第一章 こひつじの誕生
ある暖かい春の日の朝のこと、ニュージーランドの牧場でかわいい子羊が生まれました。
黒い瞳の利発そうな子羊で、生まれるとすぐお母さん羊からお乳を飲ませてもらいました。
この牧場の羊達はみんな頭だけが黒く、体は白色です。
でもこの子羊は胸とおなかだけが白く、頭からしっぽまで手も足も黒色です。
「まあ、この子はまるでペンギンさんみたい」 お母さん羊は目を細めながら この子羊に “P坊” という名前をつけました。
P坊は軟らかい牧草をたくさん食べてよく眠り、お母さん羊に可愛がられ、兄弟羊達と仲良くすくすくと育ちました。
第二章 母さん羊との別れ
母さん羊と楽しく過ごした夏が去り、牧場に秋がやってきました。
緑色だった牧草も黄色くなり、P坊も時々お腹がすくようになりました。やがて寒い冬がやってきます。
そんなある日のこと、突然牧場にトラックがきて、その年の春生まれた子羊達を籠に入れ連れ去ってしまいました。
軟らかい子羊の肉は高く売れるのです。
P坊はお母さん羊をさがしましたが見えません。そして船に乗せられて運ばれていきました。
船がオーストラリアのメルボルンの港に着いた時、船員達はみんな食事にでかけていきました。
その隙に子羊達は逃げ出し、桟橋の反対側に泊まっていた貨物船に逃げ込みました。
その船には黒い石炭が山のように積まれていて子羊達は山の陰に隠れました。しかし、白い羊達はすぐ見つかってしまいました。
P坊は見つかりませんでした。でも息を潜めて隠れていました。
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