「 絶 対 評 価 」の 進 め 方

絶対評価の進め方
評価基準の作成手順
目標分析に基づく「評価基準」の作成

  絶対評価の進め方
 実際の評価にあたっての留意すべきことは「評価のスパンを決め,継続的に指導と評価の一体化を進める」ということ。たとえば,
 ・ 1校時の授業……評価のための資料の収集しながら,習得状況に合わせて指導の見通し立てる。
 ・ 単元で総括する……すぐに手当ができる
 ・ 学期末や学年末の総括……単元ごとの総括に基づいた評定
 短いスパンでの評価を大事にしたいのは,学習期間が長く,学習範囲が広すぎると目標が全体をカバーしきれず,抽象的になっ
てしまうからである。
 また,「知識・理解」「技能」は毎時,単元の終了時において判断できるが,「関心・意欲・態度」「思考・判
断」は学習の全過程の中に評価の機会があるということも忘れてはならない。
 《手順1》 ● 指導要領解説編に書かれている該当単元の「目標」と「内容」を確認する。
 《手順2》 ● 教科書指導書に書かれている単元目標と内容を確認する。
         ・ 指導要領の目標や内容が単元目標にどう具体化されているか読みとる。
 《手順3》 ● 評価規準を作成する
         ・ どういう力をつけたいのか〈能力〉の具体化と一般性
         ・ 評価目標を立てる。
           指導目標の分析(観点別につけたい力を具体化させる)
            * 指導目標:その単元における学習者全員を対象としたつけるべき力
            * 評価目標:評価の重点化により指導目標から選び出した評価のための目標
            * 評価の重点化
            重点化(代表性:これとこれとこれが身につけばそれで十分)
           →これが教材研究の中心
           →この単元の学習が成立したと見なす場合,どうしても欠かすことのできない力は何か。
 《手順4》 ● 評価基準を作成する(次項「評価基準の作成手順」参照)
         ・ 簡単な事例を付け加えておくと誰でも評価できる。教科書の中身まで入り込んだ表現で。
 《手順5》 ● 事前調査(レディネス調査)を実施する。〈第1次評価〉
         ・ 必要であれば予備授業を実施する。
 《手順6》 ● 評価計画を立てる。
         ・ 評価資料の収集と評価場面
         ・ 重点化された評価目標をどこで(第何時で)評価するか。
 《手順7》 ● 短いスパンでの評価〈第2次評価〉
         ・ 重点化された評価目標を設定した重点授業での評価
 《手順8》 ● 単元終了時の評価〈第3次評価〉
         ・ 補いの学習が必要であるかどうかの判断
 《手順9》 ● 補い学習の評価〈第4次評価〉
 《手順10》● 評定
         ・ 量的評価…総括における評価基準は達成率によって量的に決める。(どれだけ習得できたか)

 評価基準の作成手順
 個々の評価目標の評価基準は,ここまでは到達してほしいという量的に決める。
 しかし「関心・意欲・態度」や「思考・判断」など,目に見えにくい観点については「質的(ルーブリック評価)」にとらえる方が
合理的である。
  ・量的評価
   「B:登場人物の心情を一通り理解している」「A:登場人物の人柄までも理解している」
    *人柄までも理解できるほど深い読解ができたという事実を表現している。
  ・量的な基準がしっかりできているかどうか。
   簡単な事例を付け加えておくと誰でも評価できる。教科書の中身まで入り込んだ表現を。
 *具体例1〈5年 社会科〉 
  ●評価規準「稲作に従事する人々の働きに関心を持ち,人々の工夫や努力を意欲的に調べようとする」
  ●これを受けた評価基準
    A:米袋の表示情報から産地とその栽培にかかわる多くの情報を読みとり,意欲的にまとめたり発表しようとしている。
                                                   (教師のねらう到達点を越えている)
          B:米袋を観察し,表示情報から気づいたことをノートにまとめ,発表しようとしている。
                                                   (教師のねらう最低の到達点)
          C:米袋の表示情報に関心を示さず,自分から取り組むまでに至らなかった。
                                                   (教師のねらう到達点に達しなかった)
 *具体例2〈国語の物語の読み取り〉
  ●評価規準「登場人物の心情を読みとることができる」
  ●これを受けた評価基準
    A:登場人物の人がらまでも理解し,その生き方を読みとることができる。
    B:登場人物の生き方を理解し,一通り読みとることができる。
    C:登場人物の生き方をほとんど読みとることができない。
  といった具合になる。ここで気をつけるべきことは,AとBの差別化をする際に「よりいっそう」とか「意欲をもって」といった
 言葉の上だけで差別化しないということです。あくまでも「学習の質」を行動目標で表記する。
  基準作りは「評価の客観化」という視点から,可能な限り評価者の目に見える学習者の行動に注目した「行動目標」とな
 るように配慮しなければならない。特に「関心・意欲・態度」では留意すべきである。
  例えば,「地域の伝統,文化に関心を持っている」ではなく「地域の祭りや伝統行事に進んで参加している」といった表記
 が求められる。
〈新しい評価観:ルーブリック評価
  「関心・意欲・態度」や「思考・判断」など目に見えにくい評価に関しては,ルーブリック評価(質差の状態を想定)が最適。
 作品・論文・行動・発表・実験や観察のクオリティの良し悪しといった子どものパフォーマンスを評価する。
   *陸上・水泳と体操・フィギアスケートの評価の違い
     …陸上や水泳は誰もが納得する基準がある。
     …体操やスケートの審査員は細かく決められたルーブリックにより採点している。

  ○参考
     規準……目標,内容をよりどころとする(学習の成果を質的にとらえる)
    基準……判定のためのよりどころ(学習の成果を数量的にとらえる)
    私たちは「この単元ではこんな力をつけてやりたい,このレベルにまでは到
  達させたい」こんな願いから評価規準を決めます。そして,実際の評価に役立
  てるために評価基準(判定基準)を作成します。評価基準は,基本的には年度
  ごとに再検討されるべきと考えます。なぜなら,どの担任もすべてが米袋を使
  った授業を実践するとは限らないからです。