第 3話 黒いマスクのおばあさん

ひつじさんがまだ小さかった頃、近所に風変わりな老夫婦が住んでいました。
何か近寄りがたい雰囲気で、大人たちも敬遠しているようでした。
そこのおばあさんは夏でも黒い小さなマスクをしていました。
大人達の話によると、おばあさんは“梅毒”で鼻が欠けているのだそうです。
そして時々、「悪い病気をうつされた」と言っておじいさんと言い争いをしていました。
 

          第 4話 足の立たない女性

ある日のこと、この老夫婦のもとに娘さんが帰ってきました。
娘さんとはいっても30才ぐらいで しかも足が立たず、いつも乳母車に乗っていました。
近くに中学校を卒業したものの、何もすることがなく遊んでいる女の子がいました。
この女の子に乳母車を押してもらうのです。
娘さんはいつも「この親に売り飛ばされた」と言って親をののしっていました。
福山の町を歩くと、ほかにも黒いマスクをした人に出会いました。
それでもみんな一生懸命に生きていました。
あの頃は医療が不十分で 世の中も暗かったのです。
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