行動記録

 

12月29日 成田14:55−北京17:30(鈴木は中部発着。崎田は関西発着。)

12月30日 北京00:30−アルマティ04:15

 12月30日の朝早く、アルマティのホテルに到着。10時30分に旅行会社ハンテングリの社長と通訳兼コックのサーシャがホテルにやって来た。打合せをした後、サーシャの案内で行動食や非常用に携行するガスカートリッジを買いに行く。この日の午後にサーシャとポーターが氷河研究所まで食料などを荷上げするというので、我々の登攀具やシュラフもサーシャに預けて一緒に運んでおいてもらうことにした。12月31日は休日でポーターが見つからないため、30日に荷上げするそうだ。

12月31日(快晴)アルマティ09:00−マリ・アルマティ谷の標高2,450m 10:15−氷河研究所15:15

 サーシャの4WD車でアルマティからシンブラクスキー場まで行き、マリ・アルマティ谷東岸の道路をさらに奥へ進む。昨日荷上げした時には砂防ダム・気象観測所(3,040m)まで車で入ったそうだが、帰りに雪道で滑って路肩から落ちそうになったということで、今日は標高2,450mに車を置くことになった。ここには、ハンテングリ社が登山用ロッジを建設中だ。

 薄く雪の積もった道路をシールで進む。アバイ(4,010m)北西稜の末端に当たる高さ200mの岩壁の下を横切り、砂防ダム・気象観測所を通過して、標高3,120mでマリ・アルマティ谷の西岸に移る。西岸の斜面をZ字型に登ると、対岸にそびえるアバイ〜オルジョニキゼ(4,410m)〜テュクス(4,218m)の山脈が良く見えてきた。ティトバ東稜の末端(3,340m)を回り込んでから南西に0.4km進むと氷河研究所に着く。

 さっそく遅い昼食をごちそうになる。メニューはカップラーメン・ハムエッグ・サラダ・パン・チーズ・果物などだ。大晦日は休日なので、サーシャと2名の研究所員は明るいうちからひっきりなしにウォッカのグラスを空けている。屋外の気温はマイナス20度だが、ストーブが焚かれた室内は暑いくらいだ。モーツァルトから80年代ディスコまでのあらゆる音楽も賑やかに鳴っている。20時に一旦ベッドに入ったが、23時45分に「年越しパーティの用意ができた。」と言って起こされた。シャンパンの栓が抜かれ、「祝2008新年」のデコレーションケーキにナイフが入る。玄関前で1ダースほどの花火も打ち上げて、1時過ぎにパーティは終了した。

1月1日(快晴)氷河研究所09:50−モロデズニー・パス13:30−氷河研究所15:30

 今日はモロデズナヤ(4,147m)に登る。氷河研究所から南西に伸びる小さな谷を0.3kmシールで登り、モレーン南西端(3,500m)を抜けて南側のモロデズニー氷河末端(3,470m)へ下りる。クレバスの無いなだらかな氷河を西へ0.8km進めば、モロデズニー・パス東麓(3,600m)である。スキーはここにデポする。

 西側の最低鞍部(3,787m)へ向かう斜面に取付くと、研究所で借りた無線機からサーシャの声が聞こえてきた。「そこから稜線に登ると岩峰に挟まれて進めなくなる。正しいルートはもっと南側だ。」と言っている。彼はモレーンの上あたりに登って我々の様子を見ていたらしい。南へ移動し、氷河の北西端沿いのルートに変える。土の斜面を80m登ってから、アイゼンをつけて雪の斜面に出る。高さ40mの急斜面(35〜45度)を越えると傾斜は緩み、まもなくモロデズニー・パスに着く。ザイリスキー山脈がはるか西まで伸びているのが見える。山脈の北側にはカザフスタンの大平原が広がっているはずだが、雲海に覆われている。

 モロデズニー・パスの南には、高さ30mの岩峰がそびえている。サーシャからの無線連絡によると岩峰の西側を巻けるそうだが、そのルートは分かりにくい。また、岩峰より上の斜面も、蒼氷がむき出しになっていて登りにくそうだ。モロデズニー・パスから引き返すことにする。スキーデポへ戻り、シールをつけたままで石の多い氷河をゆっくり滑り降りる。氷河末端から谷底を直進し、凍結した2つの氷河湖(3,447mと3,420m)を経て研究所へ帰る。

1月2日(晴れ)氷河研究所08:15−ポグレベツキー北麓3,800m 12:00−ポグレベツキー・パス(4,070m)北東面の標高3,900m 13:00−ポグレベツキー北麓13:30−氷河研究所15:30

 ポグレベツキーを目指して、8時15分に氷河研究所を出発。マリ・アルマティ谷西岸の道路を南へ進む。道路は一部崩壊しているが、テュクス氷河末端(3,420m)まで伸びていた。クレバスは見当たらず、「写真を撮りに行く。」と言ってスノーシューで先行しているサーシャのトレースもあるので、ロープはつけずになだらかな氷河の西岸を2.5km南へ進む。あちこちに立ててある木のポールは、氷河の流動を観測するためのものらしい。12時にポグレベツキー北麓へ到着。サーシャはここで引き返す。1km東に見えるテュクス・パス(4,100m)は、積雪が多い時季ならスキー向きだが、今は蒼氷がむき出しになっていて滑れないしアイゼンで登るのも大変だろう。

 スキーをデポしてアイゼンをつけ、傾斜35〜45度のポグレベツキー・パス北東面に取付く。硬い雪の斜面を50m登ると、モナカ雪に変わった。一歩進む度に2〜3度膝蹴りなどをして表面の厚さ5cmのクラストを破らなければならず、その下の雪は踏みつけても固まらないで膝〜腿まで潜る。1時間もがいて、ようやく標高3,900mまで登る。このペースで山頂を往復していたら日が暮れてしまうので、ここで登高は打切ることにした。

 ポグレベツキー北麓へ戻り、テュクス氷河を滑る。硬い雪面の所々に柔らかい雪面が混じっていて足を取られやすいが、幅1kmの広々とした氷河を滑るのは気持ちが良い。氷河末端でシールをつけて研究所へ登り返す。

1月3日(曇り時々雪時々日も差す。時々強風。1日で1cm積もる。)氷河研究所09:00−ティトバ東稜南面の標高3,600m 10:30−氷河研究所11:00

 今日はティトバに登る。最初は一昨日と同じルートをたどり、モレーン南西端からは西へ伸びる幅10mの浅い谷に入る。標高3,600mで谷は終わって積雪も無くなった。気温はマイナス10度くらいで昨日までより10度高いが、風が強いので顔が凍傷になりそうだ。登頂はあきらめ、カチカチに凍った谷を滑って氷河研究所へ戻る。

1月4日(曇り)氷河研究所09:00−マリ・アルマティ谷の標高2,450m 12:00−シンブラクスキー場12:15〜13:30−アルマティ14:30

 下山日である。帰りはポーター無しなので、荷物が重い。マリ・アルマティ谷西岸の道路をスキーで滑走するが、雪の上に土砂が積もっていたり、硬い雪面が急にモナカ雪や吹きだまりに変わったりして苦労する。谷の東岸へ移ると傾斜が緩くなったのでシールをつける。僕はそのまま車の所まで下ったが、鈴木と崎田は途中1kmくらいシールをはずしていた。

1月5日 アルマティ16:20−北京23:00

1月6日 北京13:30−成田17:50

カザフスタン マリ・アルマティ谷