少し早く起き
歩いてみては

下京区 田中 正一 

  (公務員37

 少し早起きして街を歩
いてみよう。今、京の街
は鮮やかに錦を織りなし
ている。全国から多くの
人がわざわざ観光に訪れ
るが、こんな素晴らしい
景色を見過ごすのはもっ
たいない。社寺の拝観を
しなくても、公園やちょ
っとした通りでさまざま
な木々が色づき、街がか
なり明るくなっている。
そして、山がまだらに美
しくなっている。
 それなのに、うつむい
て急いで通学や出勤して
いると、周囲の景色に気
づかなかったりする。「あ
〜もったいない」。ゆっ
くりと少し顔をあげて周
りを見渡そう、山を見よ
う、大きく深呼吸しよう、
そして美味しい空気を味
わおう。朝日を浴びた木
々はきらきらと鮮やかに
輝いて、心を癒やしてく
れる。
 今、木々は「これでも
か」って言いたげに色づ
いている。自分にも言い
聞かせたい、忙しく毎日
を過ごして、せかせか、
いらいらしている気持ち
に対し「自然の恵みをし
っかり感じなさい」と。
 少し早起きするだけで
心に余裕が出て、一日し
っかり頑張れる気持ちに
なる。なにより、観光客
が訪れない静かな時間に
景色を独り占めするのは
気持ちがいい。こんな身
近に自然が優しくわれわ
れを包んでくれる。山紫
水明の素晴らしい街に住
んでいる喜びを感じる。



京都新聞(06.11.28)
7面「窓」欄掲載)


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