで追いすぎると,却って全体 として効率が悪くなる。要は特別な処置を必要とするものであるかどうかがわ かればよい。 「特に達成が足りない子」「さらなる目標を与えた方がよい子」の判断が できる程度でよい。 (8)日常の評価 ・ パフォーマンス評価……テストなどの検査法の他に,子どものパフォーマンスも安定 してみ ることができる資料である。 2 基礎学力の保証……各学校で方策を進めておく。 (1)基礎知識の確実な習得をチェックし,援助する体制 (2)教科指導の水準を上げる。 (3)勉強時間を確保する。 (4)選択の時間その他を通して,習熟度や発展学習を導入する。 (5)実際の評価は「特に対応が必要な子」(大きく理解できていない子,楽に理解できている子)を見 つけることでよいだろう。評価のための評価にならないためにも。 3 総合的知性を育成する (1)総合的な学習の時間 ・ ねらいは総合的な学力を伸ばすこと。 ・ 教科学習との違い 教科……伝統的文化遺産を継承(系統的,組織的,画一的) 総合……世の中を見つめ,自分なりの認識を確立させる。そのためには「調べ,まとめ,発表 する」ことが不可欠 ・ 目指すところは2点 知的社会的関心を広げていく……学校での学習を世の中に結びつけていく 教科との関連を深める……教科の意義(数理的科学思考力など)を感じさせる。 (2)情報活用力をのばし,特に文章力を重視する。 4 学校評価を進める (1)基礎学力を評価する。 (2)総合と発展を評価する。 (3)評価は改善の約束とセットにする。 (4)学校の総体としての評価を行い,公開する。 ◇ 学習評価の行い方 講師:北尾倫彦(京都女子大教授 教育課程審議会委員) 1 学習の質を問う ―学力低下批判に応えて― (1)浅い学習が思考力・知識の構造化を阻んでいる ・ OECD調査などからも学力レベルは低下していない。 ・ 質が問題……OECD調査では読解力は8位(思考力,判断力) (2)知識の使用(適用)経験の不足がその定着を阻んでいる。 ・ 学んだことの定着が悪い(学びの崩壊) ・ 思考力が不足……確かな学力がついていない。 (3)学習意欲,学習価値観の低下……自己学習を阻んでいる。 2 目標準拠評価の行い方……各担任が評価データを持ち寄って,評価基準に照らしながら評価 することが大事。 (1)目標を具体化し,評価項目を決める ・ 誰にでもできる評価(評価の客観化) 例:×地域の伝統,文化に関心を持っている。 ○地域の祭りや伝統行事に進んで参加している。 ×正の数,負の数の考え方を使ってものごとを考えることができる。 ○気温の前日との差など,正の数,負の数を用いてものごとをとらえ直すことができる。 ・ 評価の根拠として利用できる具体性のあるもの。 (2)評価のスパンを定め,総括を行う。(指導と評価の一体化) ・ 1校時の授業……評価資料の収集 ・ 単元での総括……最適(すぐに手当ができる) ・ 学期末や学年末の総括……指導との一体化が難しい,違う視点からの評価 ・ 学習期間が長く,学習範囲が広すぎると目標が全体をカバーしきれず,抽象的になってしまう。 ・ 「知識」「技能」は学習の終了時において判断できるが,「関心・意欲・態度」「思考・判断」は学 習の全過程の中に評価の機会がある。 (3)単元ごと,観点ごとの評価項目を作る……日常化させる必要性 ・ 単元ごとのメリット……P(計画)D(指導)S(評価)の一体化 PDS(指導ユニット) ・ 観点ごとのメリット……学力の多面的な評価 (関・意・態は日本のみの項目:4観点で学力をとらえるのは日本独自の世界に誇れる評価 方法) ・ 評価項目の選び方 1)子どもの学習活動と対応づける(評価場面を決める) 「関・意・態」は拘束されない場面で。 2)学習の広がりと深さを保証する(観点間のつながりを考えておく) 4観点はバラバラにとらえてはならない。子どもの姿は常に4つが一緒に出現する。 「関・意・態」と「知・理」「思考」は結びついている。結びつけるのがプロ教師の仕事。 塾では「関・意・態」なしで「知・理」をつけようとする。 3)重点化し,代表項目を絞る(多からず少なからず) すべてを取りあげることはできない。目標から引っぱり出した代表項目 (4)評価の基準を決めておく ・ 基準と規準の違い 基準……設定された目標にどの程度まで到達(達成)しているか?→学力の量的レベルが問 題となる。量的な基準を示す。量的スタンダード 例:「規準を80%達成したらA,60%ならB」 規準……評価の対象は何か?→学力の質的特徴を問う。これが評価規準。幅の広い質的な 基準を示す。質的スタンダード 評価規準とは「達成したい質的レベル」これを越えたら達成と認める。 *評価活動……あらかじめ設定された評価規準に照らして,評価基準に従って評定 以上,北尾倫彦氏と三宅征夫氏(国立教育政策研究所)の話から ・ 質の良さによるカッティングポイントの決め方 カッティングポイント(AとB,BとCの境目であり,基準となる 例:3は80%,2は60%/5は90%,4は80%,3は60% の達成率で) ―評価項目ごとの評価基準― *クオリティー(質)による段階別 A:登場人物の人がらまでも理解し,その生き方を読みとることができる。 B:登場人物の生き方を一通り読みとることができる。 C:登場人物の生き方をほとんど読みとることができない。 学習状況の質を吟味する→その後「数量化」→学期末や学年末の評定は数量評価でよい。 簡単にクールに。単元ごとの評価はホットに,学期末の評定はクールに。 学習の質とは?……「拡がり」と「深まり」の視点から ・ 量的にカッティングポイントを決める方法 ―評価の総括における評価基準― *数量的にとらえる。 例1:ある単元での総括(4観点にそれぞれ3つの評価項目がある場合) 関:AABであればA,思:BCCであればB,表:BBAであればB,知:BABであればB (場合によって軽重を考慮する) このような基準を子どもも保護者も知っていてよい。 シンプルでガラス張りにする。悩まないで機械的に評定する。 *重みづけをする場合の例 関心・意欲・態度/学習活動の観察60% ノートやワークシート40% 思考・判断/学習活動の観察20%ノートやワークシート40%ペーパーテスト40% 技能・表現/学習活動の観察30% ノートやワークシート30% 発表資料40% 知識・理解/ノートワークシート30% ペーパーテスト30% *終末での評定 例2:学期末の評定(例1で実施した単元ごとの評価を数量的に評定する) │観点│ 関 │ 思 │ 表 │ 知 │ │単 │アイウ│アイウ│アイウ│アイウ│(場合によって軽重を考慮する) │元 │AAB │BBB │ABA │BCB │ │総括│ A │ B │ A │ B │ このような基準を子どもも保護者も知っていてよい。 シンプルでガラス張りにする。悩まないで機械的に評定する。 ・ 総合評定の行い方 単純に平均値を用いる場合……Aを3点Bを2点Cを1点として数値化する。 観点ごとに重みをつける場合……「思・判」を2化倍,「知・理」を2倍化 *補正することの重要性(信頼性を一層高めるために) 当該学年での目標を達成したかどうかを再度ふり返って見直す。 重要な達成事項が確認された,標準学力検査と照合,他者の観察眼 ◇ シンポジウム ― 新しい教育課程における評価の課題 ― コーディネーター 石田恒好(文教大学学長 元文部省指導要録改善調査研究専門委員) シンポジスト 北尾倫彦(京都女子大教授 教育課程審議会委員) 三宅征夫(国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部長) 細水保宏(筑波大附属小学校) 角田陸男(筑波大附属中学校) *質問への回答も含む。 ― 北尾倫彦 ― ○ 評価基準表 ・ 単元ごとの作成が基本 ・A,B,Cの違いを明確に(カッティングポイント) ・ 質的にABCを決める(学習の結果,その子の習得内容を質的に吟味する) ・ 総括する場合は量的に決める (カッティングポイントをどう決めるか?→経験則によるしかないだろう) ○ 学校の実態 ・ 目標準拠評価への誤解(不勉強)→甘い評価になっている(教育的配慮という言葉に惑わされ ず,具体的事実に着目する) ・ 到達できていないところは正確に伝えるべき。 ・ 明確な規準を→使える規準,担任が替わっても使える。 ○ 高校入試に関する問題点 ・ 今は移行期 ・ 県としてのガイドラインを(画一的絶対評価)……共通の規準で共通の量的基準を。 ○ 指導と評価の一体化 ・ どうしても1やCのつく子……学校体制としてその子を救う教授システムがあるか。 ・ 単元ごとの評価は質的にとらえ,学期末評価は数量的にとらえる。 ・ 関心,意欲,態度は生涯通用する学力という押さえ……学ぶ意欲 ― 三宅征夫 ― ○ 評価のあり方 ・ 教育課程審議会答申で絶対評価に変更→それを受けて評価規準モデルを示した。 ・ あくまでもモデルであって,学校ごとに手直しをして欲しい。 ・ 単元ごとに評価活動を行って欲しい,それが指導と評価の一体化。未到達の子には素早い対応 を。 ○ 教師に求められる指導観 ・ Cや1を出さない指導を。出た場合は補充指導を。 ・ 補充指導の際の指導の手だてを工夫(果たしてドリル学習だけでよいか) ・ 補充指導の結果についても子どもと保護者に説明する責任がある。 ・ 高校入試については移行期ととらえ,今後の動きを見る。中学校の評価方法体制が整ったとこ ろで絶対評価採用へ。 ― 細水保宏 ― ○ 評価の対象 ・ 基礎基本となる学力をきめ細かに評価 ○ 指導に生きる評価 ・ 授業中にしか評価できない観点がある。 ・ 評価方法を自分たちで創意工夫する。 ・ 書くことをあらゆる場面で取り入れている。 ― 角田陸男 ― ○ 評価の目的 ・ すべての子に確かな学力のつけるため ・ 単元ごとの指導目標(つけたい力) ……計画的に(評価場面の設定)評価材料を収集する。 ○ 評価計画の作成 ・ 年間学習計画の中にもう1つ欄を設け,そこに評価計画を書き込む。 単元ごとが原則であり,いつ,どこで,どんな方法で評価するかをはっきりさせておく。 ・ 定期考査重視はやむ得ない……4つの観点から出題している。 ○ 評価の信頼性 ・ 手に入れた評価材料を子どもや保護者に公表する。 ・ 評価の基準(数量的な評価)も同様 学校選択制を取り入れているカナダでは学力検査結果をすべての学校が公表している。 ○ 2期制の導入 ・ 単元ごとの評価を積み重ね,その変化を長いスパンでとらえたい。 ・ 時数の少ない教科の評価に対応 ○ 評価材料 ・ 行動観察,小テスト,子どものノート,実験計画書や結果表など,工夫を。 |
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