目標分析に基づく「評価基準」の作成
1 目標分析とは ■ 絶対評価の実施上の問題点 →評価作業が繁雑で手間がかかる。 →明確な評価基準がつくれない。 →教師の共通理解が困難である。 →保護者の理解を得にくい。 →その原因として ・子どもの姿で評価基準が論じられていない。 ・子どもにどんな力をつけていくかが明確になっていない。 ■ 目標分析の意義 ・ 子どもをとらえる物差しがはっきりする。 ・ 子どもの具体的な学習活動が記述されてくる。 ・ 学習の全体構造が把握できる。 ―「目標分析」をすれば授業の流れや「評価」が見える― この単元でぜひとも身につけさせたいことは何か,知識・理解でこれだけは欠かせないという 内容は何かなど,「目標分析」することによって学習活動を具体的に語ることができるようになる。 そうすると,1時間目にはこのことを,2時間目にはこれとこれ,というように確かな見通しが持 てるようになる。 目標分析をすれば,つけたい力の構造とともに授業の流れ,そして「ここでこのことを評価すべ き」という評価計画も見えてくる。毎時間の主発問なども明確になってくる。 目標分析とは目標の構造をとらえることであり,評価規準に記述されている抽象的な規準を可 能な限り子どもの姿に近づけて具体化させ,単元全体の姿をくっきりと浮かび上がらせることであ る。 目標分析は,子どもの実態や先生の指導方法によって変わる。自分の学校,学年の実際の姿 に合わせてつくってみる,目の前の子どもの様子を見ながらつくってみる,という自校化が必要で あり,さらに実際に授業をしてみて使いやすいように修正していく,という作業も必要である。 ■ 目標分析の実際 @ 指導要領に示された目標と内容を熟読,確認する。 ↓ A それを受けて本校評価規準,教科書単元目標とを関連させて,実現させるべき目標を設定する。 ↓ B 目標は評価基準作成,さらに評価方法などに反映させるべく具体的な子どもの姿(見えるかたち) と結びつけて可能な限り具体化させる。 2 具体的手順 (1)目標分析 学習指導要領及び評価規準を,「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」の4観 点(一部教科を除く)から詳細に分析する。 〔例〕日本の水産業(5年) @ 指導要領解説編を熟読,吟味 A 単元の評価規準からの目標分析 ……… 次ページ参照 (2)マトリックス作成 ・ 目標分析を通して明らかにした評価基準と学習内容との関連を明らかにするとともに,学年内や学 年間の評価の重点の系統性を明らかにする。 ・ 方法 縦に学習内容を,横に評価観点をとった表で示す。 (目標分析で明らかにした「つけたい力」を単元の中でどのように身につけていくか。それをどう評 価し,手当をしていくか。) ■ マトリックス作成の手順(例) 1 学習内容を縦軸,学習能力を横軸にとり,目標分析の結果を表中に書き入れる。 2 書き入れた内容を検討し,精選する。 3 中心となる項目をひろいだす。 4 学習の順序性や観点を考え,並び替える。 5 順序性と中心となる目標との関係を考え,さらに並び替える。 6 それらを概観して,これまでの実践で得られた子どもの姿に照らし合わせ,学習計画を構成す る。 (3)目標分析に基づいた評価基準 @ 評価基準をできるだけ具体化する。 ・評価者がかわっても同じ結果が出る基準を…………評価の客観性 A 単元構想に評価活動を位置づける ・1単元を単位として,どこでどのような目的でどのように評価するか。 ・自己評価能力を育てる場を設ける・・・・そういう授業づくりを 「目標分析」の理論は福岡大教授:陣川氏によっています。 |
単元の評価規準からの分析 5年社会科 「日本の水産業」での例 〈関心・意欲・態度〉 ・わが国の水産業の様子@に関心を持ちA,それを意欲的にB調べC,考えながら追究Dしようと する。 ・国民生活を支えている・・・・・・・・・・・。 @どんな「様子」に関心を持たせたいか。 A「関心」を持ったかどうか,どう判断するか。また,持てたかどうかを把握する。 Bどのような行動が見られたとき「意欲的」ととらえるか。 C調べる対象は何か。どんな方法で調べさせたいか。 D「考えながら追究」の姿を具体化させる。 〈社会的な思考・判断〉 ・水産業の様子@から問題意識を持ちA,学習の見通しBをもって追究・解決するC。 ・国民の食料を確保する・・・・・・・・・・・。 @どんな「様子」を押さえねばならないか。 Aどんな「問題意識」が持てればよいか。持てるようにするには,ここまでにどのような指導が欠か せないか。また,持てたかどうかを把握する。 Bどんな「見通し」が持てればよいか。持てるようにするには,ここまでにどのような指導が欠かせ ないか。また,持てたかどうかを把握する。 Cどんな追究の対象が設定できればよいか。それをどんな方法で「追究」できればよいか。「見通 し」に従った「追究」ができているかを把握する。 〈観察・資料活用の技能・表現〉 ・水産業の様子@や抱える問題Aを,写真・地図・グラフなどを活用してB具体的に調べるC。 ・水産業に従事する・・・・・・・・・・・。 @どんな「様子」を押さえねばならないか。 Aどんな「問題」を押さえねばならないか。 Bどんな資料を用意するか。また,資料から何を読みとることができればよいか。 Cどういう姿を求めるか。多くの資料をどう使えばよいか。調べた結果から何が理解できればよい か。 〈社会的事象についての知識・理解〉 ・様々な食料生産@が国民生活を支えているAことがわかる。 ・食料の中には外国から輸入している・・・・・・・・・・・。 @押さえておくべき「食料生産」とその内容は何か。 A何が理解できればよいか。国民生活にどのように関連しているのか。 * 以上のように「考えさせたいこと」や「つけたい力」などを可能な限り具体化させ,付箋紙に書き 出し,マトリックスの上に落としていく。すべて落としたところで検討し直し,全体像を明確にする。 |