情報編

 

1 カザフスタンの山スキー

 カザフスタンでは、1月〜4月には天山山脈北部に当たるザイリスキー山脈・クンゲイ山脈の3,000m〜4,000m峰で、7月〜8月には天山山脈中央部に当たるハンテングリ(6,995m)近辺の4,000m〜5,000m峰で山スキーができる。情報は少ないが、カザフスタン北東部のアルタイ山脈や東部のジュンガルスキー山脈にも、スキー向きの山がありそうだ。

 ザイリスキー山脈の場合、マリ・アルマティ谷ではシンブラクスキー場まで、また西隣のボリショイ・アルマティ谷ではボリショイ・アルマティ湖(2,511m)やジュサリケゼン・パス(3,336m)の観測所まで冬や春にも車で登れるので、1日シール登高するだけで山スキーのベースまで入ることが可能だ。マリ・アルマティ谷の20km東のタルガール(4,978m)近辺には広大な氷河がいくつもあるが、ベースキャンプまで歩くと数日かかるので、ヘリコプターで入るのが現実的だろう。通訳兼コックのサーシャの話では、アルマティには10人ほど乗れる登山用ヘリコプターが1機だけあり、1時間2,000ドルでチャーターできるそうだ。しかし、ヘリコプターは老朽化し、利用する登山パーティも減ってきているらしい。天山山脈中央部の場合は、カルカラなどからヘリコプターでベースキャンプまで入るのが普通である。

 ザイリスキー山脈では、1月には晴れる日が多くて積雪はまだ少なく、気温もマイナス5度〜30度と低いので、しばしば斜面は蒼氷がむき出しになっていたり石が出ていたりしている。3月頃の方が、天気の悪い日が増える反面、積雪も増えるので山スキーに適しているようだ。なお、1月初めの場合、8時から18時までは明るい。今回出会った登山パーティは1組だけだった。ただし、マリ・アルマティ谷の道路でハイキングをしている人や、道路脇の斜面で雪上訓練中の人は、10組以上見かけた。

2 主な費用とカザフスタン国内の旅行手配

 成田〜アルマティ往復の航空券は1人当たり20万円だった。エアーアスタナの北京〜アルマティ便では、行きも帰りも1人当たり4千円の荷物超過料金を取られた。行きは「荷物の重さが1人当たり20kgの制限を5kg超えている。」という理由だった。帰りはスキーブーツなどを機内へ持込むことにして預ける荷物は1人20kgまで減らしていたのだが、「スキーが長さの制限を超えている。」と言われた。

 カザフスタン国内の旅行手配は、アルマティの旅行会社ハンテングリ(ホームページhttp://www.kantengri.kz/)に依頼した。3人分の料金は3,260ドルで、内訳は示されなかったが次の程度ではないかと思われる。
* 通訳兼コック(1人×5日)とポーター(2人?×1日):600ドル
* 氷河研究所での宿泊・食事:80ドル×3人×4泊=960ドル
* アルマティのホテルオトゥラル:100ドル×2部屋×3泊=600ドル
(ホテルオトゥラルのホームページhttp://www.group.kz/eng/hotel/hotel.html
* アルマティ〜登山口往復とアルマティの空港〜ホテル往復のチャーター車:400ドル
* 査証申請用の招待状の発行:100ドル
* 旅行会社の手数料(約20%):600ドル
なお、旅行手配料金のうち予約金を除く2,934ドルについて、ハンテングリ社は旅行前にメールで「クレジットカードで払っても良い。」と連絡してきたのに、アルマティに着いてみると「クレジットカードは受付けない。」と言う。どうやら「クレジットカードでATMから現金を引出して払うこともできる。」という意味だったようだ。外国ではクレジットカードを使ってキャッシングしようとしても失敗することが多いが、今回は街中を歩き回った末に3か所目のATMで何とか現金を引出せた。

3 地図・ガイドブック

 カザフスタン全国の10万分の1地形図はオムニマップ社ホームページ
http://www.omnimap.com/)でオンライン購入できる。マリ・アルマティ谷の山スキーに必要な地形図の番号は「K-43-035」である。

 また、ハンテングリ社に頼めば、マリ・アルマティ谷の1万分の1地形図と登山ガイドブックも入手できる。地形図は学術調査用にカザフスタンとドイツが共同製作したもののようだ。ガイドブックには、ルートを記入したカラー写真、ルートのグレード、ロシア語の解説が掲載されている。

4 氷河研究所

 今回はハンテングリ社の手配で、マリ・アルマティ谷の氷河研究所を山スキーのベースにした。ここはカザフスタン地理学研究所の施設であり、登山者を泊めることは滅多に無いそうだ。夏には多くの登山者が谷でキャンプするが、冬は寒いので、4WD車で谷の奥まで入り、日帰りかキャンプ1泊だけで素早く山に登って帰るのが普通のようである。

 氷河研究所では、1週間交代で常時4〜5人の職員が働いている。建物は1960年代に作られた古いものだが、窓は二重になっており、石炭と薪のストーブもあるので暖かい。夏は湧水を引いて使い、冬はストーブに載せた大鍋で雪を融かして水を作る。プロパンガスのコンロもあり、電気は発電機で起こしている。我々はマット付のベッドが3台ある寝室とザックや靴を置くための空き部屋を使わせてもらい、食事は研究所員と一緒に食堂で取った。トイレは居住棟から100mほど離れた所にあるドアの壊れた小屋だった。鈴木の話によると、昼間はもっと立派なトイレ棟も使えたが、一部の研究所員専用なのか夜になると鍵が掛って入れなかったそうだ。

5 装備

 1月のマリ・アルマティ谷では気温がマイナス30度まで下がることもあるので、中綿入の厚いマウンテンジャケット・パンツ、ダウンジャケット、ダウンの2本指オーバー手袋、耳当付き防寒帽、鼻まで届くネックウォーマー、ゴーグルなどの防寒具を持って行く方が良い。アルマティ市内でも、風が弱い分だけ地面の近くに冷気が溜まるので、気温が極端に低くなることがある。今回12月30日にアルマティ空港に着いた時の気温も、マイナス22度になっていた。通訳・コック付で氷河研究所に泊まる場合、自分で用意する宿泊用の装備はシュラフだけで済む。アルマティでは釣道具屋でプリムス互換のガスカートリッジが買えるし、登山用品店もある。それらの店の場所は、現地の旅行会社に聞けば良い。食料を買うためのスーパーマーケットは、アルマティ市内のあちこちにある。

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